実のところpunks-a-go-goと名乗れるほどPUNKに精通しているわけではない。
初めてのPUNKアルバムは中2の時に買ったトムロビンソンバンドの1stだったが、それも彼らがPUNKのカテゴリーで語られていると知ってのことではなかった。
初期パンク、ハードコア、メロコア、Oi、ポジパン色々あるがどれに傾倒したとかも全くない。
ベースギターをステージ床に叩きつけるジャケットと2枚組のアルバムを1枚の価格設定にしたいきさつのカッコよさに惹かれて買ったクラッシュのロンドン・コーリングで初めてパンクのカテゴリーで語られるアルバムにハマり、そこからTHE MODS、ARB、THE ROOSTERSなんかに流れていったことからもわかるとおり、パンクから派生した、パンクが登場しなければ決して生まれてはこなかったビートが効いた日本のロックバンドにどんどん引き込まれていった口である。
当時はそんなビートロックとも呼ばれていたバンドが次々とデビューを飾りBOOWYの解散辺りでその人気は頂点を迎えることになる。
THE SHAKES、UP-BEAT、BUCK-TICKなんかもそんなカテゴリーで雑誌やなんかを賑わせていたが、これらはあまり好んでは聴かなかった。
THE STREET BEATSもそんなビートロックバンドの一つと言ってもいいだろう。
OKI、SEZIの兄弟を中心に広島で誕生したこのバンドは1988年にARBやアナーキーなんかと同じビクターエンタテイメントのレーベルInvitationよりアルバムNAKED HEARTでデビューを飾っている。
デビュー後はリズム隊がなかなか固まらずメンバーチェンジを繰り返していた印象があるが、自分が初めて手にした彼らの8枚目のアルバム「スピリチュアル・ライフ」もパーソナルメンバーはOKI・SEIZI兄弟のみで、元ケントリの上田ケンジやARBのKEITHなんかがサポートしている。
そういえば、元バービーボーイズのメンバーで浜崎あゆみのバックなんかでも活躍しているベーシストのエンリケが正式メンバーに加わった時はかなり驚きだった。
2002年にベース山根が加入、2011年にはドラムに牟田がカムバックしてからはメンバーもすっかり安定したようだ。
黒のテレキャスターを低く構えオーディエンスを煽るOKI、同様にメープルネックのPBを低い位置に構える山根、二人とは逆に黒のレスポールを意外に高い位置で構え派手なオーバーアクションとは無縁とでも言いたげに黙々と弾き続けるSEIZI、3人の後ろにどっしりと構えスティックを振り降ろす金髪の牟田、この4人のステージはパンクバンド然としていて男から観ても惚れ惚れしてしまう。
彼らのアルバムタイトルには、風の街の天使、魂が求めるもの、凛として風の如く、さすらいの歌、遥か繋がる未来、等々日本語がよく使われているのも特徴。
これらのアルバムタイトルからも想像できるとおり彼らの歌には、街の片隅でしっかりと未来を見据えながら日々を大切に生きようとする人々の暮らしが描かれている。
スピリチュアル・ライフの帯に書かれた「自由、現実、理想、葛藤・・・いのちの音がきしみあっている」の言葉は、このアルバムだけではなく彼らのアルバム全てに通底するものである。
また、「拳を握って立つ男」、「男として人として」等、男とはこうあるべきと思わせる歌も数多い。男として生きているのだからそれを歌ってこそのロックだと彼らの曲に感情移入してしまう自分だが、そんなことを公言しようもならジェンダーが叫ばれる昨今においては世間から思い切り突き上げらてしまうのだろうか?
いずれにしても彼らが叩き出す曲の数々からは、バンド名のとおり街の鼓動が聴く者の心の奥に響いてくると言っていいだろう。前述のTHE SHAKES、UP-BEAT、BUCK-TICKやBOOWY(後期)を好んで聴かなかったのは、もしかするとこの街の鼓動というものが彼らの曲から感じることができなかったからなのかも知れない。
そういえば、もう10年近く前に一度だけススキノの中心からほんの少し外れた市電通り沿いにあったライブハウスで彼らのライブを体験したことがある。ステージが続く途中の曲間に少し間があったりとショウ的要素はゼロ、それでも演奏中は熱さがしっかりと伝わってくるステージングに良くも悪くもライブハウスバンドだなと感じた記憶がある。
新宿ロフトでのライブを収めた何枚かのDVDを観ていたことからこの日も観客と一体となった熱いライブを想像して当日を迎えたものの、観客が15人もいない様子にあまりにも愕然してステージ前で拳を上げる勇気が出ずに一番後ろで壁にもたれて最後まで冷静にライブが進んでいくのをを観ていた自分であった。
このライブの前年くらいのはずだが、札幌駅隣りの桑園駅にほど近いスーパー銭湯の露天風呂に浸かっている時にサウナから上がり休んでいる男の姿があまりにもSEIZIに似ていてビックリしたことがある。いやいや、こんなところにビーツのメンバーがいるわけがないと、露天からあがり屋内の湯船に移動するとそこにもう一人見覚えのある姿が。どう見てもOKIである。そういえば前日は札幌でビーツのライブがあったはずだから彼らに間違いはない。思い切って声をかけてみた。やはりOKIだった。「昨日のライブ来てくれたの?」と聞かれ「いえ、仕事で行けませんでした」と答えると、「いいライブだったよ。次は観に来てよ」と裸姿で握手をしてくれた。彼らの歌の通り優しく誠実な男だった。それなのに翌年約束を果たすべく彼らのライブに向かった自分は誠実さとは反対の行動をとってしまったのだ。
今となっては、4人に対してなんて申し訳ないことをしてしまったことかと後悔の念ばかり。
次に彼らのライブが札幌で行われるときは最前列でしっかり拳を振り上げてこちらの鼓動を彼らに届けることにしよう。
それが男としてのケジメかな。
ではまた次週。