出勤初日から天候も悪く、心まで曇る。
現在の現場もたまたま隣の県まで行く遠距離移動で、どこにも寄らずに行くと2時間近くかかる距離であった。
もうこの時点で心は折れかけている。
すると、自分の運転する2トントラックの助手席に乗せた自分の荷物からバイブレーションの振動が聞こえた気がする。
初日から失礼のないよう携帯電話はマナーモードにしてある。当時の交通法は車の運転時の携帯電話の通話はそこまで厳しくないので、運転しながらバックから携帯電話を取り出して表示をみると知らない番号からかかってきているのが見え、「これはもしかすると?」と電話に出たら先輩従業員の人だった。
「再三最初に言ったものも覚えられないのか!会社に入った1日目からお前はプロなんだぞ?勉強してなかったのか?」
自分はすみませんと言うしかなく、初日なので反論を抑え込んだ。
続けて「現場に遅れるのは許さない。次からは気をつけて」と念を押され、通話が終わった。
…悪寒がしてきます。頼るのはこの人しかいないがこれからを迎えるにあたり、悪い予感しか湧かなくなってきました。
長いこと一人で仕事をされてきて頑張ってきた人なんだなと、余計な事以外それを仮想して再度気を取り直し、現場へと向かいます。
1話での求人票の従業員数の項目、14人とは誰なのかこの時は知るよしもなく、きっと現場に着いたら他の従業員も居るのだろうとにわかに疑うこともよぎりました。
社長は一人しかいないとは言ってませんでした。少ないと言っただけで。
現場に予定より20分ぐらい早く着くことが出来ました。ちゃっかり先輩従業員の人は着替えまで済ませ、「来るの遅いぞ」と案の定言われました。
何か準備をしなくてはならないだろうと思っていましたが現場は車を停めたここから100mぐらい離れた所に先輩は一人で歩き出しました。
教わる気持ちもあり、慌てて着替えをしている途中ながら先輩について行きキョロキョロと挙動不審ながらにも自分が尋ねました。
「あの…、現場に行くのですか?」
すると、「なんでついてくる?変わったやつだなお前!」
今まで一人だったからなのか、まるで会話になっていません。茶化しにもならない茶化しで一人で呟き去って行きました。
少しあとでわかったのですが、この人にとって喋る人は嫌いだったようで、この時の対人関係では思ってもいない茶化しに自分はまだ気づきません。
人間怖いものでその後、自分はそれに慣れて行くのでした。
先輩は黙ってやらせてみよう精神だったのかな?なんて思ったこともありますが、この時は初心者で入った新人の自分にはそれすらもたぎる不安から、難解なことである。
それでも勝手に色々するわけにもいかず、こんな自分に出来ることはなにをやるかの最初の説明を求めて、質問を繰り返してしまいました。
「何か準備しておいたほうがいいなら教えてください。」
精一杯の質問をしました。
「俺が戻ってくるまでタバコでも吸って待っとけよ」と返答してくれました。
「え?いいんですか?色々と覚えたいので待っていますね?現場も早く知りたいです。」
と。
そこからまた先輩は相槌も打たずに歩いて行きました。
30分経ちました。こんな時の30分はとてつもなく長いのです。仕事をさせてもらいたく来てるとはいえ、また不安と考えがよぎります。
つづく
第2話を読んでいただきありがとうございます。