どちらかというと身の回りのものも楽器もオールドなタイプが好み。要はそのルックス、雰囲気に惹かれてしまうということ。

ギターならレスポールJr、ベースはプレべなら史上初の量産型エレクトリックベースと言われるオリジナルタイプのOPB、ジャズベなら1960年から1962年までに採用されていたコントロール部分が2連の所謂スタックコントロールタイプのもの。


まぁ、バンドをやってるわけでもなくそれほどギターやベースを弾けるわけでもない自分は、見た目がそれに近ければよいということで本物のヴィンテージものに拘りがあるわけではない。

手元にあるものもギターはギブソンのレスポールJrではあるけどフェーデットタイプの廉価版だし

OPBもフェンダーはフェンダーでもフェンダージャパンから発売されたスティングのシグネチャーモデルで

ジャズベに至ってはフェンダーではなくHISTORY製のものを購入し、2ボリューム1トーンからスタックコントロールに、ピックガードを赤のべっ甲柄に換えてそれらしくしてるだけ。

それで充分満足なのだが、コレクター気質だけは止められず、タイプ毎の音の違いもよくわかりもしないのに、コレクションにはないオールドタイプのものをもう一本となってしまうところが治らない。


ということで、次に照準を定めたのはヴァイオリン・ベース。


ヴァイオリン・ベースは1887年創業のドイツの楽器ブランド「ヘフナー(Karl Hofner GmbH & Co.KG)」から1956年に誕生した500/1が始まり。

ヘフナーの創業者カール・ヘフナーの息子であるヴァルターがデザインしたというこの500/1はギブソンのEB-1を意識して作られたという話も。

ヘフナーの500/1といえばポール・マッカートニーがビートル時代から

日本では矢沢永吉がキャロル時代から愛用していることで知られているが

個人的にはそんなに心惹かれるタイプのベースではなかった。いや、どちらかというとカッコ悪いとさえ思っていた。


自分が聴いていたパンク系のバンドは白や黒のプレべを腰よりもずっと低い位置で弾く姿のベーシストがあまりにもカッコよく目に映ったていたのだから仕方がない。

それがいつの頃からかプレべはプレべでも白や黒じゃなくサンバーストの方に好みが移り、それに合わせるように段々とヴァイオリン・ベースも気になりだす。
THE MODSのアコースティックライブでキーコがヴァイオリン・ベースを弾く姿を目にしたのが決定的となった。

上位機種は新品で40万円近くもして、中古でも手が出させるシロモノではない。

かといってインドネシアで製造されているエントリーモデルのIGNITION BASSは廉価ではあるがちょっと・・・

ということで、中国北京の工場で生産されているものの、ピックアップは本国ドイツ製が搭載されているというHCT500/1というミドルクラスのものに照準を定めることにして、オンラインショップ、オークションサイトを毎日眺める日が続いた。

それに加えて、以前OPBを購入した自宅から徒歩3分ほどの中古楽器屋にも顔を出しヴァイオリンベースを探していることを話すと「前はよく入荷してたんだけど最近は入ってこないねぇ。でもIGNITION BASSはあまりよくないからお勧めしないよ。それならグレコのいいのがあるからどう?」と店頭にあったものを手渡された。
これが色具合も好みの感じでしかもなかなか弾きやすい。「案外いいでしょ?現金なら34,800円から30,000円にしちゃうよ」と勧められたが、ペグがヘフナーのものとタイプが違ってるのがどうにも気になり決断ができない。

あのペグも含めての雰囲気がいいんだよな・・・と。

それからも何度か通うが、いつ行ってもヘフナー製は入荷しておらず、いつしかグレコのものも店頭から消えていた。

なんだかんだと探し始めて2年近く、オークションサイトでいくつかよさげなものを見つけたが、なんとなく手を出さずにいた先週末、先の中古楽器店にいつものように顔を出し、「やっぱり最近は入ってこないねー、グレコで調整中のはあるけど」との店主の言葉に「じゃ、近いうちにまた寄ります」と返し、斜め向かいのスーパーでビール
を買って帰る道すがら、自宅から4,5件隣にある別の中古楽器店の前を通った時にヴァイオリン・ベースが飾ってあるのが目に付いた。この店は前の週にも立ち寄ってHCT500/1を探してますなんて話したばかりの楽器店。

地下鉄駅から歩いて10分強のなんてことのない住宅街になぜに2軒も中古楽器店が・・・ということはさておき、目に付いたからには早速店内に入ってみると、なんとヘフナー製!!

しかも今まで目にしてきた価格の中でも格段に安い値段で、探してたバイディングが入った仕様だし、色具合も「これです、これです」ってくらいに好みの感じで、長い白髪を後ろで結んだ初老の店主に確認すると間違いなくHCT500/1。


「ホントにこの値段?」と確認すると「うちは安く売って喜んでもらってなんぼだからねぇ」と。
それでも一応は価格交渉するも「さすがにこの値段なんでこれ以上は・・・」ということで一旦家に戻ることに。

部屋を見渡し、4畳半ほどの狭い部屋にこれ以上楽器は増やせないってことで、下取り価格の確認もと、スクワイアのOPBを持って再び楽器店に行くと、「値下げできない分、下取り価格を上げとくよ。ボリュームも好みって言ってたティーカップのやつに換えてあげるよ」と。それでもスクワイアOPBを手放すか決断できずに、翌日まで仮押さえをしてもらうということで家で悩んでみることに。

家に戻って少しだけ考えてみたが、あんなに程度がよくてあの価格のモノはこれ以上探しても出てこないだろうと、すぐさまコンビニATMでお金を

引き出し再々度のお店訪問。これも家から徒歩1分のなせる業(笑)
「やっぱり買います」と告げると、1時間も経ってないのに「だろうと思って、ボリューム換えといたよ」と。なんていい店主だ・・・。

早速家に戻ってスタンドにかけ、弾くより前にその姿を眺めながらの一杯を(笑)

でもそんなことが何にも代えがたい幸せな時間でもあるのです。

さてさて、せっかくヘフナーを手に入れたのだから、近いうちにフラットワウンドの弦に張り替えてビートルズの曲でもコピーしてみようかな。