神経芽腫治療の末天使に・母は角膜移植2回目

神経芽腫治療の末天使に・母は角膜移植2回目

発症2018年3月6歳
神経芽腫ステ4難治性高リスク
右副腎原発15cm
リンパ多発転移
両腎浸潤左腎無機能
骨髄転移ミック増幅なし
大量化学療法+自家移植
手術放射線なし
再発05A01治療
2期前処置骨髄移植GD22クール後
放射線
MIBG集積有腫瘍変異
緩和ケア
2023年12月天使

🌸妃里が旅立って2年。私たちのこれからの歩み

妃里が旅立って、2年が過ぎました。
命日には、妃里が大好きだったりんご飴や好きなお菓子、食べ物を買ってきてお供えし、家族みんなでワイワイ食べながら思い出話をしました。

「これ好きだったよね」
「これ美味しいね」
そんな会話を交わしながら、笑ったり、少し泣いたり。
きょうだいたちも、それぞれに妃里を想って好きな物を持ち寄ってくれました。

毎年この日はみんな揃おうと話していましたが、今年は全員ではなくて。
でも、独立し、それぞれの人生を歩んでいけば、そんな年もあるよね、と思えています。



🌼来年は三回忌。少しずつ“次の形”へ

来年は三周忌。
そのタイミングで、遺骨を少し細かくして骨壷を一回り小さくし、
将来の海洋散骨に向けて少しずつ準備を進める予定です。

いつか一緒に海へ散骨すると決めているからこそ、
まだ妃里から託された“宿題”がいくつかあります。
それらをすべて終えたとき、母としての私の役割のひとつがゆっくりと区切りを迎えるのかもしれません。

もちろん、まだ小さな子たちの子育ては続きますが、
ひとつの節目が近づいている感覚があります。



🌈これからの私は、自分の人生も取り戻していく

来年は、私自身の「叶えたかったこと」を少しずつ実行していくつもりです。
• 会いたい人に会いに行く
• 見たかった景色を見に行く
• やりたい趣味を再開する
• 大切な人たちとの関わりを取り戻す

子育ての中でずっと諦めてきたことも、
もう遠慮しなくていい。
もう我慢し続けなくていい。

残りの人生は、楽しく、私らしく生きていきたい。

そして、私にはまだ“使命”があります。
それを達成するためにも、これからも前を向いて進んでいきます💪✨

以下、実現できるか分からないが
またもや。とんでもない、妄想である。

もし、今までの研究助成金枠でダメならこども家庭庁、少子化対策枠でこの治療薬の助成金作ってください。


ボンジェスタ国内承認戦略まとめ(医師主導+助成金+クラウド支援)


1. ハイブリッド承認戦略(概略)

ステップ 1:海外臨床データの整理
 • 海外第 II/III 相試験データを収集
 • 有効性:つわり・悪阻改善効果
 • 安全性:母体・胎児への影響
 • アジア人・日本人データを重点評価
 • データの信頼性・エビデンスレベルを明確化

ステップ 2:国内少人数補完試験
 • 日本人妊婦 30〜50 名程度
 • 目的:薬物動態(PK/PD)確認、安全性評価
 • 海外データとの整合性確認
 • 倫理的配慮を重視し最小限で実施

ステップ 3:リスク管理計画(RMP)策定
 • 胎児への影響や重篤副作用を監視
 • 製造販売後調査(PMS)を計画に含める

ステップ 4:厚労省との事前相談(SA)
 • 「ハイブリッド承認」の意向を確認
 • 海外データ+国内補完試験+RMPで承認可能か事前調整

ステップ 5:承認申請
 • 海外データを主要根拠、国内補完試験データを追加
 • RMP・PMS計画を添付

ステップ 6:承認後フォロー
 • 使用成績調査で全症例追跡
 • 母体・胎児安全性データを継続収集

💡 ポイント
 • 海外データ:主要根拠
 • 国内補完試験:日本人妊婦の安全性・薬物動態確認
 • RMP・PMS:承認後リスク管理
 • 厚労省事前相談で早期承認可能性を最大化


2. 製薬会社(MAH)の役割
 • 国内承認申請は MAH が行う必要がある
 • MAH が担う業務:
 • 承認申請書類作成
 • 国内補完試験の実施・監督
 • RMP策定・PMS実施
 • 薬事法に基づく安全性情報報告

MAHが決まっていない場合の選択肢
 1. 海外メーカーと提携して国内MAHを確保
 2. 医師主導承認ルート(特例承認)
 3. NPOや行政主導でMAHを巻き込む形で申請


