「エリさんですか?」
ちょっと遅れてしまった俺は、メールで言われていたその服装の女性に後ろから声をかけた。
「あ、は、はい!潤さんですか?」
そうです、と言うとお互い緊張しながら笑顔を交わした。
エリは身長160cmくらい。派手すぎもせず、特に地味でもない。30代半ばのその人はスタイルも普通。
いや、30代半ばにしてはむしろきれいなラインを維持していたと今にして思う。
髪型はロングのストレート。真っ黒ではなくちょっと明るめの色。
10人中10人が振り返るような超美人というわけでも特徴的な顔をしているわけでもない。でも俺に見せる笑った顔はとても魅力的だった。
街の雑踏の中では恐らく完全に周囲に溶け込んでしまう、そんなごくごく普通の主婦、妻、母が、一人の女性として出会いやときめきを求めていたことに今更だが驚きもした。
この日、俺は有休をとっていたが妻へのポーズのため、いつも通り職場へ行くビジネススーツの装いで自宅を出ていた。
エリ「潤さんがくる前に、メールで言ってた同じ服装の人がすぐ近くにいて、しかもずっと誰かを探している感じだったんです。」
エリ「だから潤さんってこの人だったらどうしようって、ちょっと心配だったんです。」
エリは笑いながら、安心したような口調で話した。
どうやら第一印象の俺は合格したらしい。
俺「そうだったんですね、ごめんなさい。待たせてしまって。不安にさせてしまいました。」
エリ「ううん、とんでもないです。私の方こそ誘ってくれて、ありがとうございます。」
お互いに甘いものが好きという共通した話題で、スイーツレストランで時間を過ごした
本当は緊張し過ぎて味なんて分かっちゃいない。
このよその家の奥さん・お母さんは、大切なはずの家庭をいっとき忘れ、いずれ俺に抱かれる事も覚悟でやってきたんだ。だから次に繋がるよう気に入ってもらわないとな。
一方で泣きじゃくり、あるいは怒りの炎に包まれる妻の顔がちらつき、ごめんなと心の中で詫びる思い。
人の道を踏み外しかかった自分への罪悪感。
いろんな思いが入り混じりながら、俺は不倫に向けて着実に歩みはじめた。