モッズの野音公演はライブそのものだけではなくライブ前から、それもライブ告知があった時からすでに始まっていると言っていい。
別にそうしなくてもよいのにチケット予約開始と同時にネットにアクセスし
抽選日は朝から落ち着かず、当選したらしたでいち早く飛行機と宿を予約。
次は何を着ていくかで悩み
身に着けるアクセサリーをわざわざ探しに出かけ
と、なんだが恋する10代のような感じになるのは毎回のことだ。
迎えた7月9日(土)、心配していた天気はなんとか晴れてくれていて一安心。
17時開場、その前の14時からはグッズ先行販売開始だというのに、落ち着かないので午前中のうちに宿を後にして、ブランチの後にお茶の水の楽器店街を少しだけぶらりしたところで13時。
グッズ販売には少し早いがとりあえず会場に向かうことに。グッズ販売開始30分前には会場に着いたというのに、すでに開始を待つ長い列ができていたのは驚き。
酷暑の中で多くのファンを待たすわけにもいかないと思ったのか、予定より15分早くグッズ販売が開始された。いつも事前に何を買うかほぼ決めて臨むところ、今回はなぜか決め切れていない。先に買って通り過ぎていくファンの持つTシャツの色を見て、よしこれも買おうと決めたはずなのに、いざ買う段になって口から出てきたのはその他のグッズで茫然自失。しかし、自然に口から出たということはそういうことなのだろうということで、あえて訂正はせずにそのままでいくことに。
買ったばかりのグッズをバッグに押し込み、あとは友人との待ち合わせまでの2時間をどう過ごそうかと考える。この暑さの中公園内をブラブラするのは危険だし、とりあえずは近くのコンビニで冷えたビールでも買ってきてメンバーのサウンドチェックの音を愉しもうと決め込んだ。
音が丸聞こえの野音に限ってなのか、ライブ直前のサウンドチェックで演奏されるナンバーはほとんど当日のライブでは演奏されないのは、これもちょっとしたメンバーからファンへのサービスということなのか。
LOOSE GAMEが演奏された時、今回は本編でLOOSE GAMEが聴けないのか・・・と少しだけ残念に思ったものの、早く会場に来た者だけが味わえる幸せも噛みしめることとなったのは言うまでもないだろう。
そうこうしている(ビールとレモンサワーを空けている)うちに、友人のK夫婦が到着。モッズ野音公演の際には必ず顔を合わせている高校時代からの、しかも同じ会社に入社し今は東京に暮らす旧友だ。約1年ぶりの再会、お互い変わりがないことを確認するのもいつものこと。
ほどなく、もう一人、今回初めてモッズのライブに同行する友人が到着。こちらはパンクバンドをやるために20歳を過ぎてから上京した高校時代からの唯一人の親友、現在はベインビールというパンクバンドでボーカル兼ギターを務めている。
全員が揃ったところで先に着いた友人からキンキンに冷えたワンカップを渡されて乾杯。自分を挟んで両隣に位置する友人2人は高校卒業以来、それこそ40年振りの再会だ。しばし歓談しているうちにあっという間に開場の時間。
別席の友人夫婦と終了後の待ち合わせ場所を確認し合い、もう一人の友人と会場内へ進む。
会場内の売店で缶ビールを買って進む今回の席はBブロック最後方。予想に反してなかなかの好位置。
こうやって友人と並んでライブを愉しむのは何十年振りだろうか。一人で愉しむライブも悪くないが、やはり仲間と同じ時間を共有しながらの今回のライブは格別である。
昨年の野音はライブ開始時点ですでに夕暮れは過ぎていたが
今回は夕暮れにはまだまだ早い時間。
明るい時間に始まり、ライブが進むにつれ段々と夕暮れに近づき、終盤辺りですっかり夜の世界に変わったのを味わうのが野音でのライブの醍醐味だろう。
ちょっとしたワクワクと緊張感の中、オープニングを告げるSEが流れると会場の雰囲気が一変する。
オープニングナンバーはS・O・S。
紙面のTOPを飾るのは 血に塗られた人と人
どれぐらい 傷を受ければ 気づく
続く2曲目はF.T.W. ”Fuck The World”。
NO! Hate & War NO! Bomb Shell
NO! Kill & Murder NO! Ground Zero
そして3曲目にMAYDAY MAYDAY
枯れたコンクリートとガラスの街
地図から消された絶望Jail City
貧しいものから盗む王様と家来
地と負の連鎖が踊る
命を削った明日へのパズルも
一秒もあれば崩れちまう
口だけのボスがシケた名声のため
名も無き声達を殺す
海の向こうで続くやるせない戦い。
この時、モッズはどういうメッセージを持って今回のツアー、そして野音に臨むのか。オープニングの3曲でその答えが明確になった。
デビューから40年を過ぎた今も、彼らは時代を映す鏡であり続けている。そして彼らが紡いできた曲、メッセージに普遍性を感じながらも、この3曲の歌詞に普遍性を感じる今の世の中はクソったれなんだと自分に言いかせる。
4曲目が終わったところで森山が TVイエローのレスポールJrに持ち替えたのでボーカルチェンジだとわかる。