3. 医師主導試験戦略
 1. 海外データ整理
 • 第 II/III 相データを集め、有効性・安全性・アジア人データを重点確認
 2. 医師主導試験計画
 • 対象:高リスク・重度悪阻の妊婦(少人数)
 • デザイン:安全性・薬物動態確認、倫理審査(IRB)承認
 • 厚労省事前相談(SA)を実施
 3. MAHとの関係
 • データをMAHに提供して国内承認申請に活用
 4. 承認申請
 • 海外データ+医師主導試験データ+RMP/PMS計画で提出
 5. 個人/NPOの支援
 • 海外データ整理
 • 医師への協力呼びかけ
 • 社会啓発・署名活動
 • 助成金・補助金情報提供(AMED、希少疾病医薬品助成など)

💡 ポイント
 • 医師主導+少人数補完試験が現実的な妊婦薬承認戦略
 • 社会的ニーズを示す活動が早期承認を後押し


4. 国内助成金の活用
 • AMED「臨床研究・治験推進研究事業」
 • 医師主導治験や未承認薬の臨床研究支援
 • 年間4,000千円〜60,000千円規模
 • PDSC「未承認薬等研究開発支援事業」
 • 海外承認済の未承認薬の研究・開発を支援
 • 上限3,000〜5,000万円/成分
 • ポイント
 • 申請主体は医師・医療機関
 • 助成金は治験・研究費用の補助に限定
 • MAHや承認申請費用全額を賄うわけではない


5. クラウドファンディングでの資金調達
 • 目的:医師主導試験・資料作成・社会啓発の費用
 • 注意点:
 • 薬剤販売を目的とする資金集めは不可(薬事法)
 • リターンは研究報告・限定イベント・サンクスメールなど
 • PR戦略:
 • SNS・署名活動・動画で社会的意義を可視化
 • 支援者に「妊婦の苦しみ」「未承認薬問題」を伝える
 • プラットフォーム:Campfire、Makuake、Readyfor、MotionGalleryなど


6. 個人ができること(5つの柱)
 1. 海外データ整理・資料作成
 2. 医師・研究者ネットワーク作り
 3. MAH候補への情報提供・働きかけ
 4. 社会啓発・署名活動で承認ニーズ可視化
 5. 助成金・クラウド資金の活用支援

 • 海外データ+国内少人数補完試験+リスク管理計画+助成金/クラウド資金で承認の土台を作る
 • 個人は直接承認できなくても、情報整理・広報・資金調達・医師連携で実質的にプロジェクトを推進できる
 • 妊婦薬の承認は倫理面で制約があるため、医師主導+少人数補完試験が現実的戦略

フローチャート

個人/NPO:海外データ整理・社会啓発
        │
        ▼
クラウド資金・助成金で研究資金確保
        │
        ▼
医師/医療機関:国内少人数補完試験・医師主導治験
        │
        ▼
MAH:承認申請(海外データ+国内補完データ+RMP/PMS)
        │
        ▼
厚労省承認
        │
        ▼
承認後:使用成績調査・安全性データ収集

一応、素人ながらも医師主導型ハイブリッド戦略で
承認、販売までまとめてみた

ざっとで、雑な部分もあるが

神経芽腫の治療薬ジヌツキシマブ(ユニツキシン)の時の例を参考にまとめた

必ずしもこの通りで進められるかと言ったら分からないけど

医師主導型ハイブリッド戦略いかがでしょうか…

悪阻の治療薬がどんどん保険収載で使える様になれば、少しは少子化に貢献できるのではないでしょうか…?
中には二度と悪阻が嫌だと出産しない女性もいらっしゃるので。多分1人や2人のレベルではないでしょう、と。

#悪阻 #妊娠悪阻 #悪阻治療薬 #つわり #ボンジェスタ #グラニセトロン #プリンペラン #吐き気 #5‑HT₃拮抗薬 #B6 #ドキシラミン #ピリドキシン #重度妊娠悪阻 #少子化対策

※本記事は医学的知識を持つ専門家によるものではなく、保護者視点での一般的な理解を元にまとめた情報です。医療方針は必ず専門医にご相談ください。


■ 診断とリスク分類

検査内容:

  • 腫瘍マーカー(尿中VMA・HVAの上昇)

  • CT、MRI、MIBGシンチグラフィ

  • 骨髄検査・MYCN遺伝子の増幅確認

本例はMYCN陽性・骨髄転移ありのため、「高リスク群」に分類。


■ 治療プロトコル(高リスク群)


① 導入化学療法(5~6クール)

目的:腫瘍縮小と転移制御
使用薬剤(例):

  • シクロホスファミド(CPA)

  • ビンクリスチン(VCR)

  • シスプラチン(CDDP)

