T先生の発言について記す前に、Oとの顛末を書いておこう。
3学期の初日、約束通り、目も合わさない私とOであったが、そこに思わぬ伏兵が現れた。
それは、現在でも子どもたちの最大の関心事
「席がえ」である。
私のクラスではくじ引きで席を決めるのが習わしで、この日は中学生最後の席がえであった。
黒板に座席表がかかれ、一つ一つのマスに番号が書かれる。
ところが一番前の席はすでの四組のカップルの名前が書かれていて、番号がない。
私とOの名前は、教卓から右手の一番前にかかれていた。
一体どういうことなのか?とクラス委員に聞くと、
「最後の席がえだからなぁ!好きなものどうしをとなりにしたんだよ。みんな納得するさ。」
異論を唱えるのも変なので、しかたなく私はOとならんで座った。
後ろからどんな視線で見られているかと思うと、かなり恥ずかしかった…。
私は黒板を見ながら、Oにこうつぶやいた。
「これじゃあ口をきかないわけにはいかないなぁ…。」
「そうね…。」とつぶやきかえすOも、やはり黒板を見つめていた。
実際、席がとなりだからというわけで、勉強が捗らないということはなかった。
むしろその逆で、授業にも集中できるし、わからないことを教え合ったりする関係は、実に快適だった。
そうして、進路会議の日がやってきた。
私がF高校を受験することに、一人を除いて全員が反対したそうである。
「確かに最近◯◯のがんばりは認める。しかし、成績が悪かったときのことを考えれば…」
ということである。
しかし、たった一人、T先生のこの言葉で私の受験が決まったのであった。
「◯◯は必ず合格する!もし不合格になったときは、私は教員をやめる!」
「やばいっ!やばすぎるっ!
僕が失敗したら、先生の人生が台無しにになる!」
こうなったらもう何かなんでも受からねばならない!
私は鬼気迫る勢いで勉強するのだった!