解雇され、転んで頭を打ち、親に見捨てられ、変なものが見えるようになり。

骨折もして車にも轢かれて。

 

まさか。

「こっそり買った宝くじが当たるなんて・・・」

六億円。とはいってもすぐに当たったことはばれて、甘えることなく国家資格を取るために勉強を続けさせられた。

国家資格に受かると、引っ越しの許可が下りた。

『いいマンションを選んだからそこに引っ越しましょう。』

「へ!?」

『親を見返してやるのよ。』

「いや、それは・・・そう、だけど・・・」

『荷造りを始めること。あと、欠けたお皿とかは捨てるわよ。』

 

猫が、片手間に投資をしていたらしい。あっという間に倍になった。

「まけた・・・」

『ごろごろ・・・』

絶望するそこは、低層大規模マンションの最上階。絶望している理由は、十万円が全部溶けたからだ。一方、猫が掛けた馬は探勝万馬券になった。

低層マンション最上階とはいっても十階だ。環境はとてもいい。緑豊かで徒歩十分のところにスーパーとショッピングモールがある。あんまりにも環境が良すぎて働きたくなくなってしまった。月に何万円かの恵まれない子供たちへの寄付も、許可を得てしている。勝手に猫に投資で溶かされないように、三億円は避難済み・・・

「・・・よし、合格。」

『今日から語学の試験勉強を始めるわよ。』

「ひう・・・」

『TOEICとTOFUL、中国語も日常会話くらいはできるようにならなくては。』

もはや何がしたいのかわからなくなてしまった。

息抜きに勧められた編み物を、猫が売買サイトで売っていた。

まあ、材料費くらいにはなっているだろうと思っていたので、放っておいた。

 

両親からは勘当を解かれた。時折御呼ばれして実家に食事をしに行く。

穏やかな時間だ。以前働いていた時とは全然違うと思う。中国語の映画も英語の映画も見れるようになった。

同時に。

 

ニュースを見ると、殺人事件が報じられていた。

「へえ・・・怖い。」

紅茶を飲みながら、少し目を細める。

「犯人わかってるんだね。」

『重要参考人、と言っているわよ。』

「うん、でも大体こういうのってすぐ容疑者になる気がして。」

『情報は正確に。』

「はい。」

素直に答えつつ、左手の人差し指を横に払った。

 

翌日には、その重要参考人の遺体が崖の下から見つかったと報じられた。

「あ、株がまた当たってる。」

売却益は800万円。

(・・・まあ、誰も困ってないし・・・)

死神の力だ。と思っている。私が殺意を以てしぐさをすると、意図した相手の命がなくなる。そして、私の資産が増える。

(・・・・・はっきり言って、この能力があれば私は幸せになれるんだよね・・・)

 

ある日、街中で楽しそうに笑っている男女を見かけた。

なので、左手の指を横に払った。彼女が、私の最後の職場の直属の上司で間違いなかった。彼女の評価が、私をあの職場から追い出された原因だ。

だが、払いきる前にガシッと腕をつかまれた。

見ると、彼女だった。

「あ・・・え・・・」

『・・・やめなさい。』

「・・・っ!!」

指だけでいいのだ。だけど、動かせない。

「・・・」

息を吐き出し、力を抜いた。だけど、手を放してくれない。猫が、いつの間にか目をギラギラさせて、彼女たちと私たちの間に入っていた。敵意を向けてきているのは、私たちに対して。

引っ張られて自宅に戻る。

部屋に入ると、彼女が私の目から見ても薄くなっていた。でも、わかる。すごく怖い顔をしている。

おびえそうになる心を必死で奮い立たせる。

『人を憎み貶め』

「最初にしたのはあの人だよ!!」

初めてどなった。

「私は悪くない!あの人たちが悪いんだ!何も知らないくせに!どれだけ傷ついたか、知らない、くせに・・・」

この力は贈り物だ。

『どうして私がここに送られたかわかる?』

「うるさかったから・・・でしょ・・・」

『そうよ。あなたはとてもうるさかった・・・神様は言ったわ。あそこまで本気でわめいているのに、あなたには邪気がないって。きっと、あなたは素で人を助けてきたのだけど、少し不器用なんだろうって・・・そこを直したら、きっともっといい魂になるって・・・』

私は涙をぬぐう。なんで、どうして、と嗚咽している。

 

猫『危なかったわね。』

女『ねえ、様子が変なことに気づいていた?』

猫『ぺろぺろ…』前足を舐める。

女『神様の力を借りましょう。』