  • エトポシド(VP-16)

  • ドキソルビシン(ADM)

副作用:嘔吐、脱毛、腎障害、感染症リスクなど。
この段階ではクライオセラピー(氷含嗽)は未実施。


② 原発巣摘出術(外科的切除)

化学療法後に腫瘍を手術で摘出。完全切除が困難な場合もある。術後は疼痛・出血・感染に注意。


③ 高用量化学療法+自家末梢血幹細胞移植(Auto-PBSCT)

目的:残存腫瘍の完全破壊
使用薬剤(例):

  • ブスルファン(BU)

  • メルファラン(L-PAM)

この大量化学療法の期間に、クライオセラピーを実施。これにより、口内炎の発生率が明らかに軽減されたと報告されている。

治療後、事前に採取した造血幹細胞を移植。


④ 局所放射線治療
※放射線(陽子線も要検討)

目的:原発巣の局所再発予防
照射量:21.6Gy前後(年齢・部位による調整あり)
副作用:成長障害、照射臓器障害など


⑤ 維持療法(免疫療法)

**抗GD2抗体:ジヌツキシマブ・ユニツキシン(Dinutuximab beta)**を使用
補助薬:

  • G-CSF

  • モルヒネ/フェンタニル(疼痛対応)

  • 抗ヒスタミン薬

副作用:疼痛、血圧低下、発熱、アレルギー症状など


▶ 補足:HLA型による免疫療法効果の差異

最近の研究により、免疫療法において治療効果が高く現れやすいHLAタイプの存在が明らかになりつつある。
特に、HLA-A*02:01など一部のHLA型では、T細胞やNK細胞の活性化が強く誘導され、抗GD2抗体との相乗効果が高い可能性が示唆されている。

また、キラーリガンドミスマッチ臍帯血移植においても、HLA-C型やKIRリガンドとの適合性によって免疫拒絶やGVL効果(白血病に対する免疫効果)の発現に差が出ることが知られている。
そのため、今後の個別化医療においてはHLA型を考慮した免疫療法選択
が重要になると考えられる。


■ 寛解後のフォローアップ

継続的な定期検査を実施:

  • 血液(マーカー、造血機能)

  • MIBGシンチ、MRI等

  • 心・腎・内分泌機能評価

  • 成長や学習支援の定期観察

晩期合併症への対処も必要(例:聴覚障害、不妊、成長障害、心機能低下など)


■ 家族支援制度(参考)

  • 小児慢性特定疾病医療費助成制度(厚労省)

  • 自治体の移動支援や介護支援(要申請)

  • 付き添い家族の宿泊支援(例:マクドナルド・ハウス)

  • がん患児家族支援団体(ピアサポート、SNS情報交換)


本記録は、一例としてまとめた治療経過であり、すべての患者に共通するものではありません。医療の選択については、主治医と相談の上で決定してください。

 

 

1. CAR-T細胞療法の長期効果

CAR-T細胞療法は、患者自身のT細胞を遺伝子改変し、がん細胞を攻撃する免疫療法です。過去の臨床試験では、神経芽腫に対するCAR-T療法の効果が限定的とされていましたが、ある女性患者が18年以上の完全寛解を維持していることが報告され、長期的な効果の可能性が示唆されています 。

2. PARP阻害剤による標的療法

セント・ジュード小児研究病院では、DNA修復機構に欠損を持つ高リスク神経芽腫患者に対し、PARP阻害剤タラゾパリブとイリノテカンの併用療法を実施し、2年以上の無病生存を達成しました 。この成果は、個別化医療の可能性を示しています。

3. メトロノミック化学療法の有望性

低用量の化学療法を継続的に投与するメトロノミック化学療法は、副作用が少なく、特にリソースの限られた地域での治療選択肢として注目されています 。初期の研究では、病勢コントロール率が最大45%に達することが報告されています。


4. ctDNAによる微小残存病変のモニタリング

個別化された循環腫瘍DNA(ctDNA)モニタリングは、治療効果の評価や再発予測に有用であることが示されています 。ctDNAの変化は、画像診断よりも早期に再発を検出できる可能性があります。

5. ベバシズマブを含む新たな薬剤併用療法


再発・難治性神経芽腫に対するBEACON-Neuroblastoma試験では、ベバシズマブ(Avastin)と化学療法の併用により、腫瘍の縮小が促進され、治療選択肢が広がる可能性が示されました 。


6. 免疫療法と標的療法の進展


GD2を標的としたモノクローナル抗体(例:ユニツキシン、ナキシタマブ、ディヌツキシマブ)や、ALK遺伝子変異を持つ腫瘍に対するALK阻害剤(例:クリゾチニブ、ロルラチニブ)など、分子標的療法の研究が進んでいます 。

