酒ばかり飲んでたな  高知市 | お客さん、終点です(旅日記、たこじぞう)

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よく居眠りをして寝過ごしてしまう旅人の日記。みなさんが旅に出るきっかけになればと思います。(旧題名のたこじぞうは最寄りの駅の名前)

25歳。あの若さで、すごい気迫がある。あの発想はどこから出てきたんだろうね俺は25の頃は酒ばかり飲んでたな

苅宿仲衛と植木枝盛。明治10年代、自由民権運動が特に盛んだった福島県と高知県の活動家の足跡をたどるテレビ番組が何年か前に放映された。

この番組の中で、ルソーなどの著作に学び25歳で憲法草案を作った苅宿仲衛について、進行役の菅原文太氏が高知の自由民権記念館で確かこんなコメントをしていたのだ。

他にも文太氏は今の東北のこととも絡めてとても印象的なことを言っていたと思うけど、40を過ぎても酒を飲んではふらふらしている自分に忸怩たるものを感じていた僕は、このコメントだけはよく覚えている

 

 

苅宿仲衛は、と書きかけ調べ物をするうち時間がたってしまった。高知に来たのは2年前の12月のことなのだけれど、なぜ高知に来たのかの話はひょっとすると旅好きの皆さんの役に立つかもしれないと思い、続きを書くことにした。

 

 

 

 

 

じつは、この街に急きょ日帰りで来なければならなくなった理由は僕の段取りの悪さが原因だった。

アフリカのある国に行こうとしていたのだが、その国は入国の条件として黄熱病の予防接種が義務付けられている。

インフルエンザの予防接種と同じ感覚で、近くの保健所で受けられるものと思っていたのだが、調べてみると全国でも20か所ほどの検疫所や医療機関で、それぞれ週1・2回、あるいは月1回といった頻度で行われているだけだった。

すでに、アフリカへの出発まで3週間ほどしかない。しかも証明書が有効になるのは接種から10日後からである。

東京のある医療機関が土日に接種をしているが向こう一か月は予約が埋まっているとのことだった。大阪や神戸も同様に予約で埋まっている。地方の検疫所では隔週や月に1回といった頻度で接種を実施しているところがほとんどで、仕事のスケジュールを考えると、第二木曜日つまり、翌日に高知の検疫所で行われる予防接種が出発までの最後のチャンスだということがわかった。

 

アフリカ行き自体やめたほうがいいのではないかと気弱になるが、とにかく、行ける可能性を残すことにした。黄熱の予防接種は生涯有効なので、今回、旅行に行かなかったとしても、次の機会にバタバタせずに済む。

 

だめもとで電話する。小さな検疫所なのだろう、最初に出た男性の職員がそのまま対応をした。「まだ受付をしています。明日になるとちょっと厳しいので、今日中に連絡ください。」また、大阪や神戸の検疫所のように破傷風、狂犬病、A型肝炎との同時接種ができない。今回黄熱病の予防接種を単独でしてしまうと、1か月間ほかの(インフルエンザのも含め)予防接種ができなくなるとのことだった。

 

午後の集合時間に間に合うよう始発電車で出発した。前の日に湯冷めしてしまって体調がよいとは言えない。乗り換えの岡山で体温計を買い、列車の中では目を閉じて休むようにした。

 

 

 

 

検疫所は桟橋通りの路面電車の終点近くにあった。

他にたしか5人ほどが接種を受けに来ていた。なぜ高知で黄熱病の予防接種をしているのか、遠洋漁業と関係があるのではと思ったのだが、この日来ていたのは、漁業関係の人はいなかったようで、アフリカへ出張で行くらしい人と、アマゾン川を川下りするという人がいた。

 

医師の問診のあと接種を受ける。

まれにショック症状が現れことがあり、30分待合室で待機をしなければならなかった。

アフリカや中南米の多くの国の入国に必要となる証明書(イエローカード)も受け取ることができた。

 

先述の自由民権記念館が検疫所の近くにあり急ぎ足で見た後、県立美術館に向かう。この美術館はシャガールのコレクションで知られ、また現代の作家の作品にも面白いものがある。

帰りの列車の時間まで1時間ほどしかなかったが、はりまや橋の近くにある居酒屋に行ってみた。ガイドブックに必ず載っている店だが、地元の人たちも多く、とても感じのいい店だ。

土佐の言葉で「どろめ」と呼ばれる生しらすがおいしかったことを覚えている。酢味噌であるいは三杯酢で、と高知でも地域によっていろいろ食べ方があるのだと店の人が教えてくれた。

「今年もビール飲んで電車で寝てばかりいた一年だったな」と思う時期。この日は予防接種を受けたので飲むことができなかったが…