何年か前に雑誌ロッキン・オンでベースの名曲100選という特集があったが、こんな風にベースにスポットを当てた特集記事を目にすることは稀である。 


ベースマガジンという雑誌があることはあるのだが、そこに自分の好みのタイプのベーシストが掲載されることは少ない。


ということで、先日11月11日はベースの日だったということもあり、今回はpunks-a-gogo的偏り過ぎのベースの名曲たちを。 



10位 Come Together
ポール・マッカートニー【THE BEATLES】


言わずと知れた名曲&名ベーシスト。
ビートルズ、ポールの曲から1曲を選ぶのは至難の業。
本曲と同じアビィ・ロードに収めたらたサムシング、ラバー・ソウルに収められたドライブ・マイ・カー等々名曲名演のオンパレードだが、のっけからポールのベースで始まることと、とりあえず自分がコピーした曲ということで。



9位 I Can’t Tell You Why(言いだせなくて)
ティモシー・B・シュミット【EAGLES】


大ヒットアルバムホテル・カリフォルニアの次作ロング・ランからのヒットバラード。


イーグルスでベースの名曲というと呪われた夜なんかが選ばれるのだろうが、あえてオリジナルベーシストランディ・マイズナーの脱退を受け加入したティモシー・B・シュミットが弾くこの1曲を。
ベースのフレーズも素晴らしいが何といっても曲自体が素晴らしい。ホテルカリフォルニアの影に隠れ評価が低いアルバムだが、この曲を含め佳曲揃いのアルバムでおススメ。



8位 Tell Mama
David Hood【Etta James】


普段はソウル・ミュージックの類は聴かないのだが、敬愛するザ・モッズのベーシスト北里氏(キーコ)がインスタかなんかで大推薦していたので買ってみたのがソウルシンガーエタ・ジェームズのアルバムテル・ママ(クラレンス・カーター「テル・ダディ」の改作)が収められたアルバム。


バックはフェイムスタジオ出入りのミュージシャンということでまったく知らないベーシストDavid Hood。

単純なフレーズが続くだけだが、このグルーブはなかなか出せたもんじゃない。



7位 New Year’s Day
アダム・クレイトン【U2】


U2は熱心に聴くことはないしメンバーの名前もボノくらいしか知らないが、何かのきっかけで耳にしたこの曲だけは妙に引っかかりYouTubeで何度も繰り返し見入ってしまったほど。


この曲も単純なフレーズが繰り返されるだけだが、曲をリードしているのは間違いなくこの単純なベースのフレーズだ。この曲が気に入り過ぎて何枚かU2のアルバムを購入してみたが、自分の琴線に触れたのは結局はこの曲のみ。それでもこの曲の良さに変わりはなし。



6位 Romeo & Juliet
北里晃一【ザ・モッズ】


大股を開いて黒のムスタングを低い位置で弾く姿がカッコよすぎるモッズのベーシスト。

そのスタイルからゴリゴリのパンクタイプのベーシストと思われるかもしれないが、あくまでも森山の歌や苣木教授のギターが奏でるメロディーを活かすためなのか、そのベーススタイルは、先に紹介したテル・ママを推薦していることからもわかるとおり、自らのベースが前面に出ることを良しとせずにリズムを正確に刻むことに徹するMrベースマンだ。

モッズの曲にこれぞベースの名曲というものがないのがそのスタイルを表している。が、土屋正巳がプロデュースした2枚のアルバムにはシンプルながらもドキッとするベースのフレーズか聴ける曲が揃っているように感じるのは気のせいか。


そのうちの1枚「F.A.B」からあえて王道のストロングタイプの曲ではなくロックバラードの1曲をチョイス。



5位 One More Kiss
井上富雄【ザ・ルースターズ】


井上富雄も北里晃一と同様に印象的なフレーズを奏でるというよりは、歌い手の後ろでしっかりとリズムを刻むタイプのベーシストではないだろうか。
そんなスタイルだからこそ、佐野元着、布袋寅泰、桑田佳祐なんかの超メジャーミュージシャンからも声がかかるのだろう。ただ、そんな大物ばかりに行かずに、シオンやジグザグなんかのマイナーどころとも地道に活動を続ける姿勢がなんとも素敵じゃないか。 