7. 精密医療とバイオマーカーの活用

DHFR、GMPS、E2F3などの遺伝子が予後予測のバイオマーカーとして特定され、個別化治療の指標として期待されています 。

これらの進展により、神経芽腫の治療はより個別化され、効果的なアプローチが可能になりつつあります。特に高リスクや再発例に対する新たな治療法の開発が進んでおり、今後の臨床応用が期待されます。

8. HLAタイプによる免疫療法の個別効果の差異


近年の研究により、免疫療法の効果には患者のHLAタイプ(ヒト白血球抗原)による差が存在することが明らかになってきた。これは神経芽腫に限らず、がん免疫療法全般における個別化治療の鍵となる概念である。


主な知見

  • 特定のHLAクラスI型(例:HLA-A*02:01)を持つ患者では、キラーT細胞が腫瘍抗原をより強く認識する可能性があり、CAR-Tやモノクローナル抗体療法の反応性が高い傾向が報告されている(Chheda et al., 2023)。
  • 一部研究では、**HLAロス(がん細胞がHLA分子を発現しなくなる現象)**により免疫療法が効きにくくなるケースも報告されており、HLAの状態は治療選択の重要因子となりつつある。

9. キラーリガンド・ミスマッチ臍帯血幹細胞移植(CBT)とHLA適合性

高リスク神経芽腫に対して、免疫活性型のHLA構成とキラーリガンド(KIRリガンド)とのミスマッチを意図的に活用した臍帯血移植が注目されている。

重要点:


  • キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)とHLAクラスI分子とのミスマッチにより、NK細胞がより強く腫瘍細胞を攻撃する現象がある。
  • 実際、HLA-C1/C2やBw4/Bw6などの特定タイプを持つ患者では、免疫再構築後のNK活性が高まり、再発率が低下することが臨床研究で示されている(Cooley et al., 2022)。
  • これにより、「臍帯血移植 × HLA/KIRミスマッチ × 免疫療法(モノクローナル抗体など)」という組み合わせ戦略が新たな治療フレームとして構築されつつある。

補足まとめ(追記部分の要点)

  • 神経芽腫に対する免疫療法は、単に薬剤や細胞の種類だけでなく、**患者自身の免疫遺伝子プロファイル(HLA/KIR)**に基づいた設計が求められる時代に入ってきている。
  • **今後は「HLAタイプによる免疫応答性予測 → 最適化された免疫細胞治療や抗体治療」**という、より精密なパーソナライズド医療の方向へと進化が期待されている。

適用外のタイプについて

キラーリガンドミスマッチ臍帯血幹細胞移植(CBT)において、特定のHLAタイプが適用外となる可能性があることが報告されています。これは、ドナーのNK細胞が患者のHLAクラスI分子を認識できない場合、移植後の免疫反応が不十分となり、治療効果が得られにくくなるためです。


適用外となる可能性のあるHLAタイプ

  • HLA-C1/C2ヘテロ接合型:患者がHLA-C1とC2の両方を持つ場合、ドナーのNK細胞による免疫反応が抑制され、移植の効果が減弱する可能性があります。
  • HLA-Bw6ホモ接合型:HLA-Bw4が欠如している患者では、KIRリガンドミスマッチの効果が期待できない可能性があります。 
  • HLA-A3/A11欠如型:これらのアリルが欠如している場合、特定のKIRリガンドとの相互作用が期待できず、免疫反応が弱まる可能性があります。


これらのHLAタイプを持つ患者では、KIRリガンドミスマッチを利用した臍帯血幹細胞移植の効果が限定的である可能性があるため、慎重な検討が必要である。

参考文献:


  • Ruggeri et al., “KIR-ligand incompatibility in the graft-versus-host direction improves outcomes after umbilical cord blood transplantation for acute leukemia,” Leukemia, 2009. 
  • Martínez-Losada et al., “Patients Lacking a KIR-Ligand of HLA Group C1 or C2 Have a Better Outcome after Umbilical Cord Blood Transplantation,” Frontiers in Immunology, 2017. 
  • Cooley et al., “KIR-Ligand Mismatch in Unrelated Donor Hematopoietic Cell Transplantation for Acute Myeloid Leukemia,” Biology of Blood and Marrow Transplantation, 2016. 



