僕はいつものように教会に行き、大きな十字架の前でお願い事をする。
「また、あの人に会わせてください…。」
と。
あれはよく晴れた日のことだった。
僕はいつものように教会に行った。
それは幼いころからの習慣で、昔は家族で礼拝に言っていたりもした。
今はこうしてひっそりと一人で教会に行くことが多いけど。
そしていつもはあまり人がいなくて、
僕が行く時間帯には、見知った人しかほとんどいない。
それなのに、その時だけは、見たことがない人が来ていた。
その人は背が高くて、白くてきれいで、
茶色の髪にまっすぐ十字架を見つめる、ダークブラウンの瞳。
僕は見惚れていたに違いない。
ふと、彼が僕のほうを向いたときに目が合ってしまった。
「…!あ、すいません…。」
「いえ…。」
その人はそれだけ言うと、また十字架に目を移した。
彼は何を思ってここにきているのだろうか…。
それに、その表情は謎めいていて、なんだかつい目を向けてしまう。
僕は彼とは少し離れた距離に座り、
彼と同じように十字架を眺めた。
そして、数分に一回ほど、彼の表情を盗み見た。
その度に胸がドキっとする。
こんな経験初めてで、なんでそうなるのか、よくわからなかった。
「ん……。」
気付けば僕は寝てしまっていた。
ハっと焦って勢いよく立ち上がると、何かが床に落ちる感覚がした。
何だろうと、下を向くと、
クリーム色のカーディガンが落ちていた。
それを広いあげて、僕のじゃないのを確かめる。
誰のだろう…。
そう思い考えてみて思い出した。
これは彼のだ。
彼が着ていたカーディガンだ。
僕は慌てて彼が座っていた椅子のほうを向くけど、
彼の姿はなかった。
もう帰ってしまったようだ。
なんだか急に胸が苦しくなった。
僕はそのカーディガンをぎゅっと抱きしめて、
彼のことを思い出してみるけど、そのたびに胸が締め付けられるように痛んだ。
きっとこれは恋だ。
おかしい、なんであの人に…。
僕も男で、あの人も男なのに、ありえない。
でも確かに、僕はまたあの人に会いたいって、そう強く思っていた。
それから数日が経って、今に至る。
僕は、カーディガンを洗濯して、教会に行くたびにそのカーディガンを持って行った。
でも神様はなかなか会わせてくれない。
相手が男だから?
だから会わせてくれないのだろうか…。
もしかしたら、運命の相手ではなかったのかもしれない。
神様は、一生あの人には、会わせてくれないのかもしれない。
ガチャ。
と、思っていると、教会のドアが開いた。
僕は、きっと違う。
そう思いながらも、そっと後ろを振り返った。
「あ…。」
彼は、ぼーっとドアの前に立ち、僕のことを見ていた。
僕は戸惑っていた。
僕も彼のことを見ていて、目が合っていた。
でも、お互い見つめるだけで動かない。
彼はどうなのかわからないけど、僕は、動こうにも動けなかった。
そう思っていると、彼がこっちに近づいてきて、
僕の隣にそっと座った。
何もしゃべることもなく、そっと座るだけ。
僕はどうしたらいいのかわからず。
でも、少し冷静に考えて、彼にカーディガンを返さないとと考えた。
「あ、あの、カーディガン…。」
「あぁ。」
「ありがとうございました…。その、おかげで風邪ひかずにすみました…。」
って、何色気のないこと…。
いやいや、だって他になんて言ったらいいの!?
それにしたって、風邪をひかずに済んだだなんて…、おかしくて笑っちゃうよ…。
「そっか、よかった。」
彼は、口角をきゅっとあげて、そう言うと、
大きな優しく温かい手で、僕の手に少しふれながらカーディガンを受け取った。
その時に衝撃が走った。
っていうか電流が走った!?
びりびりと、手に伝わってきた感覚がした。
それにドキっとして、顔に熱が集中していくのがわかる。
僕はその衝撃で何も頭に思い浮かばず、
変に沈黙が続いてしまった。
なんだか気まずくて、彼が何か言ってくるのを待ったが、
彼が十字架のほうを向いてしまったのを見て、
僕はあきらめた。
彼は、ただの親切で、僕にカーディガンをかけてきただけなんだ。
僕のような特別な感情はない。
きっとそうに違いない。
それが当たり前なんだ…。
僕はなんだか涙が出そうになったけど、
それをぐっとこらえて、残念だけど帰ることにした。
「僕、帰りますね。カーディガン帰せてよかった。」
「え。」
僕は速足で扉の方へむかった。
彼にさようならなんて言われたら、我慢していた涙が零れ落ちちゃいそうな予感がしていたから。
「ちょっと待って。」
そう言って、彼は僕の腕をつかんだ。
「え…、あの…。」
僕はただ戸惑っていた。
こんな展開想像していなかったから。
僕は彼の方を向くと、彼はそっと僕の腕を離した。
「…すいません…。」
「いえ…。」
きっと、数秒の間だったんだろう。
でも、僕にはかなりの時間沈黙が開いたような気がした。
だから、俯くことしかできなかった。
「その…、俺…あなたに一目ぼれしてしまったらしくて…。」
「え?」
「俺チョギュヒョンって言います。」
「あ、あの…。」
頭が混乱してしまって、その人の言っている意味が理解できなかった。
彼はなんて言った?
頭をフル回転するんだ、思い出せ。
〝一目ぼれしてしまったらしくて…。"
うそ!?彼いま一目ぼれって言った!?
「い、今の言ったこと…、本気ですか…?」
「もちろん。俺は冗談なんて言わない。」
「キュヒョンさん…でしたよね。あの、でも僕男…。」
「俺も戸惑ってますよ。男に一目ぼれしたのは初めてですから。」
彼はぶっきら棒にそう言った。
僕だって初めてだ。
だからどうしたらいいのかわからない。
でも、この気持ちは、
僕だって、とっくに気付いているんだ。
だってこんなにもドキドキが止まらないんだもん。
「僕も…好きです…。」
「ほんと?」
「うん…、あ、僕イ・ソンミンって言います…。」
「ソンミン…、ふふ、イメージ通りって感じだね。」
「え?」
「かわいい名前だ。」
「………ありがとうございます。」
僕はこの名前や、童顔なこの顔でからかわれたことがあった。
男なのに、お嬢さんだとか、姫さんだとか…。
かわいいなんて言われて、良い思いなんてしたことなかった。
でも、今、このかわいいの言葉が素直にうれしくて。
彼は、そっと僕の唇に触れるだけのキスをした。
手をそっと握られて、彼は優しくほほ笑む。
「ソンミナに会えてよかった。」
「…、僕も、キュヒョナが僕の前に現れてくれて、すごく幸せ…。」
神様、疑ってしまってごめんなさい。
僕は、十字架に目を向けて、
神様に感謝した。
―――――――――――――――――――――――…
なんだかよくわからないストーリーですが…。
少し謎めいたギュさんが書きたくて。
そしてカーディガン。
最初は迷わずボーダーと書きましたww
だけどイメージにあわず却下させていただきましたww
ボーダーは膨張するんだよギュったん…。
ってなわけでまぁピュアラブストーリーでしたぁ~。
