「さて、どうしたものか―」
と、呟いてみる。
目の前に広がるのは、扇状の段々畑のような庭。
浮き上がるような花模様の白いタイルと、
鮮やかな若草色の芝の正方形が交互に連なって、
美しいコントラストを描いている。
庭の最奥(さいおう)には鬱蒼(うっそう)たる木立。
更にその奥は急峻な地形になっており、崖同然である。
そこには地面を階段状にくりぬいた一本道があり、
厩舎の片隅へ繋がっている、らしい。
生憎と、私は確かめていない。
中途にある踊り場のような場所に不埒者除けの結界を張りに
行ったので、そこまでは確認しているのだが。
宮城の片隅に在る庭付きの角部屋。
それが私に与えられた、私の領域である。
先々代国王の弟君が執務に使っていた部屋、
ということだったが…。
一人で使うには、広過ぎる部屋だ。
しかし、宮廷魔導師という立場には見合うだろう。
何を隠そう、結構気に入っている。
私の蔵書を仕舞い切れる本棚には感心させられた。
先人の所有だった物も大分残っていたのに、である。
しかも、遺物の質も存外に良く、大したものだと呆れさせられた。
加えて、調度品にも良い趣味の品々が多数残っており、
大層ホクホクしたのである。
欲を言えば、曰くの無い部屋であって欲しかったが…。
…まあ、先代の所有者は、
当時の政権の縁の下の力持ちとして大往生された方。
不都合はあるまい。
「…うーん…」
手入れは行き届いているが、庭園としては殺風景という状況に、
私は心が弾(はず)んでいた。
そう、もう一つの趣味は、庭いじりなのである。
半年ほど前、念願叶って、陛下より造園の許可が下りた。
ゆえに、この庭は私好みに染め上げてよい場所なのだ。
…とはいえ、かなりのご都合主義的側面も持っている。
好きな花は選ぶが、世話は原則、庭師任せにするつもりだから。
…まあ、暇な職業ではないしね、宮廷魔導師とは。
そもそも、本気で庭いじりをしたいだけなら、
宮城に職を得たりなどしない。
適当な山間を選んで、居を構えてしまえばいいのだから。
私はそこまで世を儚(はかな)んでいないし、
執心している研究も無い。
世俗の垢に洗われる憂さ晴らしとして、庭いじりをしたいのだ。
多分に個人的な我儘(わがまま)である。