私が育ての父が

 

実の父ではないと知ったのは

 

高校三年生の12月でした。

 

高校を出たら、美容師学校に行き

 

メイク業をしたいと思っていたのです。

 

そのため、願書を取り寄せると

 

なんとなく、家の中がザワザワし始めました。

 

そして、ある日、学校から帰ると

 

母の一番上の姉(23歳差)がうちにいたのです。

 

私はその伯母が大好きだったので嬉しくて

 

でも、伯母は何だか浮かない顔。

 

どうしたのかな?と思って自分の部屋で本を読んでいました。

 

すると、階段をトントンと上がる音が聞こえ

 

部屋の扉が開いたのです。

 

おば「あんたに大事な話があるんだ」

 

私「そう。なに?」

 

伯母は、私の両腕を強くつかみ

 

真剣な目で見つめてきたのです。

 

咄嗟にただごとではないと思った私。

 

ゴクリと唾をのむと

 

伯母「あんたは養女なんだよ」

 

私「やっぱりそうか。継母だと思ってたんだ」

 

伯母「あんたは幸せ者だね」

 

私「なんで?」

 

伯母「お父さんが違うんだよ」

 

私は思わず言葉を失いました。

 

父は厳し時もありましたが

 

私にとって大切な存在で

 

大好きな人。

 

頭の中は混乱して思わず

 

私「え?ババアの方じゃないの?」

 

と言葉をもらしたのです。

 

静かに涙ぐみながら頷く伯母を見て

 

私は、頭をクラクラさせながら階段を降りました。

 

すると

 

父が私の目の前に飛び出してきて

 

急に土下座をしたのです。

 

父「申し訳なかった。

  お母さんとの幸せな生活を奪って

  本当に申し訳なかった。

  全部、全部俺が悪いんだ」

 

ポタポタと大粒の涙が床に流れ落ち

 

父の前は、水たまりができる程。

 

私「あ、あの…」

 

父「お父さん、厳しかっただろ?

  嫌なお父さんだよな?

  お母さんとどうしても結婚したくて

  お前を騙してた。

  後悔してもしきれない。

  俺を恨んでくれ。

  殴ってもいいぞ」

 

私「あのさ。こういう場面って

  私が泣く所だよね。

  よくほら、ドラマでもそうでしょ?」

 

父「お父さんのことはもう無視してくれていい。

  俺はひっそり暮らすから」

 

どうやってひっそり暮らすのだろうか?

 

ちょっとわからなくて混乱しました。

 

そして、私がこの時思ったのは

 

なんとかこの大興奮している父をなだめなきゃという思い。

 

私「お父さん、私別に気にしないし、

  いつも通りでいて。

  あと、もう泣かないでいいからさ」

 

父「ショックだよな。ごめんな。

  ああ、どうしたらいいんだ」

 

私「私のお父さんは、お父さんだけ!

  だから、もう泣き止みなさい!」

 

これはまた父の心に火をつけてしまいました。

 

ワンワン声を上げて泣き

 

おでこを床にゴンゴン打ち付けて土下座しっぱなし。

 

父「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

私「私友達と約束あるから出かけるね。

  伯母ちゃん、お母さん、お父さんのこと 

  どうにかしておいて。

  じゃあ、行ってきまーす!」

 

外まで泣き声聞こえるけど…

 

父に泣かれすぎて私は、全く泣けなかったのです。

 

けれどやはり、日が経つにつれて実感がわき

 

ある日の授業中、思わず泣き出してしまいました。

 

出もないたらスッキリ。

 

血のつながりなんて本当にどうでも良いと思えたのです。

 

そして、その原因は、私が取り寄せた美容師学校の願書。

 

戸籍が必要で自分で提出と書かれていました。

 

それから、友人に相談して

 

私「お父さんが私を育ててくれただけで十分がし、

  美容師学校行くのに100万かかるから

  働きながら手に職つけたいんだけど

 

友人「じゃあ、一緒に看護師になろう!」

 

よくよく話を聞くと、午前中働いて

 

午後から学校に通うので

 

親に負担は全くないとのこと。

 

すぐに心を決め、両親に「看護師になる!」と宣言したのです。

 

父は「夢だった美容師になれよ」

 

私「看護師の方がかっこいいじゃん。

  それに私白衣着たいし。

  白衣の天使だよ」

 

伯母と母は大賛成してくれて

 

1年は看護助手をしてその後、

 

看護学校を受験し

 

准看護師として働きました。

 

父ははれ物に触るような態度。

 

このままではいけないと思い

 

看護助手になった時に看護師寮に入ったのです。

 

なんとなく、遠くなってしまった親子の縁ですが

 

このあと、ある事件をキッカケに

 

私と父のきずなは深くなるのでした。

 

それはまた、後ほど書きます。

 

今回も最後までお読み頂きまして

 

ありがとうございますニコニコ音譜