君の家は、線路を挟んだ反対側の、造成中の宅地の中にあった。

私の家からは、子供の足でも分とかからない距離である。

 

はじめての夏休み、とある日の夕方、僕はTくんと、Tくんの家の隣の工事中の土地で、

積まれた土の山を滑り台にして遊んでいた。

 

きれいな夕焼けが、そろそろ家に帰らなければならないことを告げていた。

 

「また明日遊ぼうね。」

「もうすぐ学校が始まるから、またいっしょに行こうね。」

そんな他愛のない会話が記憶に残っていたので、夏休みも終わりの頃だろうと思われる。

 

手を振って別れを告げ、我が家に向かって歩き始める。

ところが、しばらく歩いていると、うしろに人の気配がする。

振り返ってみると、なぜかTくんが6m後方からついてくるのだ。

 

Tくんの家は隣なのに、なぜついてくるんだろうと不思議に思った。

しかし、疲れていたせいもあって、

「ま、いいか」と先を急ぐ。

 

しばらく歩くと踏切が見えてくる。

後ろを振り向くと、やっぱりTくんはついてくる。

「カンカンカンカン」という乾いた音が電車の接近を知らせてくる。

 

当時の踏切の中には、音を出す警報機はあっても遮断機がないという踏切が数多くあった。

その踏切がそうであった。

 

<写真はイメージ>

 

疲れていた…。

私はおそらく何の確認もせず、踏切に入っていった。

 

私が踏切を渡りきるかどうかというところで、

私の後ろを轟音とともに上り列車が通過した。

 

はっと我にかえり、後ろを振り向くと、電車は通り過ぎ,

Tくんの姿もなくなっていた。

 

どうしたんだろう?どこに行ったんだろう?

と思いながら、

「ま、いいか」と家に向かう私だった。

 

母には「Tくんがいなくなっちゃったの」とかいう話をしたらしいが、

「早くご飯を食べて寝なさい」と促されて床についた。