のらねこ「むく」
「むく」は毛並みの良いペルシャ猫だった。
もう6年か7年前になるか、逃げ出したのか捨てられたのかは不明だが、
いつからか公園に住み付き、地域猫としての身分を確保したのだった。
無責任な飼い主により生まれたばかりの猫や犬が捨てられる事が多い現状を考えれば、
自分の意思とは関係なく不幸な運命を選択させられたというのが正しいかもしれない。
「むく」は長らく公園でボスの地位を維持していた。
あちこちに見られる傷跡は歴戦の証でもある。
毎日夜7時になると餌場にやってくる姿は堂々としたものであったが、
最近は年のせいか耳も聞こえないようで、以前の華やかさの微塵もない。
かろうじてプライドだけは守っているといった感じである。
警戒心は特に強く、人から受けたであろう虐待の傷跡は痛々しいほどで
けっしてボランティアの面々以外にはよってくる事はない。
後どれくらいであろう命、人間達に翻弄され、
猫としてのプライドをかろうじて守ってきた。
人間不信になりながらも人間の手を借りなければ生きていけない宿命を
どう感じているのか、あらためて人間の身勝手さに腹が立ってしょうがない。
