暑い、とにかく暑い。


比較的涼しいと言われる北海道も、この一週間は酷暑と言っていい日が続いている。ここ札幌の昨日の最高気温は34.4℃だったらしいが、朝10時過ぎに手持ちの温度計を確認すると37℃を指していた。まぁ、せめてもの救いは本州方面に比べて湿度が比較的低いことか。
それでも今年に限っては、避暑のために北海道を訪れようなんてことは控えておいた方がよさそうだ。

暑い、暑いと言い続けたところで涼しくなるわけではないし、ここはなんとか気分だけでも涼しくなるようなロックはないかと考えてみたが、そもそも熱く燃えたぎるようなロックが好みの自分のコレクションにそれらしいものがあるわけもなく・・・。そこで頭に浮かんだのがクールス!たまたまバンド名がそれらしいってだけで、黒、黒、黒のデビューアルバムのジャケットからもわかる通り、見た目もサウンドも全然涼しげではないのだが。


ということで、この週末は久々にクールスのDVDを引っ張り出し、酒の肴に繰り返し観ているというわけだ。


クールスは舘ひろしと岩城滉一、水口晴幸が中心となり結成したバイクチームが前身であることは有名。(岩城滉一はバンドには参加してませんね)
その辺の話は、クールスのリーダー佐藤秀光の著書ハングリー★ゴッド、元メンバーの大久保喜市の著書ストレンジ・ブルーに詳しく記されている。


とにかく昭和50年代に10代を過ごした者なら、キャロル、クールスの名を知らない者はいないと言っていいくらいに、あの頃の不良少年にとってはマストなロックン・ロールバンドだったはず。
あの頃、キャロル、クールスどちらのレコードも持っていなかった自分でさえ、キャロルのファンキー・モンキー・ベイビー、クールスの紫のハイウェイ、シンデレラ辺りはそらで歌えたのだから。

そんな自分が初めてクールスのアルバムを聴いたのは高2の冬、クラスが別だったA藤君に借りたチェンジリング。今となってはヒットメーカーとしてすっかり有名になってしまった横山剣の加入直後にリリースされたアルバムだ。

紫のハイウェイ、シンデレラ辺りのいかにもなナンバーを期待して針を落としたのだが、一曲目のGREAT REALLY ROCK’IN’ GIANTのビッグバンド風なサウンドに「クールスってこんな感じだったっけ?」と肩透かしを食らった思い出がある。


当時はすでにARBやモッズなんかの骨太なロックに傾倒していた自分には、アメリカン・ロックン・ロールの正統派と言っていいそのサウンドが少しだけつまらなく感じたのだろうが、それはあくまでも当時の自分の嗜好の問題で、彼らの作り出したサウンドの完成度とは全く違う次元の問題ということで許していただきたい。


その後長い間、クールスのアルバムに手を出すことはなかったが、クールスといえばどうしてもこのチェンジリングのジャケットが頭が浮かんでいたのだから、10代の出会いってのは恐ろしいほどの影響力があるようだ。


そんな自分が改めてクールスに触れたのは、六本木のEXシアターで開催された彼らの40周年アニバーサリーライブを収めたDVD「COOLS 40TH ANNIVERSARY LIVE 2015」で。手に入れたのは2016年だからあの頃からすでに35年ほど時が過ぎていたことになる。


手に入れたきっかけは、たまたま目にしたこのDVDのジャケットに映るボーカル村山一海の後姿が妙に心に引っかかったからだったはず。



何の前情報もなしに手に入れたこのDVDだったが、冒頭からゲストとして元メンバーの横山剣が登場、そしてオープニングナンバーはあのGREAT REALLY ROCK’IN’ GIANTだったのは単なる偶然ではなく、自分にとっては必然だったのだろう。
あの頃自分の琴線に触れなかったこの曲が今になって妙にかっこよく聴こえたのは、自分の嗜好の変化もあっかも知れないし、単に自分が歳を重ねてきたからかもしれないが、そこはやはり、彼らの40年も続く長い活動で培ったバンドサウンドの成せる技だったのではないだろうか。このDVDで見せつけられるバンドサウンドは演奏力の高さ以上にいい意味での軽さというか、いい感じに力が抜けていてとても心地がいい。

そんなところもこの暑い夏に愉しむにはうってつけの一枚かもしれない。


オールタイムベスト的なライブの中にあって、興味をそそられたのは、横山剣の手による新曲の泣きながらツイスト。
昭和歌謡的なメロディーがクールスサウンドとうまくマッチしていて、彼らの新境地が開かれた感があった。

その後にリリースされた村山一海のソロでもこの辺りの昭和歌謡チックな曲が何曲か披露されていたので、彼ら自身もそれなりの手応えがあったものと推察される。



いずれにしてもこのDVDをきっかけにしてすっかりクールスにハマってしまい、手当たり次第DVDやアルバムを手に入れていったのだが、やはり彼らのサウンドのカッコよさを体感したいなら2000年代以降のいい感じで力が抜けたライブDVDがお薦め。昭和50年代に10代を過ごした同年代の方ならきっとこのクールさがわかるはず。



結成時のリーダーであったにも関わらず早くにバンドから離れた舘ひろし、バンドには参加しなかった岩城滉一のソロも聴いてみたがあまりピンとはこなかったが(舘ひろしの朝まで踊ろうはよくカラオケで歌ったけど)、バンド脱退後ほどなくして山下達郎プロデュースでリリースされた水口晴幸のBLACK or WHITEは出色の出来で必聴。



クールス脱退後、バンドに残ったメンバーと距離を置いたまま今に至る舘ひろしと水口晴幸の対談がパンク雑誌BOLLOCKSに掲載されたのが、丁度クールスにハマった時期と重なったのもちょっとした驚きだったっけ。


とてつもなく暑い2023年の夏、力が抜けた彼らのゴキゲンなロックン・ロールが、クールスというその名の通り、きっと皆さんにクールなひとときを届ける清涼剤になるだろう。



今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。