小説Pandula第5話 「運命に導かれて、、、」中編パート3 | レームダックのブログ

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第5話 中編 パート3


治療の間も、目前のテーブルではエイデンの携帯が電波を受信し、1階にいるジョシュアと見張り役の男の会話を拾い続けている。


もくもくと進む治療、、、エイデンはナパットが傷口に詰め込んだ脱脂綿をピンセットで取り出しながら、彼女の現状を説明していく。「止血が適切だったから流れ出た血液は総量の15%前後、、、目眩や脱力感はあるだろうけど数日で良くなるはずだ。俺の抗生物質を渡しておくから感染症を防ぐため呑んでいた方がいい、、、」そう話し傷口を縫合するエイデン、処置の手順は実に鮮やかなものであり、治療を受けるナパットから見ても適切だと感じる手捌きであった。


その後何一つ会話を交わすことなく治療は続いていく、、、沈黙した部屋の空気が2人の間に流れ始めた。 ”あたしってば沈黙 、苦手だなぁ、、、これだけ傍いると余計気になる、、、” 耳の良いナパットは直ぐ後ろで治療を行う、エイデンの呼吸と心臓の音を直に捕らえてしまう。次第に緊張を募らせるナパット、、、足は爪先立ちとなり、手の指は固まり銃を握ってる事さえ覚束無くなる。 ”あたしの破壊工作って極端に他人と接する事ないから、、、こういう時どんな態度とっていいか分らない、、、” 少しでもリラックスしたい彼女は、何でもいいから会話をしたいと感じ始める。「ねぇ、、、何か聞いたりしないの?」ナパットの問いかけに作業を続けながら言葉を返すエイデン、「どうせ話せないんだろ、、、 それとも何か話せることあるのか?」


エイデンの返答はその通りであった。「うん、、、何も話せない、、、」変な質問をしたとナパットは更にバツが悪くなる。それ以後なんの会話も無く治療は進む、、、”この人、無口だなぁ、、、もしかして空気の悪さ感じてるのあたしだけ?” 別の事に集中しようとするナパット、そんな彼女の聴覚が意識せずある声を察知してしまう。 


”ああ、、、うう、、、” 


女性の呻き声にナパットの心に緊張が走る。 ”誰か襲われた? もしかしてテークの奴らがこの建物に進入したって事!? ” 耳を使い声の元を辿るナパット、更なる女性の声を捕らえていく、、、 


”いいわぁ~、、、もっと激しく、強くしてぇ、、、”  

聞いた直後、真っ赤になるナパット、、、

” この声ってまさか、、、!” 


そう、その声の元は壁向こうの部屋で繰り広げられている、男女の淫らな行為に他ならなかった。 ”うわぁ~~~どうしよう、、、どうしよぉ~~~、、、そういえばここラブホテルだったよぉ~~~” まずいと感じる彼女は、慌てて他の事に注意を向けようとする、、、だが一度意識してしまった声を無視することなど容易なことではない。


「そこ、、、いいわ、、、もっと激しく、、、ああ、ああん、ああぁ~♥」 


ナパットの額からは汗が滲み出していく、、、”まずいよぉ~、、、まずいよぉ~~~、、、こんなんじゃあたし集中力維持できない、なんとか気を紛らわさなきゃ!!” 焦るナパットはエイデンに思いついた事柄を話しかける。「あのぉさ、、、明日の天気いいかな?」話したナパット自身馬鹿みたいだと思う内容であるも、エイデンは快く返事を返してくれる。「100キロ四方は晴れ、西の風2メートル、湿度40%、、、なかなか心地良く過ごせるんじゃないかな」 狙撃手であるエイデンは特別その話題に詳しかったが、当のナパットは ”そう、、、” と返事を返すのがやっと、、、正直彼女は ”てんぱった” 状態となり始めていた。


 ”えっと、、、話さなきゃ、、、共通の話題、、、共通の話題、、、えっと、、、獣人と人間の共通点は二足歩行で歩く事、、、

えっと、、、貴方の歩き方いいですね?、、、だぁ~~~ダメだ、意味不明すぎる!!!!” 


ナパットは若さも手伝い、焦りと周りから聞こえてくる男女の喘ぎ声で、強い混乱を感じ始めていた!!




 


















”この声うるさぁ~~~い、どうにかしてぇ~~~!!” 


彼女は心の中で叫ぶ、、、苛立ちを堪えきれなくなるナパットは、再び口を開き勢いのままエイデンに話してしまう。「やっぱおかしいよ、、、普通は ”お前何処から来た!!” とか

”何の目的でここに来ている” とか聞くもんじゃないの?、、無口すぎるのって逆に怪しくない!?」エイデンの目の前のナパットは、不自然に顔を赤らめ憤りを示している様子、どうしてそんな事を言い出したのか分らないエイデンは、不思議そうな表情を見せながら彼女に話しかけることにする。「じゃあ、名前はなんていうの?」エイデンの初めての質問に、とりあえず何でもいいから気を紛らわしたいナパットは、自身の名前を明かすことにする。 「ナパット、あたしの国じぁあ苗字は無いからただのナパット」彼女の名前を聞いてにこやかに笑うエイデン、「ナパットだな、、、俺はエイデン・ターナー、、、よろしくな」そう話すとエイデンはまた治療を開始していく、、、。



またしても2人の間に沈黙だけが残る、、、ナパットは心の中で叫んでいた 

”だぁ~~~ダメだぁ~~~ ぜんぜん会話にならないんですけどぉ~~~!!” 


そんな状況に周りの男女の声はより一層激しさを増し、体がぶつかり合う音まで聞こえてくる、、、絶頂を向かえるその声に彼女の思考はパンク寸前となり始めていた。「エイデン、貴方変だよ!あたしの耳と尻尾見ても驚かないのって普通?そんなわけ無いじゃん、、、あたし自身がおもっきし怪しいってそう思うんだけど、あたしがおかしいのかなぁ!普通気になるよね、、、質問攻めするよね」ギャフーと猫のように怒り、足を踏み鳴らす彼女の仕草は子供っぽく、その姿を見るエイデンはほのぼのとした表情で彼女を見つめている。


「いや、十分気になってるよ。その耳は頭の何処から付いてるのか、さっきから不思議でさ、、、」そう話すとエイデンはナパットに断り無く、彼女の髪の毛をかき分けて耳の付け根を探し始める。「いやっ、ちょっと勝手に触らないでよ!」怒るナパットは右手で彼の腕を払いのける、、、それに対して軽く笑っているエイデンの表情は、ちょっとした悪ふざけだと言っている雰囲気であった。「周りの声が気になるんだろ、さっき俺も気が付いてさ、、、気を紛らわせたいならそう言ってくれればいいのに」優しく笑う彼は、どうやらナパットの本心を理解した様子である。本心を悟られたナパットは恥ずかしくなり、それ以上何も話せ無くなる、、、”違う!”と一言彼に告げると不貞腐れそっぽを向き黙ってしまった。


・第5話 中編パート4はこちら~