昼から雷鳴と一緒にまとまった雨が降った。アスファルトに溜まった熱が多少なりとも大地に染み込んでいったことだろう。

 訪問看護に来られた若い看護士さんの話し。

 彼女はお琴を習っていたそうだ。そこそこ長く習い、演奏技術も上達した頃に、先生より「これ以上お琴を上達したいと思っているのだったら、もっと良いお琴を買ってください」と言われたそうだ。「どのくらいするのですか」と尋ねたところ「150万円以上のものじゃないとね。師範を目指すのだったら、そのクラスのお琴を2つ買いなさい。私が見繕ってあげましょう」と言われ、「私はこの20万円のお琴ひとつあれば十分です」と答えたところ、それ以後教えてもらえなくなったとのこと。「まるで統一教会みたいだね」と笑ったことだった。

 それで思い出したのだけれど、知人の奥さんが、嫁入り道具としてかなりの数の着物が箪笥の中で眠っていたので、子供も巣立ってしまったし、自分のために着付けを習ってみようと一念発起して、まずは手始めにと、市が募集していた着付け講座に申し込み、数千円を払い浴衣の着付程度のことを教わった。私は着物の着付けを習いたかったんだと、その講座に来ていた先生に尋ねたところ、「それなら私が講師をしている着付け教室で習われるといいですよ」と言われ、ではと詳細を尋ねたところ、50万円の教室指定の着物を買わないと教えてもらえないという事実が判明した。

 日本の伝統事っていうのは、規模は小さいのかもしれないけど、統一教会のシステムと大同小異だなあと思ったことだった。そのような土壌で暮らしてきたからこそ、ほとんどの人がとんでもないと思うようなことでも、心が吸い込まれてしまう人がいてもおかしくないのかもしれない。