入院当日はたくさんの入院道具を
持って早朝から準備に追われていた


妹も泊まりこみ前日から母の介護や
準備を手伝ってくれた


入院に必要な記入書類には
時間がかかった。
気になる事について記入する箇所に
記入する文言を決めるのに
苦労した。


入院が決まった当初は自分で
出来ていた食事やお風呂、トイレ
全て介助が必要になり



ご迷惑をお掛けしますが
どうかお願いします。
と共に


入院を拒む母を
どうか孤独にせず
気にかけて欲しいと
祈るような気持ちで記入した。



母はどこに行くのと怪訝な表情で
病院に行くと言っても
「なんで?」とまるで自分が
これから入院するなんて
わからない状態だった。



病院に着くと手続きに時間がかかり
母は余計に不機嫌になった
看護師さんが迎えに来てくれたが



母の意識障害が悪化している事で
何か確認してくると言い残し
またしばらく待たされた



ようやく病室に行く事になった時
当初は荷物運び役の付き添いは
1人しか許されず知識のある妹が
母と一緒に行くはずだったが



先生が許可してくれたとのことで
私も一緒に病室まで付き添った



病院は建て増しを繰り返したそうで
迷路のようにあちこちを移動して
ようやく血液内科の入院病棟に到着した


「いったいどこに行くの?」
母の機嫌はいっそう悪くなった



こんな状態の母を残して帰るのは
不安で仕方無かった。


病室に入り間もなくすると
今まで会ったことの無い医師が
やって来た



その医師はすでに母の状態を
報告を受けて知っているようで
母に少し話しかけて本人が入院を
理解していないこと



だけどその状態でも
「入院はしたくない」
とはっきりと意思を示したこと
などを確認して



「2週間前の血液検査の結果を
もう一度確認してきた
そんなに緊急では無い
むしろこのまま入院したら
もっと意識障害が進行して
パニックを起こす恐れがあるので
入院は取り止め今日はこのまま
帰宅した方がいいでしょう。」



とその医師の判断で2週間後に
また検査を受けるために予約をして
帰ることになった。



不安だった私は母を連れて帰れる事に
ホッとしてそのまま帰宅したのだが


あとで考えるとここで大きな過ちを
犯していた。



先週行ったセカンドオピニオンの
病院受診の際に
母が発熱していた事を伝え忘れた



伝えてたら検査されて
母の病気の進行を
止められたのかも知れない。



今となっては結果論だが
悪い事を考えたく無いあまりに
母の状態を直視して無かった。



ただこの時は入院せずに帰れる事
母の希望が叶ったと嬉しくて
あとは母の意識が治ることを信じて
明るい前向きな気持ちで帰路についた