部屋の外では、雨が止むことなく降っている。
僕の目の前には、ずぶ濡れの先輩がいる。
「……………」
「……せ、先輩?」
宇宙科の2年生で僕の恋人でもある先輩は、何も言わず小さな溜息をした様だった。
その微かな動きによって、毛先の滴が何粒か落ちる。
どうして先輩が男子寮の自分の部屋の前にいるのかとか、どうしてカサを持っているのにそんな濡れているのかとか、聞きたいことはたくさんあるけど、まずは先輩をどうにかすることが先だ。
「とりあえず、中に入りましょう」
先輩は変わらず黙ったままだが、首を小さく縦に振った所を見ると無視しているわけではないらしい。
タオルを先輩に頭から被せバスルームへ向かう。
しばらく時間がかかるのは分かっているので、すぐに先輩の元へとんぼ帰りする。
先輩は、予想通りというか、部屋に立ったままだ。
「どうしたんですか?先輩」
「…雨、嫌い」
先輩は間も空けずにそう言い張った。
そういえば、髪がまとまらないからとかいう理由で前もそう言っていたことがあった。
それが、不機嫌な理由だろうか。
手は自然と頭に掛ってあるタオルに向かう。
特に抵抗しないので、痛くしないよう髪を拭く。
先輩の耳が若干赤かった。
それが嬉しくて、顔を覗き込むように近づける。
先輩は仰け反ったが、僕が頭を抑えてるせいで離れられなかった。
「それで?嫌いな雨に当たってまで、僕に会いに来てくれたんですか?」
「うん、梓に会いに来た」
からかい半分で言ったのに、先輩は意外にも嬉しい答えをくれた。
「…………」
「……あ、梓…?」
髪を拭くても止まり、先輩が心配したような表情で顔を覗きこまれた。
心配したような表情が、一瞬で笑顔に変わった。
「ふふっ、梓の顔まっか」
さっきと立場が逆転したことが妙に悔しくて、先輩を抱きしめ顔を肩に埋めた。
「……やっぱり、雨の日もいいかも」
僕も、そう思います。
Fin
梅雨の時期に書いたものを今更ながらUP
学校帰りに、雨が土砂降りで、全身ずぶ濡れになったんです…
その時の勢いで書いてみました

