それは小1の6月ころのことである。


私の小学校は、バス通学する生徒が多かった。


帰り道、バスを降りた子どもには、我先に目の前の横断歩道を渡ろうと走る習性があった。

バスの目の前を横断する子どもは、バスの右側を追い越していく車の死角に入る。

そして子どもが車になねられる。


そういう事故が毎週のように起きていたのである。

まさに昭和の「交通戦争」のただ中であった。


事態を重く見た学校は、緊急全校集会を開き、

黒板を用いて事故の原因と、注意が告知された。


バスの前を横断するときは、一旦停止して追い越してくる車がこないかどうか確認せよとのことだった。


怖い話だったので、先生がおかきになった図を今でも鮮明に思い出せるのである。


その日の帰りだった。

私は3人の同級生と同じバス停で降車した。

すると、3人は猛然とダッシュして、バスの前の横断歩道を渡っていく。


「いけないんだよ!今日言われたでしょ!」と私。

「こうやって、バスのうしろからくる車をかくにんして…。」

道路の反対側にいる3人を諭すように、丁寧に演じてみせる。

そして、おもむろに残りの横断歩道を渡ろうした…その瞬間であった。


私の身体は進行方向から右側、すなわちバスの後方に向かって、宙にはね上がられたのである。