ポール・ウェラーの来日を知ったのは、ツアー最終前日の東京でのライブに向かうところをアップしたフォロワーさんのインスタで。

モッズ界のボスとも呼ばれる彼の音楽を殊更追い求めていたことはなく、最近の作品に触れてはいなかったが、ジャム~スタイル・カウンシル~ソロと続く作品のいくつかはコレクションしており、前述のインスタをきっかけに最近の彼のライブをYouTubeで漁ってみたり、Apple Musicで最近の作品を聴いてみたり。



で、これがなんかカッコいい。


さすがに65歳ともなって顔には深い皺が寄っているが、その枯れた雰囲気すらすこぶるカッコいいのだ。ラフではあるが相変わらずのモッズライクなファッションも昔以上にサマになっているほどにスリムな体形は維持されていて、長く続けたバンドを去ってソロ活動を続けるこの国の某ボーカリストとは大違いである。

パンク好きにとってジャムといえば何と言ってもイン・ザ・シティってところなのだろうが、自分が熱心に聴いたのは、電話のベルで始まるGIRL ON THE PHONE/電話のあの娘がオープニングで、マーサ&ヴァンデラスの大ヒット曲のカバーHEAT WAVE/恋はヒート・ウェイブ(復活したザ・ロッカーズが和訳でカバーしたこの曲もお勧め)で終わる4枚目のアルバム「セッティング・サンズ」。



高校生の頃、なんでイン・ザ・シティに行かず、このアルバムばかり聴いていたのか思い出せないが、ストラングラーズとはまた違った感じでバンドのサウンドをリードするブルース・フォクストンのベースが気に入っていたのかもしれない。ただ、かなり入れ込んでこのアルバムを聴いていた割に、その前後のアルバムには一切手を出さなかったのは、単に他に聴きたいバンドが山積みだっただけのことかも知れない。

再び、ポール・ウェラーの音に触れたのは、高校を卒業して社会人生活にも慣れた20歳の頃、スタイル・カウンシルのデビュー・アルバムカフェ・ブリュで。それまでのジャムとは違いジャズやソウル、ボサノバなんかの要素も感じるサウンドに驚き、しばらくの間ヘヴィ・ローテーションになった記憶がある。


このアルバムのジャケットに映るステンカラーのコートを羽織るポール・ウェラーがやけにカッコよく見えて、似たようなコートを買ってほとんど人通りのない田舎町の駅前通りを闊歩していたなんてこともあったり。 


そういえば同じ時期、ルースターズを脱退した井上富雄が結成したブルー・トニックもファッション、サウンドともにこのスタイル・カウンシルに近しく感じてよく聴いていたっけ。


で、スタイル・カウンシルだが、これもやはりこの一枚だけで、その後のアルバムには手を出さなかったのは、まだまだビートの効いたロックの方に魅力を感じていたからだろう。井上富雄のブルー・トニックも聴き込んだのは12インチシングル一枚だけだったし。


以降、最近になるまでポール・ウェラーにはすっかりご無沙汰していて、何年か前に何枚かの初期ソロ作品を買ってみただけ。



それが、先のインスタをきっかけに聴いた最近のアルバムがすこぶる今の自分にハマったのだから、音楽との出会いってホントに不思議なものだ。


特にBBC交響楽団と共演したライブ・アルバムのオーケストレイテッド・ソングブック、一貫してアコースティックなサウンドで奏でられるトゥルー・ミーニングスが出色。それぞれのアルバムジャケットに映る枯れた彼の姿から、長い間誠実に音楽に向き合ってきたことが伺えるように感じるのはあながち間違いではないだろう。



さっき知ったことだが、今回の日本ツアーにはここ札幌でのライブも組み込まれていたらしい。せっかくゴッド・オブ・モッズのライブに触れる機会だったのに知るのが遅すぎた。
昨日札幌ドームで行われたクイーンのライブには行こうなんて気持ちが少しも起きなかったのに、その10分の1にも満たない会場(Zepp Sappro)でのライブを見逃したのは痛恨の極みと言っていいだろう。


次の機会は絶対に逃すまい。それまではじっくりと新たな彼の鼓動に揺さぶられることにしよう。


今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。