30歳を過ぎた一時期、ロックから少し距離を置き手元にあったレコードのほとんどを手放した時期があったことは以前のブログで少し触れたが、その手放したレコードの中にザ・バッヂのEP盤「A列車を飛び降りろ」と12インチシングル「LONDON PARADICE」の2枚もあった。

アルバムではなくシングルを2枚だけしか持っていなかったことからもわかるとおり、そんなに熱心なファンではなかったわけだが、ここのところ、また聞いてみたいという思いがふつふつと湧きだしヤフオクなどで探すことにしたところ、意外(?)にも高額で取引されており、中古モノは基本的に定価以上では購入しないことにしている自分は早々にレコード購入を諦めたのだが、その2枚の曲が全て収録されているCDがあることを知り、そちらを入手することにした。

僕が持っていた2枚は合わせても6曲だけなのだが、このCD1枚には16曲も収められているのだから断然お得のようだったしね。まぁ正直なところ、レコードそのものを手に入れたいというコレクター的感情もあるにはあるのだが・・・。


ザ・バッヂは中村昭二(Vo,G)、田中信昭(Vo,B)、川崎哲(Vo,D)の3人組のロックバンドで、1979年に福岡博多で結成された。結成時は「ハートブレイクバンド」という名で、その後「ザ・レイン」に改名するも、デビューの際、すでに同名のバンドが活躍していたことから「ザ・バッヂ」と再度改名したらしい。また、このバンド名を決める席にフジロックフェスティバルの主催として有名な日高正博氏が同席しており、その時に他に候補となったバンド名「スマッシュ」を社名にして翌年会社を設立したという話もあるとライナーに書かれていて興味深い。

バンドは1982年、テイチクレコードよりシングル「ふたりのフォトグラフ」でデビュー(タイトルがビートルズの邦題ぽくってナイス)、翌年にアルバムも発売するが、事務所移籍とともにレコード会社もキングレコードへ。

で、今回紹介するのがこのキング時代にリリースした5枚のレコード全曲をコンプリートたCD「コンプリート・オブ・キング・イヤーズ」。

 

1曲目は僕が持っていたEPA面の「A列車を飛び降りろ」。この曲でこのバンドを知った人が多いというのもうなずけるベースの跳ね具合がなんとも気持ちがよい曲。丁度、同じくベースの跳ね具合が素晴らしいジャムの「悪意という名の街」のベースをコピーしている最中だったので、思わずこちらも並行してコピーすることにした。

3曲目はまさかのニールセダカ「オー!キャロル」のカバー。CMタイアップ曲らしいが、このバージョンもなかなかだ。

5曲目も僕が持っていた「LONDON PARADICE」に収録されていた「MESSAGE FROM U.K.」。出だしが「メッセージ・フロム・U.K.~」と唄われ歌詞カードも1番から3番までそう書かれているのだが、3番だけよく聴くと「メッセージ・フロム・レイ・デイヴィス」と唄われていて思わずニヤッとさせられる。続く6曲目のタイトルは「LONDON PARADICE」だし、このバンドモロU.K.ロック好きだということが伝わってくる。うがった見方をすれば1曲目の「A列車を飛び降りろ」も、アメリカジャズのスタンダードナンバーでニューヨーク市地下鉄の名称をタイトルにした「A列車で行こう」を引き合いにA列車をアメリカのロックに例えて「アメリカのダサいロックなんかからオサラバしようぜ」なんてことを思って書かれたのかななんて考えてしまうが、こんなくだらない想像をしながら曲を聴くのもロックの愉しみ方のひとつとして許されるだろうか。

9曲目の「IN THE STREET」では「あの娘はタイプ・ライター あいつはまだウェイター 昼間は死んでるけど・・・」と唄われるのだが、80年代初めのパンク、ビート系のバンドにありがちな歌詞でちょっと笑えて懐かしくなったなぁ。


ここまでの内容でわかるようにこのバンド、UKの匂いぷんぷんで、ビートルズ、キンクス、フーあたりの影響は大きいようだが、なんといってもジャム。YouTubeで見てみたらわかるが、細身のスーツにギターもベースもリッケンバッカー、どう見てもそのスタイルは和製ジャム!!ベースなんかブルース・フォクストンまんまだし。

ポール・ウェラーからは「今まで見た日本のバンドで一番よかった」と言われ、ジャムのマネージャーからは「イギリスでデビューしろ」とまで言われたらことからもそのスタイルがわかるってもんでしょ??

UKロック、パンク、マージービートがうまい具合にミックスされ、これ系では珍しいくらいにコーラスワークも素晴らしいバンドだったことが今回よくわかったのだが、なぜ、当時2枚のシングルを買っただけでその後聞き続けなかっのか、今となっては全くもって謎である。

 

このCDのライナーで知ったのだが、このバンドのリーダーでベーシストの田中信昭氏は元ARBの田中一郎が在籍していた「りんどん」のメンバーとしてデビューしていた。自分の好きなバンドはいろいろ繋がっているんだなと感じたことに加えて、これまで80年代の日本のロックにはそれなりに通じていると思いあがっていたのが全くもって恥ずかしくなるくらい、まだまだ知らないことや素晴らしいバンドがあるのだなと思い知らされた次第だ。

そういえばなぜ急にバッヂのレコードを買おうと思ったのかと考えていたのだが、昨年末、モッズコートを着たメンバー4人がベスパに跨っているジャケットに妙に惹かれ、CDすら持っていないコレクターズの東京武道館ライブのDVDを思わず買ってしまったあたりから、どうもモッズ系(バンドのモッズではない、念のため)が気になって仕方なくなったようなのだ。映画「さらば青春の光」も改めて見直してたし、通勤用にモッズコートも買ってしまったし・・・。

また、今回CDとともに送られてきたチラシでコレクターズの今のベースの方がシャムロックのメンバーだったってことも初めて知り、これじゃあ改めてシャムロックのアルバムも聞いてみなきゃなぁ・・・と、まだまだ日本ロックを知る旅は続きそうなのである。


 

今回、「A列車を飛び降りろ」と「LONDON PARADICE」のジャケ写真を久々に目にしたら、急にあの頃の住まいであった独身寮の4畳半しかないのにベッド、VHSのビデオデッキを組み込んだコンポのステレオ、テレキャスターにローランドのアンプと次から次になんでもぶっこんでいた部屋の懐かしすぎる光景が頭の中を駆け巡った。あの頃は配信やCDなんかなく、もちろんネットもなく、レコード一枚に出会うのにも、カセットやビデオのダビングひとつするのにもえらく時間と手間がかかってたけど、その分手に入れたアイテムひとつひとつのへの愛着は半端なかったなー、なんて感傷的になったのである。


それにしても、細身の3つボタンスーツにリッケンバッカータイプのベースが欲しくなってきたぞ…。