映画は西部劇以外熱心に観る方ではないのだが、いまだに上映されるたびに必ず映画館に向かう、もしくはDVD,Blue-rayを手に入れるのがジム・ジヤームッシュの作品だ。
初めて彼のことを知ったのは多分宝島(小さいサイズの頃)という雑誌の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の上映に関する記事だったはずだ。
アメ車とともに佇む3人の若者が映されたモノクロ写真がやけにかっこよかったせいか、ほとんど映画なんて観ることがなかった自分なのに妙に心惹かれた。この写真、あまりにも好きすぎてポストカードになったものをいまだに部屋に飾っいるという…。
その後、様々な雑誌でこの映画が絶賛されているのを目にするとともに、それらに写っている監督であるジャームッシュがどこからどう見てもパンクロッカーにしか見えず、この映画への興味が更に増していくことになる。
ストレンジャー・ザン・パラダイス以降の作品にはジャームッシュと親交のあるジョー・ストラマー、イギー・ポップなど数多くのロッカー出演しているのも彼自身がかなりのロックフリークである証しだし、ストレンジャー・ザン・パラダイスの成功により寄せられた数多くの次作オファーに対して「自分がコントロールできない映画は作らない」などと一蹴したらしいのだから、その辺のパンクロッカー以上にパンクな人である。
さて、この作品、絶賛されていたと言っても一般的にはそれほどメジャーではなかった(今でもインディーズ作品などと呼ばれたりしてるし)ので北海道では札幌だけ、それも所謂ミニシアターだけで上映されていたはず。
当時倶知安町という札幌から100㎞ほど離れた小さな田舎町に住んでいた僕は、愛車のランタボで札幌までドライブし、すすきのと中島公園の間、鴨々川沿いにあったそのミニシアター「ジャブ70ホール」へ、札幌に住む友人と一緒に観に行ったはずだが、その辺の記憶は少し曖昧だな・・・。
物語は、ニューヨークに住むウィリー(ジョン・ルーリー)が、クリーブランドに住むロッテ叔母さんの家に越すためにハンガリーからやって来る従妹のエヴァ(エスター・バリント)を1日だけ泊める予定のはずが、叔母さんの入院で1週間も預かることになるというところから始まる。このニューヨークでの一週間の生活からなる「新世界」、ポーカーで一儲けしたウィリーと親友のエディ(リチャード・エドソン)の二人が車を借りて1,200㎞以上も離れた極寒のクリーブランドにロッテおばさんと住むエヴァを訪ねる「一年後」、クリーブランド滞在にも飽き、エヴァを連れ出し3人でマイアミへ向かう途中のフロリダでのちょっとしたトラブルを描いた「パラダイス」の3つのエピソードで構成され、モノクロ撮影、ひとつひとつの短いシーンはその都度黒画面で区切られるという構成が印象的であり、各シーンには大きな動き(アクション)もなく、ドラマチックな展開があるわけでもなく、そこにある日常が淡々と描かれている。
クリーブランドの滞在に飽きたエディが「新しい所へ来たのに何もかも同じに見える」と語る部分がある。そう、日常とはそうそう何かが起きるものではなく淡々と流れる退屈なものなのだ。その淡々とした日常を切り取った本作だからこそ、自分は大きく惹かれたのかも知らないな。
まぁ、見た後にそう感じたわけではなくビデオ化後繰り返し観ていく中でそう感じていったわけで、当時はそんなことよりウィリーとエディのファッション、アメ車のハンドル、ウイリーの食す「TVディナー」なんかのカッコよさの方が僕にとっては大きなインパクトで、二人のスタイルを真似しようと帽子やオープンシャツを探しに札幌の古着屋やデプトストアなんかによく通ったものだ。ただ、TVディナーだけは今の今までお目にかかったことがないのが残念と言えば残念。
また、劇中、エヴァが持つポータブルカセットからスクリーミー・ジェイ・ホーキンスの「I Put A Spell on You」が流れるシーンが何度かあり、これがなんかいい感じなのだが、このスクリーミー・ジェイ・ホーキンス、次々作品のミステリートレインにホテルのフロント役で出演していて、そのワイルドな風貌とは逆のとぼけた感じがこれもまたいい感じなのであります。
それにしてもジャームッシュ作品のキャスティングは、どの作品もよくぞこの人を選んでくれた!というのが多く、出演者を決めてから作品を構想したのではないかと思えるほどだ。
本作のジョン・ルーリー然り、ダウン・バイ・ロウのロベルト・ベニーニ、トム・ウェイツ、ブロークン・フラワーズとコーヒー&シガレッツのビル・マーレイ、パターソンの永瀬正敏等々挙げていくときりがない。
また、ジャームッシュ自身も様々な作品に出演しており、ストレート・トゥ・ヘルではパンクロッカーなスタイルが、フィッシッング・ウイズ・ジョンではジョン・ルーリーとのバカげたひと時が楽しめるので、それらも一見の価値ありですぞ。
さて、今回いつものロックではなく、初めて映画を紹介したのにはちょっとした理由がある。
僕がブログを始めることになったのには様々なきっかけがあり、その一つが、ある映画レビューを中心とした同年代の方のブログに出会ったことなのだが、先日、この方から私のブログに心温まるコメントをいただきものすごく感動してしまったのである。
そんなことから、次は映画に関してレビューしてみようと思ったわけなのだが、想像どおり音楽以上に伝えるのが難しい。やはり映画に関しては、その方のレビューにお任せですね。
いつもここでベインビールを紹介しているのだが、今回紹介したストレンジャー・ザン・パラダイスを一緒に観に行った友人は自分の記憶が正しければこのバンドのボーカルまふゆ氏である。
彼も今日で55歳だそうだ。ハッピーバースデイ!!
https://instagram.com/beinbirumahuyu?igshid=e6pj19f25w23