ブルーハーツを起点とするとヒロトとマーシーの活動は35年を迎える。
ということを書店で見かけたミュージックマガジンで知った。
ヒロトとマーシーの特集を読みたかったのはもちろんなのだが、本当のところは本屋でペラペラめくったときに目についた、UKロックバンドのトラヴィスと大御所ブルース・スプリングスティーンそれぞれの新譜記事と広告の写真に妙に心惹かれたという方が大きかったのかも。
ヒロトとマーシーの方は「甲本ヒロトと真島昌利の35年」のタイトルでの約30ページにわたる特集。
ミュージシャン、俳優の方々が選ぶ私の3曲は鉄板の3曲あり、ここを攻めるかの3曲ありと楽しめたのだが、俳優甲本雅裕が選んだ3曲はどれもブルーハーツの未発表曲というのはヒロトの実弟だからこその特権としてありの選曲か。
また、3バンドがリリースした全アルバムのレビューもあり、ちょっと敬遠していたハイロウズ、クロマニヨンズも機会があれば聞いてみるのもいいかもなと思った次第。
書店で雑誌のページをめくって最初に目に留まったトラヴィスの新作記事ページの1枚の写真。
購入後早速記事の方を読むとボーカルのフラン・ヒーリーはここ最近は父親業に専念していたらしく、その暮らしぶりが一時のジョー・ストラマーと重なった。
90年代以降の洋楽はほとんど聞かない自分であったが、すぐさま新作「10Songs」を購入。
タイトル通りに収められた10曲はどれも激しさはなく、丁寧に仕上げられた謙虚さが伝わってくるようなサウンド。だがそれは間違いなく極上、かつ良質なロックミュージック。アメリカのバンドとはまた違った、一聴してUKバンドとわかる繊細さも兼ね備えていた。
フランの語るところによると、このアルバムでは「自分は、今(人生の)どこにいるんだ?僕は幸せ?これが本当にやりたいこと?」ということに触れているらしい。アルバムを聞きながら僕も「今、幸せか」、「自分の人生を生きているか」と考えてしまうのは、そんなフランの語りはもちろんだが、10songsが静かに流れていく穏やかな時間の所為でもあるのだろう。
直観、面構えで選んだ1枚に間違いはなかったと満足しながら、昨日になってYouTubeでトラヴィスのPVを観てみた。大きな勘違いだった。
ダンディズムの感じるいい面構えをした男はボーカルのフランだと信じきっていたら、ベーシストのダギー・ペインじゃないか・・・。
オイラの人生、いつもこんな感じだ。
それでもイカシタベーシストのいるバンドにハズレはない。と改めて言い聞かす自分ではあるのだが。
そして、雑誌裏表紙の前ページ全面には全米ロック界のボス”ブルース・スプリングスティーン”の新作「LETTER TO YOU」の広告。それにこの新譜を紹介する記事も。
ブルース・スプリングスティーンのような誰もが認める「これこそロック」的なものはあまり聞かないし、ブルース・スプリングスティーンのアルバムもほんの数枚しか聞いたことがない。
ただ、13年前にもCDショップで目にしたジャケットに写された顔に惹かれ、それまで一度も手にしたことがなかったボスのアルバムをその場で買った経験があった。
その時買ったのがその年にリリースされたアルバム"MAGIC"。
「聞きたいのは激しいリズム、欲しいのは千のギター、欲しいのは轟くドラム、欲しいのは熱狂的な百万の声」歌詞に呼応するかのような激しいロック。この曲のためだけにアルバムを買ったとしてもまったく損はない。
いや、他にも素晴らしい曲が揃っていますよ、もちろん。
このアルバムが制作されていたときアメリカはイラク戦争のさなか。それに対するボスの憂い、久しぶりに一緒にアルバム制作をしたEストリートバンドへの想い、そんなのものがアルバムはもちろん、ジャケットの写真にも表れたのだろう。
ジャケットを見ただけでアルバム購入を決めたのは正解だった。その後のアルバムは買ってもいないし、聞いてもいないのだが・・・。
あれから13年、またしてもボスの姿に心惹かれた2020年。イラク戦争はとうに終焉を迎えたが、新型コロナウィルスという新たな危機に、今回も久しぶりの共演のEストリートバンドとともに時代に立ち向かう、という様々な想いがまたしてもボスの顔に表れたというのか。
APPLE MUSICで少し聞いただけだが、MAGICとはうって変わってオープニングの「ワン・ミニット・ユア・ヒア」はアコースティックギターの弾き語りから始まる静かなナンバー。
配信で聴き倒すことはやめ、しっかり購入してボスからの手紙を味わうことにしよう。
配信で聴き倒すことはやめ、しっかり購入してボスからの手紙を味わうことにしよう。
トラヴィスの新作には"A GHOST"、ブルース・スプリングスティーンの新作には"GHOSTS"というナンバーがそれぞれ収録されている。
未来の自分(ゴースト)から、今は亡き仲間を偲んで、という違いがあるものの気になった2作共通でゴーストのナンバーがあるのもただの偶然なのか、お前もそろそろゴーストになる年齢に近づいてきたことに気付けよ、ということなのか。
アルバムMAGICリリース時のブルース・スプリングスティーンの年齢が58。あと2年で僕もその歳になる。その時の自分はあの時のブルース・スプリングスティーンのように真摯な生き方が顔に表れているのだろうか。
ゴーストになってしまった時、精一杯生きた人生だったと納得できているだろうか。
50歳をとうに過ぎてしまったが、そう思える生き方をしなければと深く考えさせられた、素晴らしい男の面構えとの出会いであった。