岡林信康といえば1960年代後半、山谷の労働者を歌った「山谷ブルース」や、「友よ」、「チューリップのアップリケ」、「がいこつの歌」など問題作を続々発表し、反戦フォークを支持する若者からフォークの神様などと呼ばれ絶大な人気があったことは有名。
アルバムでいえば「わたしを断罪せよ」、「見るまえに跳べ」、「俺らいちぬけた」あたりで、岡林の1枚といえばこれらのアルバムを挙げる人が多いのではないだろうか。

しかし70年代に入ると「金色のライオン」などロック色の濃いアルバムを何枚か発表し、ファンからは「岡林はロックに寝返った」などと多くの批判を受けたらしい。この辺はあのボブ・ディランに似たような流れを感じてしまうのでは?

1980年代に入るとキングクリムゾンのロバート・フリップから「我々の真似ではない日本人のロックを聴かせろ」と言われたことに触発され、独自の「エンヤトット」路線を開拓したことでも知られている。(それにしても、あのキングクリムゾンと岡林がどう繋がってたんだろう?)


しかし僕が岡林を知ったのは「フォークの岡林」でもなく、「ロックの岡林」でもなく、ましてや「エンヤトットの岡林」でもない、1979年にリリースされた「街はステキなカーニバル」というアルバムになる。

所謂ニューミュージック路線に舵を切った前年作の「セレナーデ」の流れを組んだ、岡林の歴史の中では随分と中途半端な時期のもので、「Good-bye My Darling」というミドルテンポの心地よいポップソングから始まるこのアルバムは、ロックぽいものから、フォーク、シティポップな感じのものまでかなりバラエティに富んだ曲が並ぶが、歌われる声は岡林のそれである。

バックを務めるメンバーはギターには芳野藤丸、ベースは後藤次利、小原礼という豪華陣が名を連ねているせいか、いかにもなあの当時のサウンドが心地よい。キーボードに羽田健太郎の名があるのを後から知りちょっとびっくりしたが。


A面ラストの「君に捧げるラブ・ソング」は心に染みる必聴ナンバーだ。

BCリッチのギターを持つ岡林が映る少しダークな感じがするアルバムジャケットもアルバムタイトルとミスマッチだけどどこか味がある。

僕はこのアルバム以外の岡林には手を出していないというか手が出せないでいる。このアルバム以外の岡林を知ってしまうのが怖いのか自分でもよくわからないが、なぜかそうさせてしまう、自分にとっては稀有なアルバムだ。


岡林から遅れること数年、「赤色エレジー」のヒットで一躍有名になったあがた森魚も、友部正人、よしだたくろう、泉谷しげるとニューフォークの4人の旗手と呼ばれたフォーク歌手。そんな彼の音に初めて触れたのもそのフォークソングではなく、1981年にA児と名乗って突然テクノポップ路線を展開した「ヴァージンVS」というバンドでの「ロンリー・ローラー」という曲で。いや、それ以前に赤色エレジーあたりは聞いていたかも知れないがその記憶がないだけか。

ロンリー・ローラーはテレビドラマ「翔んだライバル」の主題歌で、どこか切なさを感じさせるメロディーがテクノポップのアレンジで歌われるこの曲を聞くのが、ドラマを見るのと合わせてかなり楽しみだった。
僕の中でのあがた森魚(A児)はこの1曲のみ。

でもすっかり雰囲気を変えたあがたの姿とともにあまりにも鮮烈な1曲なのだ。

話は逸れるが、あがた森魚は北海道生まれで函館ラ・サール高校という地元屈指の進学校に通っていたこともよく紹介される。この高校、僕の住んでいた家から徒歩で10分ほどの場所にあるのだが、僕なんか家から近いだけで、ただの一度も受験対象として考えたこともない学校だ。



さて、今回紹介した2人のアーティストの作品のように、どうも僕には本流とは外れたものに流れてしまう気質があるようだ。

日本ハードロック界の重鎮BOW-WOWなら、ポップ路線に走った「GLORIOUS ROAD」


KISSアーミーには不評を買ったディスコ路線の「地獄からの脱出」も大好きな一枚。


イーグルスなら大ヒットしたホテルカリフォルニ
アの次作として大きな期待を持たれながら、やはり前作を超えることはできなかったと言われた「ロング・ラン」がベスト。


JAPANも一躍評価を高めた中期から後期の昨品ではなく、アイドル扱いされていた頃の「果てしなき反抗」がなんと言っても一押しだし。


キンクスは低迷してた70年代後半の「スリープウォーカー」が最初の一枚。


BOOWYに至っては暴威と呼ばれていた頃の雰囲気が色濃く残る初期2枚がお薦めだ。


と、あまり世間では評価の高くないものが好みだったりするのだから、本流というか王道ものをことごとく外しまくっているのは単なる天邪鬼ということなのだろうか。

そういえばギターもレスポールやストラトじゃなくレスポールJr、ベースもプレべはプレべでもテレキャスタイプのOPBが好みだしな。

もしかしたら生き方そのものも本流を外れていたりして・・・なんてことになってやしないか⁈

いやいや、そもそも本流ってなんなんだ??