Punks-a-go-goと名乗ってはいるものの、正直なところSEX PISTOLSを筆頭とした70’ S PUNKスタイルド直球のパンクバンドはそんなに熱心に聞いてきたわけではない。なのに、なぜかそのど真ん中を代表するジャパニーズパンクバンド、スタークラブは一時期ファンクラブに入会するほど熱心に聞いていた。
当時、さまざまな雑誌で名古屋で人気のパンクバンドとして紹介されていたのでそれなりに早い頃から知ってはいたし、リザードのモモヨが雑誌のレコードレビューで「そのへんの腰の砕けたロックを聴くくらいならスタークラブを聴くね」と評していたのでかなり気にはなっていた。
そこにきて、当時発売されるレコードはかなり熱心に購入していたレーベルのシティ・ロッカーからアルバムがリリースされるとくれば購入しなわけにはいかないとなったんだと思う。多分・・・。
ということで今回紹介するスタークラブの「HOT & COOL」は1983年3月、そのシティロッカーからバンド初のフルアルバム(しかもライブアルバム!)として発売された。
ジャケットに写る4人はいかにもパンクロッカー!!的なスタイルなのではあるが、タイトルロゴと写真のカラーからどこか50’Sの匂いも感じさせられるポップなジャケットワークはかなり好感が持てたのである。
「HELLO HELLO HERE’S THE STAR CLUB」という低く抑えたトーンの声でアルバムA面(ライブ)が始まる時点ですでにクールなのに、パンクバンドにありがちな飛びっき切りのアッパーナンバーでオープニングを飾るのではなく、重く唸るようなスローテンポのナンバー「UH(KATAMARI)」で幕が切られ、その後に続く「PASS BY YOU」までもがミドルテンポなナンバーなのだから意表を突かれまくりだ。
3曲目にきてようやくアッパーな「SHIT」。ここでヒカゲの曲紹介が「シット!」ではなく「シッツァ!」と吐き捨てられ、この時点ですでにもう文句なしなのだ。歌われる内容も「嫌われ嫌われとことん嫌われ 清々するぜ、まったくよ」、「Ah アホどもめ!」など吹っ切れ具合が潔すぎ。この「SHIT」からの「HELLO NEW PUNKS」、「I LOVE YOU,JAPAN」、「MIDDLE CLASS FREAKS」、「ALL YOU NEED IS DRUG」までの5曲は、歌詞、サウンドともにどこをどう切っても超ド級のパンクロックナンバーと断言でき、今聴いてもすがすがしすぎるほどの疾走感だ。
B面に並ぶナンバーは「LOVE SONG WA UTAENAI」、「GOD SAVE THE PUNK ROCK」、「GOODBYE JAPANESE ROCKER」、「LET IT ROCK」等、腑抜けたロックへのアンチテーゼとパンクロックに対する熱い思いが交錯し、こちらも圧巻である。
このアルバムは繰り返し繰り返し聞いたのだが、それと同じくらい歌詞カードにコラージュされたスナップを穴が開くくらいに何度も何度も飽きもせずに眺めた記憶がある。きっと、そのスナップから伝わるバンドのスタイルや空気感みたいなものの方が滅法気に入ったのだと思うのだが、そんなことが影響して、僕には珍しくド直球なアルバムの方もよく聴いたのだと思うし、あまり好んでライブアルバムを聴く方ではないのだが、アルバムタイトルどおりホットでクールな空気が伝わってきて、数あるライブアルバムの中でもかなりお勧めの内容だ。まぁ、アルバムを入手した時点でスタークラブの曲はひとつも知らなかったので、普通のスタジオアルバムと同じように聴けたという側面も否定できないのではあるが。
この後バンドはメジャーデビューを果たすこととなり、僕も徳間ジャパンからリリースされたそのデビューアルバム「HELLO NEW PUNKS」を購入した。が、続くセカンドアルバムからしばらくはアルバムを購入することもレンタルすることもなかった。きっと、「HOT & COOL」で感じることができた疾走感、背中合わせの熱さとクールさがこのメジャーデビュー盤からその時の僕には伝わってこなかったんだと思う。(あくまでも僕にとってはいうことで、アルバム自体はかなりな好セールスを記録してます)
再び聴き始めるまでには空前のバンドブームでスタークラブ近辺も騒々しくなっていく1987年にリリースされたカバーアルバム「GOS SAVE THE PUNK ROCK」まで待つことになる。
この頃のベーシストアキラが和製シド・ビシャスと言っていいほどだったし、雑誌で見かけるヒカゲも以前にも増して僕にはクールでカッコよく映り、またしても楽曲ではなくそのスタイル先行でファンクラブに入会してしまうわ、ヒカゲの腕にはめられたダイバーウオッチに憧れ自分もそれに似たG-SHOCKを購入するバカさ加減を露呈した自分であるが、今に至るまで30年近く時計だけはG-SHOCKオンリーを貫いてはいるのだが。
以降、1992年リリースの「監獄からの伝言」あたりまでは熱心に聞いていたのだが、再びこのバンドから離れていったのは、結局音楽スタイルが自分の嗜好とは少しづつ離れいったからなのか、詳細は自分でもよくわかっていないが、久々に購入した結成35周年を記念したライブを収めたDVD「BAD MEN」や、一昨年、新宿ロフトで行われたストラマーズ岩田追悼ライブのときに目の当たりにしたヒカゲ(スタークラブ)の歌う姿は、当時ほどの激しさはなかったものの相変わらずホットでクールだったと証言しよう。そう、僕にとってスタークラブ=ヒカゲは今でもやはりHOT & COOLな存在なのだ。
さて、70’Sスタイルのパンクロックを熱心に聞く方ではない僕がスタークラブ以上に超おススメのリアルハードなパンクアルバムが、いつもこのブログの最後に紹介しているバンド「ベインビール」のボーカルまふゆ氏が以前在籍していたバンド「THETRAVIS」の「JUSTICE AND INSAINE」だ。いつか今より少しでもブログを読んでくれる方が増えて、もっとうまくアルバムやバンドのことを伝えることができるようになった時に紹介しようと考えている僕の一押しのアルバムなのだが・・・。
先が見えない時代だからこそ、四の五の言わずに紹介してしまうのもいいのかな・・・。
もう少し悩もう。