7月7日は全国的に七夕なのだが、なぜかここ札幌の七夕は8月7日となっている。旧暦と新暦の解釈に依るもののようだが、まぁ、そんなことはどうでもいい。


2023年の7月7日、また一人、偉大なロッカーがこの世を去ったのだから。


PANTAの体調不良はかなり前に友人から聴いていた。それでも6月には復活ライブも行われ、その不屈の精神に感服したばかりであった。
享年73歳は、この長寿国日本にとってはまだまだ早すぎるが、まずは偉大なるロッカーの冥福を祈ろう。


正直なところ、彼の紡ぎ出した音楽、ロックを語れるほどの熱心なファンではない。頭脳警察~ソロ~PANTA &HAL~ソロ~頭脳警察と続く活動の中で、すべての作品を聴いてきたわけではないのだから。




今からもう40年以上も前の16か17歳の頃、一緒に学祭バンドをやっていたギターの男から借りたPANTA&HALの1980XがPANTA初体験だったはず。

すでに頭脳警察の名を知っていたかどうかの記憶はない。もしかするとこのPANT&HALを知ったことで頭脳警察に繋がったのかも知れないし、3億円強奪犯のモンタージュ写真がジャケットの発禁アルバムのことはその時すでに知っていたのかもしれないが、とにかく自分にとってのPANTAの原初体験がPANTA&HALだったことは間違いない。


PANTA&HALに興味を持ったのはPANTA自身というより、当時のフェイバリットバンドのひとつだったARBのベーシスト野中サンジ良浩が一時HALのメンバーだったことを知ったからだったように記憶している。ARBの中でもサンジの存在感は際立っていたので、その彼が在籍していたバンドとなれば興味を持つのは必然だったはず。


また、HALというバンド名が映画「2001年宇宙の旅」に登場するコンピューターの名前であるということも10代の若者にはそそられるものがあったのかもしれない。

さて、1980Xは前作マラッカから一転、東京をテーマとして制作されたアルバムであるが、昭和の終わりXデーを想起させるタイトルの1980Xが、当時、社会や政治のことなんて何にも知らなかった若者の心を揺さぶったのもまた事実であるが、それは今となればただただ恥ずかしい限りである。


世界初の試験管ベイビーであるルイーズ・ブラウンをモチーフにしたB面一曲目のルイーズ、今でいうストーカー、パパラッチなんかを想起させるモータードライブ、それこそXデイを描いたと思われる臨時ニュース、等々、その時代のリアルが伝わる曲が並ぶ名盤といっていいだろう。
サウンドが前作よりソリッドさを増したのも、東京ロッカーズを始めとする同時代に起きたパンクやニューウェイブムーブメントの影響によるものだと推察される。


自分がこのアルバムを聴いた時期にはすでに3作目のライブアルバムTKO NIGHT LIGHTがリリースされていて、学祭バンドの練習に使っていたスタジオを併設したレコード店に、このアルバムのジャケットを大きく拡大した広告パネルが飾られていて、なんだかそれがやけにカッコよく自分の眼には映って、このアルバムも手に入れたいと思ったものの、他に聴きたいアルバムも多い中、2枚組で若干値が張るこのアルバムに手が出せなかった思い出がある。

その後、20年以上の時を経てようやく手に入れましたが(笑)


PANTA&HALから頭脳警察まで辿り着くには、もう少し長い年月を要すことになる。

1987年に発刊されたリザードのモモヨによる自伝的私小説「蜥蜴の迷宮」の中で、リザードの前身である紅蜥蜴時代から彼らが頭脳警察のメンバーと繋がっていたのを知り、俄然、頭脳警察に興味が湧いたのだった。


初めに手に入れたのは初期ラストアルバムの悪たれ小僧。先の私小説の中でこの悪たれ小僧に関するエピソードが語られていたからだが、PANTA&HALの作品以上に惹きつけられることがなかったのがどうしてかは、今となってはよくわからない。


その後、頭脳警察のアルバムを一通り手に入れる中で「ふざけるんじゃねぇ」や「BLOOD BLOOD BLOOD」なんかの曲に打ち震えることがあっても、やはりPANTAといえばPANTA&HALのサウンドが浮かぶのは、一番多感な時期にPANTA&HALのサウンドに触れたことに依るのだろう。
PANTAファンからしたら多分亜流なのだろうが、それはそれで仕方あるまい。これが自分の嗜好なのだ。


HAL解散後、ソロに再び転じた後に一時ポップ路線に走った作品はかなり酷評されていたが、個人的には嫌いではない。

あの頃、ハードロックバンドのBOW WOWも同じようにポップ路線に移行していたのを考えると、時代の空気がそうさせたのかなとも思わないでもないか。


いずれにせよ、そんなことに我々がいちいち目くじらを立てることではないだろう。


最近公開されたアナーキーの藤沼伸一が監督した映画ゴールドフィッシュで在りし日のPANTAの姿を見ることができたのは幸運だったかも。


いずれにしても鮎川誠に続き、また一人の日本ロック界の礎を築いたロッカーが旅立ってしまったことは残念至極であるが、きっとあちらの世界で早速、今年中止となったシーナ&ロケッツとの対バンイベントに代わるセッションをシーナ、鮎川とともに楽しんでいることだろう。


今夜はそんなことを想像しながら、彼らの残したロックを肴にまた酒を飲むことにしよう。



今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。