初期ルースターズの中から選んだこの曲で聴けるベースプレイは王道のロックンロールタイプ。なのに、何度も弾いてみたくなるところがツボ。



4位 ミスター・ギブソン
矢沢永吉【キャロル】


ロックンロールシンガー矢沢はベーシストとしても卓越した才能を持っているのは周知のとおりだが、そのプレイスタイルはポール・マッカートニーの影響が大きいのではないかと思われる。

キャロルで聴かれるベースフレーズがシンプルなようでその実かなりエキセントリックなのは、独特な間とタメにあるのではないだろうか。ファンキー・モンキー・ベイビーなんか弾いてみるとそう感じるのだ。なのに、ミスター・ギブソンを選んだのは単純に曲の始まりがベースのフレーズだから。



3位 キッズ/バビロン・ロッカー
ワカ【リザード】


ベースを弾いてみたいと思ったのは間違いなくワカの影響が一番。

ファースト、セカンドでは所謂ストラングラーズのジャン・ジャック・バーネルばりのゴリゴリしたベースプレイを聴くことができる。この2枚では同じフレーズをずっと繰り返すパターンが多いのだが、これが自分で弾いてみるとなかなか難しい。ライブにおいてこれを正確に弾き続けるにはかなりの鍛錬が必要だったのではなかろうか。


ベースのフレーズを含めサウンドのほとんどはモモヨの手によるものなのだろうが、自分にとってリザードというバンドはワカのベースがないと成立しない。事実、彼がプレイしていないアルバム岩石庭園はリザードというバンド形態をとってはいるが、モモヨのソロ作品のように感じてしまう。

ここではそんなワカの初期のベーススタイルが堪能できる1曲を(というか、2つの曲が1つに繋がったものです)。イントロ部分で同じフレーズを繰り返しながら変調していくところも聴きどころです。



2位 BAD NEWS(黒い予感)
野中”サンジ”良浩【ARB】


キース、田中一郎、サンジの3人から放たれるARBサウンドがその後のロック人生に与えた影響は計り知れない。
その中でもサンジのプレシジョンベースを弾く姿はシドのようでもありARBのライブステージにおけるビジュアルに大きく貢献していたのでは。

肝心のプレイの方はまさにドライヴィングロックンロールベース、ダイナマイトベースなんて言葉がはまる感じだが、意外にそのフレーズは複雑なものも多く、音と音の間、切れが特徴的かも。


今回選んだこの曲はフレーズこそオーソドックスであるが、音と音の間、切れがこれぞまさにサンジ節!を味わえる1曲です。


どんなベーシストになりたいと聞かれたら迷わずサンジのような…と答えるだろう自分にとってサンジ脱退のニュースが田中一郎脱退以上にショックな出来事だったのは言うまでもない。



1位 LONDON CALLING
ポール・シムノン【THE CLASH】


それまでロックバンドの中にあって目立つことがなかったベースにスポットが当たるようになったのは、シド・ビシャスとこのポール・シムノンに由るところが大きいだろう。
腰より低い位置でプレべを構える姿が誰よりもサマになっている。

バンドにとって大きな転換期となったアルバムLONDON CALLINGのオープニングにしてタイトル曲のこの曲は、EmからF9のギターのリズムに続きポールのスライドするベースのリフで始まるイントロがあまりにも素晴らしすぎる名曲中の名曲。この究極ともいえるイントロがあってこそのナンバー、いやアルバムと言ってもいい。


ポール・シムノンのスキルアップがなければ成立しなかったと思えるこの名盤は、これ以上ないほどにベースの聴きころが満載だ。


決して派手ではないが、レゲエを通して培ったそのベーススタイルは多くのベーシストに影響を与えたのではないだろうか。


そんなベーススタイルはクラッシュ解散後に結成したHAVANA3AMのアルバムでも堪能できる。
HAVANA3AMの日本ツアー札幌公演でベースを弾くポールの姿を間近で見られたことは人生の大切な宝物だ。


↓ロンドンコーリングはPVがまたカッコよすぎ。



他にもベースを買うきっかけを作ってくれたレベッカの高橋教之さん、和製シド・ビシャスといえばこの人のスタークラブのAkiller、MrダウンピックのBOOWY松井常松等々紹介したいベーシストは数多いが、それらはいずれまたということで。