(実況⑩よりつづき)
2月5日朝
2月4日の夕方から眠りこけた椿と楓は、その後、結局起きてこなかった。
💤💤
2月1日から、毎日、朝から晩まで試験受けまくりの7連戦、精も魂も尽き果てていたのだろうか。
一夜明けて、ようやく、椿と楓はよぼよぼと起きてきた
猫魔:おはよう。昨日のB中学、二人とも合格したよ! おめでとう! 二人とも春からB中学に行くんだよ!
:うん。わかったー。
猫魔:もっと喜びなよ~ すごい倍率だったんだよ! 二人ともすごいよ!!
椿:え~~、楓も受かったの~?
猫魔:そうだよ!!二人とも受かるなんて、ママはうれしいよ
椿は、小6の最初は志望校の希望もなく、唯一の希望として言っていたのが、「楓と同じ学校に行きたい」ということだった。
ところが、小6の後半になった頃には、Mクラス(応用クラス)としてのプライドが出てきたのか、たま~にだが、A3クラス(基礎クラス)の楓サゲ発言が出ることもあった(「アンタ(楓)のテキストは薄いじゃん!」とか)。
それもあってか、B中学の厳しい倍率の入試に楓まで合格できたことが、一瞬、気に入らなかったようだ。
椿:ふーん、、、じゃあ、椿の受験番号の横に、星マーク★ついてない??
椿は、他の学校の合格発表で、入学金や授業料が免除になる特待生の受験番号の横に星マーク★がついている例を見ていたので、自分にはそういう特別感のある印がついていないか?、と聞いてきたのだ。
猫魔:あ~、B中学はね~、そういう星マーク★とか、特待生の制度はないんだよ。みんな同じ。
椿:・・・(ザンネン・・・)
椿は、何かしら、楓よりも自分のほうが上位だったことの証が欲しかったようだ。
わかる、むちゃくちゃすごくわかるよ、その気持ち
椿は、Mクラス(応用クラス)から落ちないように必死でついていっていた。楓のA3クラス(基礎クラス)よりテキストもぶっといのをやってきたし、宿題も多いし、受けるテストだって難しい応用テストのほうを受けてきた。
通っていた日能研の校舎は小規模校で、Mクラスは1クラスしかなかったため、クラス内の偏差値のレンジは幅広く(55~70)、周りは賢い子が多かった。小5の秋に、椿と一緒にA3クラスから上がった子たちはみな、またA3に落ちていったのに、椿はMクラスから落ちずにギリギリ耐えてきたのだ。
そりゃ、椿よりもゆるい環境にいた楓と同列にしてくれるな、って思っちゃう気持ちも理解できる。
猫魔は、椿がいじらしかった。頑張ってきたもんね。
「星マーク★」か。その言い方、カワイイな。
猫魔:でもね、椿は合格者の中でもトップのほうで合格していると思うよ!
猫魔は、なにか椿の頑張りをほめてあげたくてそう言った。
椿:点数や順位分かるの?
詰めてくるねえ~
猫魔:いや、埼玉入試みたいに、そういうのは開示されているわけじゃないんだけど、椿は過去問の出来でもトップクラスの点数だったし、椿だったら上位3位以内くらいじゃないかって思うよ(←(注)根拠レスです)
楓:楓は!!!??? (←イキナリ、楓が乱入)
猫魔:楓も本当に頑張ったね!! S先生も驚いてたよ! 楓さんも!?って。すごいよ、よく受かったな~!
楓:それって、、、楓はギリギリ受かったってこと??
猫魔:ちっ ちがうよ~っっっ そんなこと言ってないよ 楓も、あの1月の勉強ぶりを見ていたら、しっかりと点数をとったと思うよ!!あのさぁ~、だいたい、あの受験者数、合格者数、倍率を見ただろ!? 4教科ちゃんと点数を取らないと、絶対に合格できない! 楓はよく頑張ったってことを、純粋にほめているんだよ!!
ほんと、こういうとき、双子は面倒くさい。
片方をほめると、片方がすねる。だから、本当は思い切りほめてやりたくても、もう片方を気にしてできなかったりする。
アイツらの耳はよく聞いていて、聞き逃さない。すかさず、「自分は?」と攻めてくる
ほめ言葉の言い方にも引っかかるから、ほんとうにメンドーだ
・・・・・・・
ところで、猫魔は、椿と楓に聞きたいことがあった。
4日間の入試期間中、二人がどんな気持ちでいたのか、ということだ。
二人とも、不合格と聞いても一向に泣きもせず、合格と聞いても喜びもせず、いずれにせよ、いつも特段の反応はなく、静かで淡々としていた。
実際の取材に基づくであろうマンガの世界でも、よそ様のリアルブログでも、子供は落ちたら号泣し、受かったら大喜びしている。それが普通じゃないのか。
それなのにこの二人は何なんじゃ?と猫魔は不思議に思っていた。
入試期間中は何を考えているのか問い詰めるようなことは控えたが、無事に終わったし、気になっていたので、猫魔は聞くことにした。
猫魔:あのさ~、第一志望のA中学とか、いろいろ落ちたとき、アンタらは号泣もしないし、受かったときも喜びもしないし、いったいどんな気持ちでいたの? フツーは、号泣したり、大喜びしたりするんだよ。
楓:だって、A中学は難しかったから、受けたときからもう無理っていうのが、自分でも分かってたんだよ。C中学もそうだよ。だから、落ちたって聞いても驚かないっていうか、しょうがないって思ったんだよ。楓は、3日目、A中学を受けなくていいって聞いて、正直ホッとしたよ。もう絶対ムリムリ~ってかんじで。ただ、D中学だけはできたと思ったから、落ちてびっくりして、唯一悔しかった。。。
D中学の不合格については、猫魔自身も信じられないくらいである。テスト結果を見せてもらいたいくらいだ。
D中学でをくらったせいで受験プランの変更を余儀なくさせられ、ずいぶん苦しめられたしな
まあ、B中学とD中学だったら、B中学を選ぶので、もうチャラにしてやる (←エラそう)
猫魔:E中学とF中学に合格したときも、別に喜ばなかったね。マルがとれて嬉しくなかったの?
