すでに亡くなっている両親の墓はここ札幌から250㎞ほど離れた故郷の函館、五稜郭タワーの真向いに建つ寺院にある。来週末は母の命日なので本来なら車でひとっ走り墓参りというところだが、3月末にコロナ感染拡大防止のために札幌市外との不要不急の往来は控えるよう要請が出ている。
どうしたもんかと思案していたら、ふと母親のことを歌ったロックナンバーってどんなのがあっただろうと頭をかすめた。いや、特に母親に思入れがあるわけでもなく、どちらかというと育った家庭に思入れはないのだが。

そんなわけで、母親を歌ったロックナンバーでまず思い浮かぶのはタイトルもそのままズバリ、Mother(母)。
1970年にリリースされたジョン・レノンのファーストソロアルバム「ジョンの魂」のオープニングナンバーでシングルカットもされたあまりにも有名な1曲。

アルバムに針を落とすと幾度かの鐘の音に続くジョンの「Mother,you had me(母さん、僕はあなたのものだったけど・・・)」との叫びに圧倒される。アルバムの解説によるとこれはプライマル療法の「トラウマを叫ぶ」という治療法が如実に出ているボーカルスタイルとのこと。

自分にはあまり興味がないところだが、ジョンの子供の頃の環境や母親への思いなんかはビートルズフリークにとってはとても重要な事柄なんだろうな・・・なんてことをつい考えてしまう。

この曲、タイトルはマザー(母)となっているが、2番では父親を、3番では子供たちについてと、しっかり家族そのものを歌っているのは最近知ったこと。


そして、同アルバムのラストを飾る曲がMy Mummy’s Dead(母の死)。小さい頃に起きた母との別れ。その後の再会後に突然訪れた母の事故死。「母親を2度失った」と語っていたジョンの言葉を体現するかの曲をオープニングとラストに配したアルバム、邦題の「ジョンの魂」もこの辺りを相当意識したのだろうか。

日本のロックバンドARBにもMother(母)と同じように母、父、子を1曲の中に詰め込んだモノクロ・シティ(MAN STAND UP,WOMAN YOU TOO)という曲がある。


ジョンがそれぞれとの決別を歌ったのとは違い、家族のために懸命に働くワーキング・クラスの父と母の姿、その思いとは逆にどんどん離れていく子の姿が歌われる。こちらの曲の方が響いてくるのは、懸命に生きる人たちの光景が浮かんでくるところに心惹かれるからだろう。


そういえばこの曲が収録されている「W」というアルバム、二人のバラッドという曲では「俺とお前はジョンとヨーコさ」と歌い、モノクロ・シティでは「ワーキング・クラス・ヒロインは…」という歌詞があったり(ジョンの魂にはワーキング・クラス・ヒーローって曲がある)、Wの前のアルバム「指を鳴らせ!」にはWell Well Wellというジョンの魂に収められた曲と同タイトルの曲まである。石橋凌ってジョンの魂に大きく影響されていたのか・・・なんてことに今頃になって気付くとは何とも恥ずかしいところ。



最後にオマケじゃないけど、リザードがARBのキースをメンバーに迎え22年ぶりにリリースした「LIZARDⅣ/Rock’n Roll Undead」にはモモヨの2人の子の誕生を歌ったBirthという曲が収録されている。

「女の子ですよ」とナースは言った
「とてもきれいな とてもかわいいお嬢さんですよ」

「男の子ですよ」とナースは言った
「とても元気な とても凛々しい男の子ですよ」

あまりにも直接的な歌詞の意外性に驚いたが、これが穏やかな実にいい曲。
パンクロッカーだって子を持つ親。それを歌うのも真実でありロック。



冒頭に記したように育った家庭に思いれはないし、高校の頃は親と出かけることは皆無でとにかく早く自立したかった。家を出てから実家に帰ってホッと落ち着いた気分になることもなかったし、3つ離れた兄とも別に仲が悪いわけではないが今ではほぼ連絡を取り合うことはない。
そんな自分であるにも関わらず、自分の子たちが同じだったら・・・と思うと冷や汗が出そうになる、モモヨがBirthで歌った親の思いを少しは持ち合わせた勝手な男である。