近況報告
先日ハノイで車に乗っていたら隣に並んだバイクが
バスタブを積んでいた。
ベトナムではバイクは人間の移動手段のみならず
物資の輸送手段でもある。
だからこういう光景はざら。
さて、所用でしばらく日本に来ている。
日本ではベトナムでのような、あり得ない光景を見ることは
あまりないのだが、この間電車を降りて人の流れに乗って
歩いていたら、前を行く女性の足が妙に気になった。
なんだろうと思ったら、靴の底が青く染められていたのだ。
歩くたびに、ちらちらと青いものが見えて
とても新鮮だった。
本当に日本はおしゃれな人が多いですね。
無事日本での用事も終わったので
もう少しコイツにまみれてから、ハノイに帰ります。
特製鍋と怪魚の宴
オットがベトナム中部への出張から帰って来た。
最近、私も慣れてきたので帰ってきたらまず
今度は何を食べたの?と聞く。
遠来の客人を手厚くもてなそうとするあまり、
毎度宴席には文字通り山海の珍味が並ぶ。
そして、卓を囲む全員がオットが箸をつけるのを
じっと期待に満ち満ちた目で見つめるそうで
オットとしては何が出ても、にっこり笑ってパクリとやるしかないそうで、
まさに営業としての度量を試されているようだと話を聞いていつも思う。
今回の宴会ではまずどーんと鍋が運ばれて来たそうだ。
コンロに乗せられ、卓上で煮えるのを待って
和気あいあいと熱々の鍋を囲もうという趣向だったらしい。
怖いもの見たさか、つい火がつけられる前の鍋のふたを
開けてしまったオット。
中で待っていたのはこれ。
???
一瞬ヘビか?と思ったそうだが、
それにしてはパーツパーツでさまざまな形をしている。
眺めるうち、全体像がオットの頭の中に浮かんできた。
「・・・これはもしやトカゲですか?」
「そうです。とても美味しいので今日はぜひ堪能してください!」
「・・・」
「そうです。とても美味しいので今日はぜひ堪能してください!」
「・・・」
あれよあれよというまに、卓上コンロに火がつけられ
もはやお断りできない状況。
オットは覚悟を決め、鍋が煮えるのを待った。
おそらく、火が通れば少し煮崩れたりして
美味しそうに見えるかもしれないと、期待して。
ほどなく頃合いとなり、鍋のふたが開けられた。
中をのぞいたオットは泣きたくなったそうだ。
食べごろになった鍋は、
生の状態と変わらず、全開トカゲのままだったのだ。
鍋を無言で見つめるオットに、取引先のきれいな奥さまが
箸を取り、手ずからオットの皿に取り分けてくれたそうだ。
「あ、あの1つでいいです・・。」
「どうぞ、ご遠慮なさらずに沢山召し上がれ!」
私はトカゲには魚のようなうろこがあると思っていたのだが、
うろこはないそうで、固くでこぼこした皮なのだそうだ。
ワニの皮のでこぼこを細かくしたようなものらしい。
パクリとやると、意外とクセのない味だったそう。
しかも、皮の部分がプリプリで案外おいしかったとか。
そうはいってもトカゲはトカゲ。
日本人が食べなれた味ではないのは事実。
なかなか箸が進まないオットに、
「日本人なら魚が好きだろう。
次は俺が昨日釣ってきた魚が出てくるから食べてくれ。」
と、お取引先。
間もなく、どーんと大皿が運ばれて来た。
見たこともない魚がからりと素揚げにされ、
美々しく盛り付けられてきた。
オットいわく、顔は雷魚、胴体はヒラメ、
でも鱗は鯉、という不思議な魚だったらしい。
せっかくの釣り物の大魚だったが、
残念ながら川魚特有の泥臭さが抜けておらず
やっぱりハードルが高かったらしい。
これでは、宴会が盛り下がっただろうと心配になった私に
オットは動画を見せてくれた。
写っていたのは、宴席で、
手拍子をバックに朗々と歌う、
お取引先の姿。
テーブルを囲むメンバーも一様に楽しそうに
笑って、一緒に歌っていた。
