18時を過ぎてきた頃から、台風8号の降らす雨が激しくなってきた。窓から外を覗くと、アスファルトの上を川のように雨水が流れていく。庇の上に当たる雨は、石粒がバラバラと当たっているかのようだ

 台風8号の台風委員会から充てがわれた名前は「メアリー」という。てっきりアメリカが提供したものかと思っていたら、北朝鮮が用意した名称で、アメリカ娘に対する皮肉などではなくて「やまびこ」に由来するそうだ。日本語の「やまびこ」は、ハングルでは「メアリ」となるようだ。

 この地に引っ越して来た時から、散歩中によく出会っていたシェットランドシープドッグの名前がメアリーだった。メアリーはよく吠える犬で、我が家の柴犬さんと雑種犬さんを遠くから見かけるだけで、姿がみえているあいだ吠えまくるものだから、ぼくはメアリーの姿がみえたら、いつも脇道にそそくさと逸れるようにしていた。

 柴犬さんと雑種犬さんは、今から9年前と7年前に其々虹の橋を渡って行ってしまったけれど、メアリーは少なくとも昨年末くらいまで、ヨロヨロしながらも、かつて早足だった飼い主さんと、ゆっくり散歩をしている姿をみかけたものだ。

 台風8号(メアリー)のニュースを聞いて、そういえばシェットランドシープドッグのメアリーを最近見かけないことに気づいた。初めて会ったときが0.5才だったとしても、あれから18年経った。虹の橋を渡っていったとしてもおかしくはない歳だ。それほど仲良くしているわけでもないので、飼い主さんに尋ねるわけにもいかない。