母の食欲は
日に日に細くなり


好きだったはずの
ものを作っても
「いらない」と
言うばかり



だけど
プリンやゼリー
あんぽ柿やら
ふかし芋は
喜んで口に運ぶ



子どものように
むしゃぶりつき
でも二、三口
食べたら



もう満足するようで
食べなくなってしまう



くだものも喜んでいた
みかんやぶどうを
嬉しそうに食べては


「これ美味しいね」と
ニッコリする。


なんだか母が
一段と小さく見えて


でも可愛いな
とほっこりする時間だった


最後に一緒に買い物に
行ったのは
母のリクエストの
りんごだった。



だけど車に乗るのが
やっとで



車の中で妹と待っててもらい
わたしが急いで買いに行くと



母はずっとわたしの名前を
呼んで
どこに行ったの?と
妹に聞いていたらしい



りんごを買いに行ったと
答えるとうなずくのだが



すぐにまた
どこに行ったのかと
その間
5分ほどだと思うが



何度も同じやりとりを
くり返したらしい



そうして買ってきた
りんごを三口くらい
食べたけど



消化せずに
すぐに排泄してしまうので
母はどんどん
やせ細っていった