インド・マハラシュトラ州プネーで、駐在員の帯同家族として暮らす中で感じたことや、日々の生活の工夫を記録しています。

主な読者として想定しているのは、現在プネーに滞在中、またはこれから滞在予定の方です。


「お出かけ先情報」シリーズ、

旧市街のガイドウォークの体験談】です。


海外に住んでいると、せっかくなら自分の住んでいる街の文化や歴史をもっと知りたいと思うことはありませんか?


そんなことを考えていたとき、インスタグラムで見かけたのが Deccan Drifts 〜Pune Heritage Walks〜という団体です。

■ ガイドウォークに参加

Deccan Drifts〜Pune Heritage Walks〜は、プネーで歴史や文化遺産、食、アート、工芸などをテーマにしたウォークを企画・運営している文化コミュニティ。
2020年に Randhir Jaya Naidu 氏によって設立されました。

普段は週末にガイドウォークを実施しているそうですが、今回はリクエストをして、日本人向けに平日に開催してもらうことに。

内容は、旧市街のタンバット・アーリ(銅細工職人通り)を訪ねるガイドウォーク。
画像はインスタグラムより、以前の企画のものです。



当日はガイドであり団体の設立者でもあるRandhir氏と、プネーの歴史的な城塞 Shaniwar Wadaで待ち合わせ。

参加者にはピンバッジが配られました。
ロゴマークには、Shaniwar Wadaの正門が描かれています。



今日のツアーの流れや銅細工の歴史の説明の後、工房が連なるエリアへ徒歩で移動しました。



■ プネーの銅細工の歴史


プネーの銅細工職人の居住地は、西暦2世紀までさかのぼるといわれています。
当時この地域では、主にプネーの村人たちの家庭用として、銅や真鍮の道具が作られていました。

また、すぐそばの川沿いには陶芸の工房も集まっていたそうです。

この銅細工の産業が最も栄えたのは、プネーがマラーター帝国の事実上の首都となった1740〜1760年頃
マラーター帝国は、現在のムンバイ空港 Chhatrapati Shivaji Maharaj International Airport の名前にもなっている王 Shivaji が17世紀に築いた王国です。

その後、プネーは帝国の政治・軍事の中心都市として発展し、職人や商人も多く集まりました。
銅細工の産業も、家庭用品だけでなく、軍需用の弾薬や装備品の注文も入るようになり、都市の発展とともに栄えていきました。

しかし、イギリスによる支配の時代になるとそうした注文は減少。
さらにその後、家庭用品の市場でスチールやプラスチックが普及したことで、銅製品の需要は次第に減っていきました。

■ 銅工房を訪ねる


今回のウォークでは、現在残っている数少ない銅工房を訪問。
器がどのように作られるのかを見学し、製作工程を学びながら、職人さんたちと交流します。

最初に訪れた工房は、築およそ400年
軒先では親子の職人さんが作業をしていました。







火を使う仕事なので、火傷をすることも多いそうで、アーユルヴェーダ処方の手作りの軟膏を販売しているのが印象的でした。
切り傷にもよく効くとのことで、地元の人たちがひっきりなしに買いに来ていました。



工房では、銅板を成形する工程を見学。
機械を用いて、回転する型に銅板を押し当てていくと、平たい銅板がみるみるうちにどんぶりのような立体になっていきます。





また、昔使われていた洋式のギザ(湯沸かし器)も見せてもらいました。
燃やした木を上部の筒に差し込み、その熱でタンク内の水を温める仕組みで、入浴の際に使われていたそうです。



さらに、マラーター帝国時代の食堂で使われていた鍋や水がめも展示されていました。
戦士たちを満腹にするためのものだったそうで、器の大きさには驚かされます。



特注品の巨大な鍋の制作の様子を写真で見せてくれました。


こちらは、表札の注文を仕上げたときの写真。


■ 銅の器ができるまで

5つの工程

1.    原材料の銅板を円形または四角形に切断
  → 加工用の素材サイズに切り出す。


2. 機械で成形
 → プレスなどで食器の基本形を作る。



3. 炉で加熱
 → 金属を柔らかくして加工しやすくする。




4. 酸洗いとバフ研磨
 → 酸で汚れや酸化物を落とし、研磨して表面をきれいに。



路地に広げられている様子。





5. 叩き模様加工とラッカー仕上げ
 → 叩いて模様をつけ、最後にラッカーで保護と光沢を出す





■ 実際に体験も


器を叩いて、独特の装飾的な点模様をつける作業も体験させてもらいました。

ハンマーで叩くことで金属の密度が高まり、器の強度も増していくそうです。
その際に表面に生まれる細かな凹凸の模様は、槌目(つちめ)模様と呼ばれ、銅器の特徴的な装飾にもなっています。








扇風機の風を受けながら、黙々とハンマーを振るう職人の方たち。
これからさらに暑さが増してくる時期を思うと、想像以上に大変な仕事です。

こちらの方はこの道35年とのこと。



ほんの数十分滞在しただけでも、金属を叩く音で耳が痛くなりそうになるほどでした。

州政府や国からの保護支援がないため、
「この世代のあとに技術を受け継いでくれる若い人を見つけるのは難しい」
とガイドさんは話していました。

何百年も受け継がれてきた手仕事が、今まさに変化の時代にあることを感じます。

それでも、目の前で生まれていく器の美しさや、黙々と作業を続ける職人の姿に触れ、手仕事の尊さを改めて感じた約3時間のガイドウォークでした。

器やキャンドルホルダーなどを買うこともできました。
金色のものは真鍮(Brass)製です。


■ お手入れ

銅食器は、使用後に中性洗剤と柔らかいスポンジで洗い、すぐに水気を拭き取って乾燥させるのが基本です。
タッパーウエアのように保存容器として使うべきではないとのこと。

■ 今回のガイドウォーク基本情報

ガイド:Pune Heritage Walk / Randhir氏
場所:クンバール・ワダ(カスバ・ペート)
所要時間:約3時間
歩行距離:約1km
参加費:1人 Rs.1200
最少催行人数:5~6人

この日は3月頭で、日差しが強烈でした。
帽子、飲み物、サングラスが必須です!

他にも、ガイドウォークの内容は、
歴史あるマーケットやガネーシャ寺院を巡るもの
銅細工職人同様に歴史の長い陶芸職人の工房を訪れるもの
屋台グルメや地元の名店を巡るフードウォークなど、さまざまです。

ツアーの問い合わせや予約:Randhir氏のWhat's appにメッセージください。
+91 91306 41707