本当に大切なことは、
意外なほど言葉にしにくいものです。
多くの人が、子どもの頃からうっすらとそれを感じています。
胸の奥に、説明できない違和感や確信のようなものがある。
それは誰かに教えられた価値観ではなく、
社会のルールとも少し違う。
でも確かに、「これだけは失いたくない」と感じる何かです。
成長するにつれて、人は多くのものに囲まれます。
評価、競争、成功、承認、数字、肩書き。
それらは生きるために必要な場面もあります。
しかし気づかないうちに、
それらが人生の中心に座ってしまうことがあります。
そのとき、人は少しずつ
自分の感覚を置き去りにします。
本当は違うと感じているのに、
そうするしかないと思い込む。
心がざわついているのに、
「仕方がない」と蓋をする。
そうして人は、
欲望やエゴや見栄に引っ張られながら、
どこか息苦しいまま生きていきます。
けれど、心の奥ではわかっているのです。
人が本当に求めているのは、
勝つことでも、支配することでも、
誰かより上に立つことでもない。
人が人でいられる感覚。
それを失わずに生きること。
誰かを道具として見ないこと。
自分を偽らずに、静かな誠実さを保つこと。
小さな違和感をごまかさないこと。
それは立派な言葉にしなくてもいい。
思想にまとめなくてもいい。
ただ、自分の内側で
「これは大切だ」と感じる感覚を
裏切らないこと。
それだけでいいのです。
世界は、大きな力で変わることもあります。
でも多くの場合、
世界は一人ひとりの在り方によって
少しずつ歪み、少しずつ整っていきます。
誰かを踏みつけて得られる成功ではなく、
誰かを消費することで成り立つ正しさでもなく、
人が人として扱われる関係を、
日常の中で選び続けること。
それは静かで、目立たず、
評価されないかもしれません。
それでも確かに、
世界を良くする力です。
本当に大切なことを
うまく説明できなくても構いません。
言葉にならなくても構いません。
心が知っているなら、それでいい。
その感覚を忘れず、
惑わされず、
自分の心に正直に生きること。
それ自体が、
この世界にとっての希望です。
人が人でいられる世界は、
遠くにある理想ではありません。
今、この瞬間の一人の在り方から、
すでに始まっています。