どうやら、トカゲ鍋と怪魚の宴にも関わらず、
今回もオットはきっちり宴会を盛り上げて帰って来たらしい。
よかったねー。
よかったねー。
オットの地方出張はまだまだ続く。
ベトナムの田舎料理をいただく
先日久しぶりに写真サークルの撮影会に参加させていただき、
ドゥオン・ラム村という、ハノイから車で2時間ほどの場所に行って来た。
ここは、古い街並みを保存してある村ということで、
観光で訪れる人も多いとのこと。
その村で、お昼をいただいたのだが、
これがハッとするほど美味しかったので、今回はその話。
昼食場所として案内されたのは、
レストランではなく民家。
中庭には、どーんと大きな甕が並ぶ。
なんでもここは、お味噌屋さんだとのこと。
甕の中にはお味噌が?と思って
開いている甕をのぞいたが中は残念ながら空っぽ。
ま、お味噌の甕が開けっぱなしだったら
それはそれで問題なんだけどね・・。
お仏壇の前に置かれた、テーブルの前で待つことしばし。
どこからともなく、おばちゃんが現われ、スープが出された。
かぼちゃのスープかなと思って口に入れたら、
意外やあんまり甘くない。
緑豆のスープだそうで、ほっこりしたやさしい
甘みがあり、中には豚の角切り肉がごろり。
薄味だが、濃厚な食感でおいしい!
厨房設備も見当たらない、普通の民家の一角のようば
場所なのに、この味は、と感心していると
次の料理が運ばれて来た。
プチトマトにひき肉などを詰めた物。
目にも鮮やかだが、これがさっぱりとして美味しい。
目にも鮮やかで手の込んだ品だ。
これがベトナム料理?
こんなの食べたことない!
つけだれとして出されたのは、醤油とヌオックマム、
そしてお味噌。
日本のお味噌のようにペースト状のものではなく
もっと水っぽい。
味は金山寺味噌のように甘めで
スタッフィングトマトにかけると合う~!
野菜炒めが出てきた。
前に出されたものと全く味が違うので
どんどんおなかに入る。
鶏のから揚げ。
もう何度も書いたが、ベトナムは鶏肉が美味しいので
こういうシンプルな料理は本当に美味。
この家に来る前に村で鶏を飼っている家を結構見かけたので
これもちょっと前までのんきにその辺を歩いていた鶏なんだろうな。
春巻き。
北部では春巻きといったら揚げ春巻き。
これは、細い米麺ををまとめてシート状にした
皮を使っていて、普通のライスペーパーよりも
ホロホロで、口当たりが柔らかい。
確か、フエ風っていうんじゃなかったかな、
このライスペーパー。
ちょうど、セリのシーズンだったようで、
村の特産のセリと牛肉の炒め物。
独特の香味が牛肉のこってりした感じを
和らげて、すごくさっぱりした一皿。
味付けもシンプルに塩コショウベースだった。
菊菜(たぶん)と豚の肉団子の汁。
ベトナムでは最後に汁(ブロス)が出てきて
それをゴハンにかけて食べる。
それまでに散々食べていても、お茶漬のような感覚で、
さらさらと食べられてしまう。
この日もしっかり食べ、お代りまでした^^;
正直言って、全然食事には期待していなかったのだが
どの皿も一つ一つ味が違っていて、
いちいち感動しながらいただいた。
しかも、どの皿もほとんど食べたことのない料理ばかり!
唸りながら食べている私に、同席の方から
「田舎料理としてはすごく美味しい方だけど、
ベトナムの家庭に遊びに行くと
普通に出てくるようなお料理ばかりよ」とのお言葉が。
そっか。
最近ベトナム料理を食べに行く頻度もがっくり減り、
しかもいつも同じようなものばかりを注文していた私。
気がつくと揚げ物ばかりがテーブルに並んだりしていたなあ。
お任せでいただいたこの日の昼食は
全体の味や栄養のバランスを考えて
出されたものだったんだろう。
もてなす側の温かい気持ちが込められた
しみじみと美味しいお料理をいただきました。