(実況⑨よりつづき)
2月4日夜
東京入試4日目
7戦目にして、やっと見ることができた、第二志望 B中学の合格
ここまでに、
第一志望 A中学に振られ、
第三志望 C中学にも振られ、
さらには第四志望 D中学にまで振られ、
満身創痍の中、荒波に押しつぶされそうになるのを耐えに耐えてきた。
猫魔自身も、これまでの試験人生で不合格の経験はあり、大ショックを受けたことだってある。
でも、自分が受けた試験の結果であれば、だいたい、ダメだった要因も自分で想像がつくし、自己責任の世界で受けとめることができた。
だが、我が子の不合格は本当に辛い。自分が不合格だったときよりも、はるかに辛かった。
前受け受験の埼玉入試でも、椿は1勝1敗、楓は2勝1敗だったため、東京入試本番前に不合格のグレー画面を見た経験はあった。
でも、同じグレー画面でも、東京入試は精神的なこたえ方が全然違う。その厳しさは、お試しの位置づけだった埼玉入試の比ではなかった。
今日の東京入試最後のB中学の合格発表。
見る前、猫魔はグレー画面を頭に思い描き、不合格だったときのシミュレーションをすることで、実際にソレを見てしまったときのダメージを減らそうと心の準備をしていたくらいだ。
2月1日がもう遠い昔のような気がする。
猫魔の気持ちも2月1日の朝からは、別人というくらいに様変わりした。
この4日間は、1分1秒が長く、ひたすら苦しい時間に耐えなければならなかった。
本当に、暗く、先が見えない、長い長いトンネルだった。
そのトンネルを、椿と楓は、ようやく、くぐり抜けたのだ
・・・・・・・
猫魔は、すぐにパパを呼んだ。
猫魔:パ、、、パパッッ!! B中学っっ、もう結果出てて、、、二人とも合格してるよっ・・・!
パパ:えっっっ!?
ずっと、表情が硬かったパパの顔が初めてゆるんだ。
椿と楓にも早く知らせてやりたい。
だが、17時にして、なんと二人は布団でグースカグースカ眠りこんでしまっていた。
💤💤
それでも一言耳に入れたくて、猫魔は布団をゆさぶって、「B中学!!合格したよ!!!!」と耳にねじ込んでみたが、二人とも起きなかった
それどころか、うるさそうに振り払われてしまった
結局、マンガのように、合格の瞬間に子供が大喜びする姿など、一度も見ることができなかった。
やっぱり、こういう連中なのだ
まあ、いーや、また後で、伝えてあげよう。
猫魔は、関西で心配しているババに、電話で「B中学合格」を一報した。ジジと猫魔の姉には、ババが伝達してくれるだろう。
ババは、「椿ちゃん、楓ちゃん、本当におめでとう 二人ともよく頑張った」という祝福とともに、「おかあさんな~、椿と楓があかんかったら、猫魔がかわいそうや、とずっと思っててな~。仕事も忙しい中で、毎日、家のこともやって、二人の勉強も見て、塾のお世話もして、あんなに一生懸命やってきたのにって、なんとか報われてほしいって。毎朝、仏壇に向かって、天国のおじいちゃん、おばあちゃんにもお祈りしてた。猫魔がものすごく苦労してきたのを知っているから…」と言ってきた。
ババは、初孫である椿と楓のことを、ことのほかかわいがっている。
不合格について、孫の椿と楓がかわいそうだと思うのは当然だろうが、猫魔のこともそんなふうに思ってたのか。
猫魔はすでに40代で、「そんな憐憫要らねーよ!よけいなお世話だ!」と思うが、親にとっては、何歳になろうとも我が子のことは心配であり、なんとかしてやりたいって思うものなんだな~と思った。
受験マニア兄からは、17時に、「発表18時だな」というLINEが来ていたため、「二人ともB中学合格」と連絡。兄からは、「お、助かったな」という返信。
続いて、急ぎ、日能研に電話した。
? :日能研〇〇校です。
猫魔:あのっ 猫魔です! S先生はいらっしゃいますか!
先生:Sです。
猫魔:あ、S先生!! 猫魔です! 今・・・、たった今・・・、B中学の合格発表があって、、、二人とも合格しました!!
先生:えっっ!! 二人とも!? 二人とも合格ですか!? おめでとうございます!!!
S先生の言葉の後、電話の向こうから、大きな拍手が聞こえてきた。
校舎に待機しているほかの先生方も祝福してくださっていると思うと、猫魔は感極まった
うちの双子が大苦戦中なのは知っているはずだ。やっと先生方に拍手してもらうことができて、猫魔としても嬉しかった。
猫魔:有難うございます。感無量です!S先生には、苦戦中にいろいろとご相談にのっていただき、本当に感謝しています。
先生:二人とも、本当によく頑張りました! あのとき、、、3日の受験校をどうするかの相談をしたとき、僕は「D中学のままでも」とも思ったんです。お母さんが、どこまで下げることを許容されるかなと思いましたが、お母さんが決断してくださったので、3日にE中学とF中学の合格をとることができました。やはり、前日にマルを取ったのが大きな弾みになったんだと思いますよ。
猫魔:有難うございます。
先生:このあとは、どうされますか?
猫魔:今日で終わりにしたいと思います。椿と楓はB中学に進学させます。我が家としては、これで満足して、中学受験を終えることができます。
先生:そうですか。。。一番最後に、志望校のマルを取って終わるというのは、本当にすごいことです。椿さんと楓さんには、ぜひ顔を見せにきてください、とお伝えください。本当にお疲れ様でした。
こうして、猫魔は日能研への報告を終えた。
猫魔は、S先生の声の行間に、「B中学、楓はおそらく無理だろう、と思ってたんだろうな」とか、「さらに弾みをつけて、5日の上位校も受けてほしかったんだろうな」となんとなく思った。推測にすぎないかもしれないけど。。。
確かに、猫魔は大分前の面談のときには、「5日まで戦わせる」と言ったこともあった。でも、実際には、4日間で力を使い果たしてしまったよ。
・・・・・・・
日能研への電話のあと、猫魔はB中学の入試結果の詳細を確認した。
いったい、椿と楓はどれくらいの戦いを勝ち抜いたのか。
受験者数、合格者数、実質倍率。
やはりほとんどが落ちている。倍率は去年も高かったが、それよりも上がっていた。
椿と楓は、この厳しい戦いで大多数の受験生を上回る高得点をとったというのか。。。
特に、ノーテンキ楓はよく上位に入ったものだ。
猫魔は、パパに話しかけた。
猫魔:アイツら、ほんとうによくやったね・・・、パパ。正直、B中学がダメだったら、猫魔はずっと後悔しつづけそうなところだった。椿と楓が最後頑張ってくれたおかげで、猫魔の気持ちは救われたよ。
パパ:猫魔の子だからしぶといんだろう。でも、一緒に通いたかったなぁ。 猫魔にかっさらわれてもーたw
パパは、B中学が無理と思い、自分の職場と同じ方向にあるF中学に、椿と楓と一緒に通うつもりでいたのだ。
一方、B中学は方角が異なり、猫魔の職場のほうに近く、通学路は猫魔の通勤路と同じになる。
猫魔は、椿と楓を自分の勢力圏内への取り込みに成功した。
残念だったね、パパ
遠回りすれば、一緒に通えるんちゃう?
猫魔は、表情も明るくなり、足取りも軽く、所用のために外出した。
ありがとう、椿! 楓!
(実況⑪ 2月5日朝 子供自身の気持ち につづく)