自分の話ばかりを、延々と続ける人がいます。
こちらが何も聞いていなくても、相手の反応を確かめることもなく、ただ一方的に話し続ける人です。
多くの人が、このような相手にどう対応すればよいのか分からず、疲れたり、我慢したり、心をすり減らしています。
そして「自分の心が狭いのではないか」と悩んでしまうこともあります。
ですが、まず知っておいてほしいのは、
その違和感や疲労感は、とても自然で健全な感覚だということです。
本来、会話とはキャッチボールです。
相手の表情や沈黙を感じ取り、互いに言葉を渡し合うものです。
しかし、自分の話ばかりをする人が行っているのは、会話ではありません。
それは「話すこと」そのものを目的とした行為です。
では、なぜそのようになってしまうのでしょうか。
このタイプの人の深層心理には、共通する背景があります。
それは、強い不安と、満たされなかった承認欲求です。
過去に、自分の話をきちんと聞いてもらえなかった。
自分の存在を、そのまま受け止めてもらえた経験が少ない。
黙っていると、自分の価値が消えてしまうような感覚がある。
そのため、話すことでしか自分を保てなくなっているのです。
相手の反応に気づかないのは、感受性が低いからではありません。
自分の内側の不安や空虚感で精一杯で、他人を見る余裕がないのです。
一見、プライドが高く、自信満々に見えることもあります。
ですが実際はその逆で、自尊心がとても脆い場合が多いのです。
だからこそ「自分は価値がある」「自分の話は意味がある」と、言葉で必死に補強し続けます。
このような人に対して、私たちが強い疲労や嫌悪感を覚えるのは、
相手が話している内容のせいではありません。
自分という存在が、そこにいないかのように扱われている。
その無意識の軽視に、心が反応しているのです。
では、どう向き合えばよいのでしょうか。
大切なのは、「理解しようとしすぎないこと」です。
相手を変えようとしたり、分からせようとする必要はありません。
それは優しさではなく、自己消耗になります。
まず、自分の中で線を引くことです。
この人は会話をしているのではなく、話すことで自分を保っている。
そう理解するだけで、感情的に巻き込まれにくくなります。
次に、反応を最小限にします。
大きな相槌や過剰な共感は必要ありません。
淡々と、短く、礼儀的な反応だけで十分です。
話を広げない。
質問しない。
驚かない。
それだけで、相手は無意識に「話しやすくない人」と学習します。
そして、時間や話題で区切ることも大切です。
用事、予定、区切り。
理由は簡潔で構いません。
「そろそろ時間なので」
「話を戻しますと」
「要点だけお願いします」
これは攻撃ではありません。
自分の時間と心を守る、健全な行為です。
どうしても距離を取れるなら、それが最も穏やかな選択です。
関係を断つ必要はありません。
薄く、短く、淡く関わるだけでいいのです。
最後に、忘れないでください。
あなたが感じる疲れや違和感は、
あなたの心が弱いからでも、冷たいからでもありません。
それは「対等な関係が成り立っていない」という、心からのサインです。
誰かの承認欲求を満たすために、
あなたが自分を削る必要はありません。
境界線を引くことは、逃げではありません。
それは、自分と相手の両方を尊重する、大人の知性です。
この文章が、
同じように悩んでいる誰かの心を、少しでも軽くできたなら幸いです。