やはり苣木教授がフロントに立つ。苣木はまさかのメンバー紹介を織り込みながらBOOGIE BOMBを熱唱。かつてモッズのライブでメンバー紹介なんかしたことがあっただろうか。ちょっとしたサプライズも40年彼らを応援し続けたファンへのご褒美だと思っておこう。
この曲と次のSHE’S THE Cでは森山のギタープレイを堪能。
7曲目涙のワンウェイから8曲目のハートに火をつけてに続くアプローチは、個人的な今回のライブのハイライト。
涙のワンウェイの泣きのメロディは昨年の野音前にMaxシングルがリリースされた時から野音で聴きたいと思い続けてきたナンバー。
ハートに火をつけては今ではあまりライブで聴くことがなくなった初期セカンドからの名曲。隣に友人がいなかったら、完全に涙腺崩壊となっていただろう。
映画トゥルー・ロマンスに題材を得たクラレンス+アラバマ、3rdアルバムからのGO-STOP BOOGIEでは、いつものようにウエスタンジャケットに着替えた森山が60代半ばを過ぎたとは思えぬキレキレのパフォーマンスを披露。本人曰く昔のビデオを見て当時と今のパフォーマンスの違いに唖然としたとのことだが、いやいや今の方が何十倍もカッコいいのは間違いない。
この後アンコール前まではモッズフリークではない隣の友人も知っているはずの4曲が並んだ。
そして1度目のアンコール。
本編のオープニング3曲と合わせたかの如く今の世界を憂いるようにUNDER THE GUN、いつの日か・・・Doomsday Warの2曲が演奏される。
少しダウン気味の活動状況が続く中、天安門事件をきっかけにもう一度スイッチが入って作られたアルバムNAPALM ROCKに収録されたこの2曲は、2022年の混沌とした現在にも変わりなく響くナンバーだ。
そして、そんな時代の渦中であっても明日を信じるためにとの意味があったであろうREADY TO ROCKを放ち1度目のアンコールが終了。
2度目のアンコール。
LOOSE GAMEもTWO PUNKSもプレイされない今回のライブの終盤に我々ファンへ向けられたのは、佐々木周加入後現在のメンバーになってからのナンバーSTAY CRAZY。
寒い夜はレザーを擦り合い
熱い夜はグラスを鳴らし合う
Stay Crazy Stay Crazy
世界が笑っても 俺たちは曲げなかった
Stay Crazy Stay Crazy
時代が終わっても 俺たちは逃げない
Ah-Ah 逃げなかった
40年以上続く友が隣にいるライブでこの曲が聴ける喜びを嚙みしめている間に、大震災後にリリースされたアルバムROCKTIONARYに収めらていたKILL THE NIGHTが演奏されている。
そして2度目のラストLET’S GO GARAGE。続いて3度目のアンコール・・・と思っていたらまさかの終演。
この明日を見据えたハイなナンバーで終わらさせた意図。モッズは40年なんかじゃ終わらせない。まだまだ続きがあるんだというメッセージだと受け取ろう。
コロナ禍の中で行われた昨年の野音「約束の夜」と今回の「続・約束の夜」は2本で1セットのライブということもあり、曲の重なりは最新曲のREADY TO ROCKとラストナンバーのLET’S GO GARAGEの2曲のみ。
また、ツアー最終日のこの野音は、他のツアー各地で演奏された曲とほぼ変わっていないようで、こんなところにもモッズが現在進行形のロックバンドであることが明白に表れている。
次のアコースティック・ツアーもまた北海道は外れているが、これもコロナ禍における彼らの選択であり、ここはグッと我慢しそんな彼らを支持すべきなのであろう。
ライブの後は40年来の旧友3人で会場近くの新橋で飲み明かしたのは言うまでもない。
そして、その友人の一人で唯一人と言っていい親友のバンドである新生ベインビールの久しぶりのライブが9月4日、新宿LIVE FREAKで行われる。
2ヶ月も間を空けずに東京まで出向くのはいろんな面でかなり厳しいところだが、これを逃してしまってはきっと後悔するだろうということで、東京から戻ったその日に飛行機と宿の予約を済ませた。
モッズとの約束の夜は終わってしまったが、次は親友との約束の夜が待っている。
野音演奏曲
1.S・O・S
2.F.T.W
3.MAYDAY MAYDAY
4.STORY
5.BOOGIE BOMB
6.SHE’S THE C
7.ハートに火をつけて
8.涙のワンウェイ
9.クラレンス+アラバマ
10.GO-STOP BOOGIE
11.バラッドをお前に
12.JOHNNY COME BACK
13.ゴキゲンRADIO
14.パズル・シティを塗りつぶせ
ENCORE 1
15.UNDER THE GUN
16.いつの日か・・・Doomsday War
17.READY TO ROCK
ENCORE 2
18.STAY CRAZY
19.KILL THE NIGHT
20.LET’S GO GARAGE
本日も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。