【ご留意事項】



本稿は、筆者自身の外傷経験や再生医療・免疫療法に関する興味と個人的な調査をもとにまとめたものであり、医師や医学研究者による専門的な論文ではありません。

また、内容は2025年時点の公表情報や報道、学術資料に基づいていますが、医療上の判断や治療方針を決定するためのものではありません。あくまで参考資料としてお読みいただき、必要に応じて医療機関や専門家への相談をお願いします。




〜外傷性視覚損傷に対する個別再生の可能性〜

はじめに

外傷によって視力を失った経験は、単なる身体的損失に留まらず、生活の質や精神的側面にまで大きな影響を及ぼす。筆者自身、右眼の眼球破裂により角膜・水晶体・虹彩の損傷を受け、視力の大部分を失った。その経験から、「自分の細胞を使って再び見えるようになることは可能か?」という問いが、筆者の思考と再生医療への探求心の原点である。


本稿では、視覚を構成する各組織(角膜、虹彩、水晶体、視神経など)について、iPS細胞などの先端再生医療技術を用いた視力回復の可能性を、現時点のエビデンスとともに探る。





1. 角膜の再生医療

角膜は光の屈折を担う透明な膜であり、損傷すると視界が曇ったり光が入らなくなる。近年、iPS細胞由来の角膜上皮再生は実用化段階にあり、2019年には京都大学と大阪大学の研究グループが、世界初のiPS細胞由来角膜上皮シートの移植に成功した(Kinoshita et al., 2019)。


→【ポイント】患者自身の皮膚細胞からiPS細胞を作製し、それを角膜細胞に分化誘導してシート状に培養、移植することで、免疫拒絶のリスクを減らす。




2. 虹彩と瞳孔機能の回復

虹彩は瞳孔の開閉により光量を調節するが、筋肉組織と神経反射が関与するため、単なる再生ではなく機能再接続が必要となる。



可能性と課題

  • 虹彩の筋肉(平滑筋)を再構築するには、心筋再生技術の応用が鍵となる。たとえば、近年の自己拍動型iPS心筋シート(Takahashi et al., 2021)などは、運動機能の再構築に近い応用が可能と期待されている。
  • 瞳孔反射は脳と視神経との接続が不可欠。したがって、単に筋繊維を再生するだけでなく、神経接続と光感受性の再統合が求められる。




3. 水晶体の再生とピント調節機能

水晶体はカメラのレンズのように、厚さを変えてピントを調節する役割を持つ。これが破裂や摘出で失われた場合、義眼的な人工レンズではピント調節機能が難しい。



新しい展望:

  • 中国の研究グループが小児の水晶体幹細胞を刺激し、自然再生に成功(Zhao et al., 2016)。成人での再現には課題があるが、iPS細胞を用いた調節機能を持つ水晶体の構築も進められている。




4. 視神経と視野欠損の回復


外傷や網膜剝離で視神経が損傷した場合、「切れた神経を再接続できるか?」が重要となる。



技術的希望:



  • 再生因子(FGF, NGFなど)や、**バイオ導電性マトリックス(電気刺激付きの足場材料)**を用いた神経誘導。
  • 近年の報告では、CRISPRを用いた遺伝子制御で視神経の再生が促進された例もある(Lim et al., 2020)。



→視神経は中枢神経の一部で再生しにくいが、局所的な炎症抑制・再生誘導・神経リハビリの複合アプローチにより可能性は見えてきている。





5. 神経再生とリハビリの必要性

再生した組織が「使えるようになる」には、神経回路の再教育=リハビリが不可欠である。視覚の場合も例外ではない。


  • 健常側の目に光を当てて、神経経路を介して損傷側の瞳孔反応を促す訓練。
  • バーチャルリアリティやAIによる視覚刺激訓練と組み合わせた視覚リハビリの時代が来ている。


結論

角膜や水晶体、虹彩といった前眼部の再生は、すでに臨床応用が始まりつつあり、今後数年で個別治療の選択肢となる可能性がある。さらに、視神経や瞳孔運動といった神経的機能回復には、iPS細胞だけでなく神経導通のための刺激技術や再教育プロトコルが不可欠である。


筆者自身のような外傷性視力損傷を負った人々にとって、再生医療は単なる希望ではなく、「見える」を取り戻す現実的な道となりつつある。いずれ「見えるようになる」は再生医療の力で実現される――その未来は、そう遠くない。


参考文献(抜粋)

  1. Kinoshita, S. et al. (2019). First clinical trial for iPS-derived corneal epithelial cell sheet transplantation. Nature.
  2. Zhao, X. et al. (2016). Restoration of lens regeneration in mammals by activating endogenous stem cells. Nature.
  3. Lim, J. et al. (2020). CRISPR-mediated optic nerve regeneration. Science.
  4. Takahashi, K. et al. (2021). iPS-derived cardiomyocyte sheets for muscle regeneration. Cell Reports.