介護がいよいよ本格的になってきた
子育ての時もそうだったが



心の準備が無いまま
始まってしまう。


危険が無いように
常に意識していないと
いけないから
気が抜けないが



この頃のわたしは
母の意識障害は



心ない医師から
いきなりの病気の告知と
同意の無い抗がん剤治療と
入院強要をされたから



ストレスによる
『せん妄』を発症してるだけ
一時的なものだから
元に戻ると期待があった




信じて疑わなかったので
介護を辛く感じなかった




母の意識が治ったら
笑い話に出来ると
少し楽しみにすらしていた



だけど食欲がなく
食べてくれなくて
どんどん痩せてしまう姿には
焦りは感じた


でも



もしかしたら悪いものが
全て取り除かれて
生まれ変わるように
復活するのではと



今、考えると浅はかと
言われてもしょうが無いような
ことを考えていた。



その日珍しく母から
「美味しい」が聞けた



それはわたしが作った
卵焼きだった


卵に塩コショウとめんつゆ
マヨネーズを
適当に混ぜてキレイな
黄色になるように
弱火でゆっくり焼く



最近の母は一口か二口しか
食べなくなっていたが
この日は完食してくれた



回復の兆しが見えたようで
喜んだのを覚えている。



まさかこれが母に作る
最後の卵焼きになるとは
夢にも思わなかった。