梅雨が明けて夏がきたように暑い。朝のニュースバラエティー番組でも、今後2週間は晴れの日が続く予報で、本当に梅雨明け宣言が近々出るかもしれないと伝えていた。梅雨が明けようが明けまいがどうでもいいなんてことを、多少なりとも大人であれば言ってはいけない。野菜果実農家は作物の収穫に影響するだろうし、それを食べるだけの消費者だって困る。ただでさえ電力不足が心配されている昨今、さらに水不足まで加わると、ますます困った事態となる。ここで、困ってしまうあれやこれやを列挙して、その対策なり対応なりを文章にできるなら、ぼくはコラムニストになれるのだろうけど、その能力はないから市井の人、無能の人として、どこかでその他大勢として生きている。

 この蒸し暑い中、最寄りのスーパーマーケットまで国道沿いを歩いていたところ、前方から、東京医師会ですら外ではマスクを外しましょうキャンペーンをはっている今日この頃、マスク姿にフルフェイスシールドカバーを装着した40歳前後の男がやってくるのがみえた。30秒に1人くらいしかすれ違うことのない郊外の国道沿いだからと、ぼくはマスクをせずに手にぶら下げ持って歩いていた。その男になんとなく、ちょっとした恐怖を感じ、危うきに近付かずの精神で、車が走ってこないタイミングを見計らって、向かい側の歩道に移動した(逃げた)。その男と通り過ぎて思ったのだけれど、ひょっとしたら、マスク、フルフェイスシールド男は、ぼくが感じた恐怖とはまた別の恐怖を抱いて歩いていたのかもしれない。これはほんとうにどうでもいいことだ。

 昼過ぎに車で妻を病院まで送っていった帰り道、ラジオからコラムニストの小田嶋隆さんが病気で亡くなったとの訃報を聞く。30数年前、初心者向けパソコン雑誌「ASAHIパソコン」のPCコラムで初めてその名前を知り、自分と同じ1956年生まれの同級生じゃないかと勝手に親近感を抱いていた。その後様々な媒体で目にしたコラムの内容は、常に斜に構え、そして傍流に身を置いている姿勢に共感したものだ。哀しい。偉愚庵亭さんさようなら。