あるゲストハウスで一人の少女が働いている。少女の名はO,12歳だ。

Oはチャイントンの北にある村で生まれ育った。3年前に母親が亡くなり、父親が事実上育児放棄をしたため、遠戚であるこのゲストハウスのオーナー夫妻の元に預けられた。このオーナー夫妻はゲストハウスの他にガソリンスタンド(日本のそれを想像してはならない)を経営しており、Oはその仕事を手伝っている。12歳の少女に出来る仕事は限られているが、面倒を見てもらっている立場上、Oは手伝えるだけの仕事はしなければならない。365日休みはない。

オーナー夫妻にはOと同じ年の男の子がいる。雇う側と雇われる側の違いなのか、男と女の違いなのか、その理由を断言することは出来ないが、実の子である少年よりも少女の方がはるかに家事を手伝っている。いつも少女はつらそうな顔をしている。それでもこのゲストハウスに世話になっている限り、食べはぐれることはない。幸いにもオーナー夫妻は少女に教育をということで、少年と同じ学校に通わせている。あと数年は通わせるつもりだと言う。見る限り、少年が少女をいじめている気配はない。

かつてチャイントン近郊は、タチレクやメーサイ、果てはチェンライやチェンマイで働く娼婦の供給地だった。Oも一歩間違えば、そういう人生を歩むことになったかもしれない。それに比べると、今の生活は楽とは言えないまでも、悲惨というものでもないのだろう。ずっと彼女を観察していると、時折笑顔を見せることがある。これまでの彼女の人生をオーナーから聞かされるとかわいそうな気もしたが(まあ、よくある話といえばある話だけど)、彼女の笑顔を見ると少し救われた気がする。