楓:E中学とF中学は、学校に向かっているときに、周りの受験生の中に下のクラスの子もいたから、きっとみんな自分より下の子が受ける学校なんだと思って、絶対に負けるわけがないと思ったんだよ。それに、実際、問題が簡単だったから受かっていると思っていたし。
猫魔:でも、ママは、E中学もF中学も、二人ともよく頑張って合格をとったと思っているよ!
猫魔としては、苦しいときに、合格をくれたE中学とF中学には感謝している。やはり、戦ううえで、どこか進学先を確保しておくことは、とても心の支えになると実感した。
E中学、F中学、ありがとう、という気持ちだ。
猫魔:B中学はどうだった?
楓:できたよ!だから、受かっていると思っていたよ!
猫魔:ぬ・・・? あんたさ、B中学の試験の後、ママが、「できた?」って聞いたとき、そう言わなかったじゃん!!できたのなら、なぜ「できた」って言ってくれなかったの!? ママ、とても心配していたのに!!
楓:だって、「できた」とか言って、もしダメだったら、またママを落ち込ませちゃうじゃん! それが嫌だったから言わなかったんだよ!!
猫魔:でも、できたんでしょ・・・?
楓:D中学だって、できたと思ったのに、結果はダメだったじゃん。
むぅ~・・・何も言えん。。。
猫魔:最後のB中学は、本当によく頑張ったね。ママはカンドーしたよ
楓:B中学のときは、ここで受からないとF中学になってしまって、楓の青春が終わってしまうと思ったから、絶対に合格してやる!と思って、頑張ったんだよ!
猫魔:いつも反応薄かったけど、いろいろ考えてたんだね。B中学の入試のときに、楓にそんなに強い気持ちがあったなんて全然知らなかったよ。でも、F中学だって、伝統校だし、いい学校みたいで、人気もあるんだよ。
楓:ちょっと、F中学の校舎に入ったときに、ここヤダって思って。。。なんか、ほんと暗くて、狭くて、地味で。。。ここで6年間過ごすの嫌だなって。。。とにかくB中学と全然違うんだってば。
猫魔:そうなのか。楓はB中学に合格できて本当によかったね
楓:うん。でもさ、アイツ(椿)は、A中学に行きたかったんだと思うよ。
猫魔:え? 椿も、B中学のこと気に入っているよ。
楓:アイツ、「A中学、行きたかったけど。。。」ってつぶやいてたよ。椿さ、Mクラスで頑張ってたじゃん? でも、結果は、楓と同じ学校になったわけじゃん。どう考えても、アイツ、楓よりも勉強頑張ってたと思うよ。だから、椿は残念に思っているんじゃないかな。
猫魔:でもな、椿が勉強してきたことは一つも無駄じゃないぞ。椿の努力で蓄積されたものは、そのままアイツのベースになっている。中学に入ってからもそれが生きてくるだろう。アイツ、最初からいい成績とってくるんじゃないか? ゲタ履いているようなもんだ。
楓:え? じゃあ、あまり勉強してない楓はどうなるの? B中学に入ったら、楓は深海魚になるの?
深海魚。。。
猫魔:ハーッ・・・ あのな~、「深海魚」が生息し得るのは、最難関校だけだ。それ以外の学校が、ソレを言うのはおこがましいぞ。
楓:え、だって、「深海魚」って実際にいるんでしょ?
猫魔:ママは、実際に見たことがあるよ。昔、ママが浜学園に行っていたとき、塾の同級生が灘中に行ったけどな、6年後に出くわしたとき、ソイツは見る影もないくらい落ちこぼれていたよ。志望大学もメチャクチャ低くて。でもな、「深海魚」とか言ってサマになるのは最難関校だけだよ。B中学みたいな中堅校は、生徒のレベルを維持し、実績を上げるために学校の指導・フォローが手厚い。それにも関わらず、学校の勉強についていかないのは、ただのサボリって言うんだよ。
楓:楓、大丈夫かな。。。勉強キライだし。。。
猫魔:中学校に入れば、どんな学校でも勉強するのは当たり前だからな。特別なことじゃない。当たり前なんだ。ちゃんと真面目についていけばいい。心配しなくても大丈夫だよ。
楓:わかった。
・・・・・・・
猫魔は、楓からいろいろと聞き出して、入試期間中、表面上の反応は薄いながらも、心の中ではいろいろ考えていたことが分かった。思ったよりも大人なのかね。
椿からは、あまり気持ちを聞き出せなかったが、「椿は、春からB中学に行くんだよよかったね!」と言ったら、「うん! B中学の中、とてもかわいかった」と嬉しそうに答えてくれた。
最後に、聞き忘れていた重要なことを楓に聞いてみた。
猫魔:あのさ~、3日目の朝に、E中学とF中学への受験校の変更を話したときにさ~、ママが「A中学落ちた」って言いながら、椿と楓の前で大泣きしたときも、アンタたちは無言だったけど、どう思っていたの??
楓:オモロイ顔だな~って思って見てた。普段、あんなに涙流す人、見たことないからさ~ 珍しくてw
・・・・・
最も、予想外の答えだった。。。
(実況⑫ 2月5日昼 合格短冊、仲間の健闘 へつづく)