ロックを聴いて過ごす時間はもちろん好きなのだが、それと同じくらいに音楽雑誌を読むひと時がことのほか大好きだ。

今では定期購読しているのはパンクロック雑誌の「BOLLOCKS」のみだが、それでも書店で気になる雑誌を見かけるとつい手を伸ばしレジに進んでしまう性分なのでCD、DVDとともに増える一方。

一番最初に手にしたロック雑誌は「ロック・ショウ」。シンコーミュージックがミュージック・ライフの姉妹誌として1976年の年末に創刊した雑誌だ。

創刊当時まだ小六だった僕はベイ・シティ・ローラーズが表紙のこの雑誌に目が留まりすぐに購入したのだろう。
当初は隔月の発売だったが、1年もしないうちに月刊化されてたはず。

"グラビアと読みもののロック・マガジン"というのが謳い文句だけあって、とにかくグラビア(いまどきグラビアって言葉使われてるのか?)の掲載量が多かった。その中でもベイ・シティ・ローラーズの掲載量が群を抜いていて、ベイ・シティ・ローラーズの宣伝誌なんて言われ方もしていたようだが、ベイ・シティ・ローラーズに夢中だった僕にはうってつけの雑誌だった。
他にもキッスやクイーン、エアロスミス、ランナウェイズ等、当時人気の高ったバンドの情報が満載、チャー、バウワウ、ARBなんかの日本のロックバンドもよく登場していた。

インタビューを主体に想像の域であろう情報を散りばめる文章の構成は、今読むととても信じられるものではないのだが、ロックをかじり始めた少年には丁度いい塩梅の内容だったのか、当時は「ふむふむそうか、そういうことなのか」などと真剣にかつ興奮しきって毎号読んでいたものだ。

ベイ・シティ・ローラーズの臨時増刊号をよく発売してくれていたのも自分にとってこの雑誌を支持する大きなポイントだったかも。
当然ながらベイ・シティ・ローラーズから離れていくとともにこの雑誌とも離れていくことに。


普通だと次はミュージック・ライフ辺りに嗜好が移るところなのだが、”ロックジェネレーションのための”と謳われるくらいはハイティーン向けになってるとは言え、ロック・ショウとそれほど変わらない掲載バンドや記事内容のミュージック・ライフには今一つピンとくるものがなく、毎号買うほど読み漁ることはなかった。

ミュージック・ライフといえば、中一か中二の時にランナウェイズが表紙の号を買い、学校帰りに近所の友人にそれを見せたら、5人の悩殺スタイルにやられた友人は奪うように僕からこの雑誌を取り上げ「しばらく借りる」と言ってそのまま持ち帰ってしまい、本当にしばらく僕の手元に帰ってこなかったことがあったのを思い出した。今となってはさほど何も感じないが、当時1970年代後半に下着スタイルの女性ロックバンドの登場はかなり衝撃で、思春期の少年たちには友人の雑誌を奪ってしまうほどにあまりにも刺激が強すぎだったのだ。
ミュージック・ライフと並んで音楽専科てのものあったがミュージック・ライフ同様さほど興味が湧かなかった理由は、今となってはまったく記憶なし。

ベイ・シティ・ローラーズを卒業し、キッス、フォリナー、トト、スーパー・トランプ、ツェッペリン辺りを聞くようになった頃に読みだしたのが"ロッキンf(ロクf)“。多分、中三の頃にストーンズを脱退したミック・テイラーのソロアルバム記事に惹かれて買ってみたのが最初だったと思う。
ストーンズなんて聴いたこともなかったし、ミック・テイラーの存在も知らなかったが、その名前の響きと掲載写真がカッコよく感じたような。


ロクfは、ツェッペリン、ストーンズ、クラプトン等の王道バンドはもちろんだが、プログレバンド、クラッシュ、ポリス、トム・ロビンソン・バンド、B-52’Sなどのパンク、ニューウェイブ系のバンドに加え、日本のあらゆるジャンルのバンド、楽器、エフェクターの特集までもと、ごった煮感満載だったのがロック中毒初心者の自分にピタッとはまったんだと思う。

アイドルロック寄りだった自分が徐々にパンクロックの方に傾いていったのはこの雑誌の影響が大きかったのは間違いのないところなので、今に至るロック人生はこの雑誌のお陰というのもあながち間違いではないかも。
ARB、ルースターズ、モッズ等のめんたいロックも、リザードを始めとする東京ロッカーズ系のアンダーグランドな日本のバンドも、シルバースターズやノヴェラなんかのハードロック系のバンドもこの雑誌を通じて出会ったはず。


パンクロックへ傾倒していく決定的な出会いとなったクラッシュのロンドンコーリングもこの雑誌のアルバムレビューがきっかけで、このアルバムレビューのライターには後年リザードのモモヨも参加するところとなり、僕にとっては様々なアルバムに出会うための貴重な参考書的意味合いを持つまでになったのだったっけ。

だいたいジェフベックやクラプトンと並んでARBのスコアが載ってる雑誌なんていうのは、このロクfくらいのものじゃないかなぁ。
加えてこの頃の音楽雑誌には楽器メーカーの広告が満載でギターが欲しくてたまらないガキにとってカタログ的な意味合いも持ち合わせていたんですよね。

その後、パンクロック雑誌の”DOLL”に出会うまでこのロクfこそが自分にとってのロック出会い系アイコンだったのは間違いない。

DOLLについては、過去ブログで詳しく触れているので興味のある方はそちらを是非。



リザードの前身となる紅蜥蜴の代表曲にロック・クリティックという評論家を皮肉ったナンバーがある。
「俺をガキだと思って 甘く見るんじゃないぜ いつかお前を叩いてやるぜ プログレだって知ってるぜ ロック雑誌も読んでるぜ ロックの事ならなんでも知ってる 俺の憧れロック・クリティック いつかなるんだ ロック・クリティック ゴッドファザー ロック・クリティック」

と歌われ、ライブではアホバカマヌケが繰り返されるだけってこともあったらしい。
僕もロック雑誌好きが高じて頭でっかちな評論家みたいにならないよう、批判的な部分は極力排除して自分の気に入ったロックバンドを紹介していきたいものだ。

なんてことはいうまでもなく、自分には評論家ほどの知識も語彙の豊富さもないのでとんだ杞憂ではあるのだが・・・。  続く。