人を逆なでするものの言い方をしたり、いちいち癇に障る文章でメールを送りつけてくる人間(仮にAとしよう)がいる。
昔ならそんなことをされた暁には速攻でやり返していたが、長い会社生活の中でそんなことをしても何一つ解決しないことは学んできた自分。今回はそんな些末なやり口には振り回されないよう、努めて冷静に、一呼吸おいてから嫌味にならないように気を配りながら対応していた。

そんな日が続いて自分の中で収まりがつかなくなると、昼食時や帰宅途中のバスの中で心理関連の本なんかで気を紛らわせようともしていた。


そんな状況は自分だけではなくチームのスタッフみんなも同様だったようで、チーム全体がどことなくピリピリというかイライラしているようなのが週前半で続いていた。
こりゃあちょっといかんなと思い、週中日の朝のミーティングで柄にもなく「怒ったりイライラしてもいいことなんかないんだから冷静に対応していこうよ」なんてことをみんなに向かって話してみたり。



その日の午後、そのAに連絡事項がありメールを送った。チームのスタッフもCCに入れて。


間もなくひどい物言いでの返信が。 


これを読んだみんなのイライラが伝わる。


冷静に冷静にと思っている最中、自分の内線のベルが鳴り、受話器を取る。


相手はメールの送り主だ。


名乗りもせずにいきなり

「なに、これ?」

「ありえないんですけど」

「一体B(←私のとこではではない別の組織)はなにやってるんだ」


いいかげんにしやがれ!! 


瞬時に自分の中でスイッチがONに切り替わった。
「グダグダ言うならお前がやってみろ!」

「人様のことを言えるほどのことをしてきたのか!」

「Bに行けるよう推薦しておくから、お前が自分でBを改革してこい!」 


受話器を叩きつける。
フロア内は凍りついている。

キレたことに後悔はないし、とりあえず自分で落とし前がらつけられる範疇のこと。

ただ、朝のミーティングでみんなに語ったたことと逆のことを自分がやってしまったという点ではメンバーから非難を受けても反論はできない。ということで、フロアにいたみんなにはその場ですぐに素直に謝った。打ち合わせや在宅勤務でその場にいなかったメンバーもいるので、自分が言ったことと逆のことをしてしまったことを詫びるメールをメンバー全員に送ったところで、隣のチームの子に「●●さん3秒ルールですよ」と笑いながら諭される。怒りがこみ上げたときは3秒だけじっとしてみる(クールダウン)ってやつだ。

「いやいや、3秒どころか、この3日間ずっとじっとしてたから」と、こちらもちゃらけた感じで返しつつ、「でも、ごめんね」と、ここも素直に謝っておく。

確かにクールダウンは必要だ。
でも、時に感情をむき出しにしなければどうにもやりきれない、そんな時もあるだろう。

と、自己弁護。

こんな日はまっすぐ家に帰って速攻酒だ。
そんなことを考えていたらチームの1人から「久しぶりにガチャ切り見ました。怖すぎて冗談も言えなかった(笑)今夜はお酒が進みますね」と返信メール。
見透かされてる・・・。


せめて深酒、悪酔いは避けなければと夕食の際の晩酌は見合わせたものの、こんな時は無理に落ち着こうと思ってもうまくいかないことはわかっている。
21時近くになってから薄めのハイボールを飲みながら、今の気分を表すタイトルの曲をコレクションの中から探し次々聞いていく事に。

まずは頭脳警察7からBlood Blood Blood

頭脳警察なら「ふざけるんじゃねぇよ」に行きたいところだが

ガタガタぬかすなよ
文句タラタラたれてるヒマがある位なら
冗談じゃねぇよ 笑わせんじゃねぇよ
とっととぶっとばされるまえに そこから失せろよ

この歌詞が聴きたくてBlood Blood Bloodの方をセレクト。


その後も同じアルバムから、わかってたまるか、イライラの2曲をセレクト。



次はLIZARDⅣからマシンガンキッド。
ライブアルバム彼岸の王国にほんの少しだけ収録されていたやつの方がインパクトは大だが、フルバージョンで聴きたくて22年ぶりにスタジオレコーディングされたアルバムに再録された方を。

そう、俺も俺のマシンガンをぶち込んでやるぜ!!


最後はTHEE OUTMODSのアルバムRock’n roll Piratesを手に取り収録曲のタイトルを目で追う。


あった!これこれ!

いいかげんにしやがれ!!

まさしく今日あの瞬間はこんな感じだったぜ!とCDラジカセにセット。

そこらの心理本やメンタルケア本を読むよりこっちを聴いてた方が何十倍も落ち着くってもんだ。
60歳を目前にしながらも相変わらずパンクをロックを好きでよかったぜ。
と思いながらハイボールを飲み干しベッドにもぐりこむ。

暗くなった部屋で天井を見つめながら 


でも、やっぱり激高したところで何の得にもなりはしないし、イライラはしないに限るな


と反省しつつも、まだまだいいかげんにしやがれ!!と思える自分に少しだけ安堵する夜なのであった。


つづく…?