人生初の恋心を発芽させるのは、大概女性の方が先である。
私の小学校時代も例に違わず、サッカーに打ち込む男の子と、それに憧れる女の子がいて、
その想いは通じることはなく、やがて女の子の熱が冷める頃になると、
今度は男の子の方が女の子を追いかけるようになる。
しかし、ときはすでに遅し、女の子の気持ちは他所に向かっている…。
初恋を成就させるのは,甚だ難しい。
こんな私にも、とうとう思春期が訪れた。
クラスの一人の女の子Oのことが気になり始めたのである。
Oは決して美人さんではないが、テニスに打ち込むアスリートで、とにかく足が速い!
真っ黒に日焼けして,韋駄天のごとく走るものだから、
「走る弾丸」という異名を授かっていた。
しかし,性格は極めておとなしく,もの静かであり,目立とうとするところが全くない。
ショートカットの瓜実顔は,その頃の私のお気に入りでもあった。
私は彼女に近づくだけで心臓が高鳴り,フォークダンスの練習で順番が回ってきたときなど、
このまま失神してしまうのではないかと思うほどであった……これはもう初恋である。
あるとき,男子どうしの馬鹿な会話から,「誰が好きか?」という話になったとき,
私は迂闊にも彼女の名前を口にした。
すると,それを誰かが女子に伝えたのであろう,ある女子のグループから
「Oも〇〇(わたし)のことが好きなんだよ~」と言われ,
顔でお湯が沸くのではないかと思われるほど赤面したのを覚えている。
まだ,「愛」などというものは理解できない時期。
「相思相愛」とはいかないまでも,「相思相好」といったところである。
しかし,その頃の私には,だからといって何をしたらよいのか全く分からなかった。
目が合うたびに,ただひたすらドキドキしていた。
でも,そのこと自体が楽しくもあり,学校生活に張り合いが生まれてきたのは事実であった。
そんな状態で,時は過ぎ,中2の二学期の終わりの日。
下校中に起きた出来事は,今でも鮮明に思い出されるのであった。
~つづく~