お酒を呑むようになったのは高校を卒業して就職してすぐ。昔は20未満の飲酒について今ほどうるさく言われるわけでもなく、職場の懇親会で飲んでいようと誰からもお咎めはなし、というか上司や先輩たちに強制的に飲まされたというのが正しいところだ。
ただ、若い頃はそんなにお酒に強くもなく、飲み会なんかはどちらかというと避けたいほうだった。

当然、部屋でロックを聴きながら酒を飲むなんてことはなかった。


煙草はどうだったかというと、吸い始めたのは高校入学後の15,6の頃。なぜか家では自由に吸えたので学校で隠れて吸うなんてことはほとんどなかった。

就職後の二十歳を迎えるまでの1年半弱だってお酒同様喫煙を注意されることは一切なかった。そういう意味ではいい時代ではあったのだ。

なので部屋でロックを聴くときは自然に煙草を吸いながらということになる。そしてその傍らにはジッポー。そんな毎日だった。

ロックと酒が結びつくようになったのは25,6の頃、当時住んでいた苫小牧の飲み屋街の端にあったレゲェ&ブルースバーに通うようになってから。

なぜその店に通うようになったのか。

この店のマスター●●さんがブルースっぽいロックバンドのボーカル&ギタリストだったのだが、職場から歩いて2分のライブハウスでたまたま彼のバンドのライブを見たときにお店を知ったのか、お店を偶然見つけてたまたま入ってみたのか、今となっては全く記憶がない。どちらにしても、お店にも彼のバンドのライブにもちょくちょく顔を出したのだけは確かだ。


お店ではカウンターに腰掛けてまずはバドワイザーを頼み「●●さんも一杯どう?」といくのが定番だった。

店内に流れるのは当然ながらレゲエとブルースが中心で、どちらかというとパンク系統のバンドばかり聴いていた自分はこの店に行ってレゲエとブルースを聴くことと「●●さんも一杯どう?」とやることで少しだけ大人の気分を味わっていたのかもしれない。


●●さんにはたくさんのレゲエとブルースミュージックを教えてもらったが、僕が一番はまったのが●●さんの一推しだったレゲエシンガー、ジミー・クリフだった。


当時はにわかに環境問題がクローズアップされだした時で自分も大いに関心をもっていたのだが、ジミー・クリフがその頃リリースしたアルバム「thinking about the earth」がその環境問題なんかを題材にしていたというのが大きかったのだと思う。

それからはジミーのアルバムを片っ端から集めて、昨日はあのアルバを買って聴いたんだと店に行って報告するのが楽しみになっていた。


で、レゲエといえばラム酒だということを教えてもらい、バドワイザーの後にマイヤーズ・ラムのロックを頼むのも定番となった。味はそんなに好みではなかったし、まだまだアルコールに強くはなかったのでマイヤーズ・ラムのロックを飲むのはちょっとした苦行?でもあったのだが、なんといっても●●さんに認められたい一心でボトルも入れて帰ってから吐くのを覚悟で意地でもロックを飲み続けたバカな自分であった。


それだけ頑張って通った店だったが長女が生まれて子育て中心の生活となってからすっかり飲みに行くこともなくなってしまった。

それから2年くらいたったある日、長女の幼稚園の運動会の父兄リレーで長髪、ベルボトム、ブーツ姿で走る●●さんが目に入ってビックリ。変わらぬ姿にちょっと泣きそうになった記憶がある。

あんなにいろいろ教えてもらったのにお店に行かなくなってゴメンナサイと心の中のずっと奥の方で思いながら・・・。

あれから30年近く経った今はどうだろう。

酒はやめても煙草だけはやめられないと豪語していたバカな若者は、四十の声を聴くころに肺炎を患い入院してあっさり煙草を断ち、以降は酒好きの道をまっしぐらというところだ。


太陽の下でロックを聴くならコロナビールを瓶のままで、モッズを聴くならジャックダニエルかフォアローゼスのバーボンのロック、浪花節的な怒髪天を聴くなら薩摩焼酎、ライブDVDを観ながら呑むならハイボールと、シチュエーションごとにそれぞれに合う酒を、というのを言い訳にそれぞれ用のボトルをしっかり部屋にキープ。

最近は友人のインスタで知ったテンガロンハットというバーボンをあちこち探して昨日なんとか購入、これを呑むにはウエスタンなロックバンドのCASABLANCAかCHIE & THE WOLF BAITSを聴きながらだななんてことを考えてるくらいだ。でも、50’S,オールディーズ辺りを聴くときだけはなぜかメロンソーダが飲みたくなるんだよなぁ。


今じゃライブに行ってもワンドリンク制で強制的にビールが飲めるし、しばらくは酒とロックの生活を愉しむ日々が続きそうだという些末なことがことのほか幸せに感じる自分なのである。


さてさて、今夜の宅飲みは20年ぶりくらいにバドワイザーから始めてみようかな・・・。