広島県の大学で消えた医師の記録|中道優人の小説

薄暗い資料室に差し込む夕陽が、机の上の古いファイルを赤く染めていた。その色に誘われるようにページをめくった瞬間、奇妙な空白が目に留まった。広島県の大学病院で勤務していた医師の記録なのに、ある期間だけ処置内容が丸ごと抜け落ちている。中道優人がそのファイルを手にしたのは偶然だったが、空白の存在が彼の胸にざらつく疑問を残した。大学では医療ミスが起きたという噂が流れていたが、公式には否定されている。だが、この空白は単なる記録漏れではない。

 

優人は医師を目指す学生として、真実を知るべきだと感じ始めた。翌日、彼は図書館で関連資料を探し、医師が担当していた患者の容態が急変していたことを知る。さらに、医師が突然退職したという事実も浮かび上がった。優人は事件性を疑いながらも、大学という閉ざされた世界の複雑さに戸惑いを覚えた。そんな中、研究棟の廊下で医師の元同僚と出会い、驚くべき話を聞かされる。医師はミスを隠したのではなく、設備の故障を報告しようとして圧力を受けていたという。

 

空白はその圧力の結果だった。優人はその言葉に深い衝撃を受ける。医療の現場は理想だけでは語れず、時に組織の都合が真実を覆い隠すことがある。彼は静かなキャンパスを歩きながら、自分が進む道の厳しさを改めて噛みしめた。著作:本田先生