私は東京の個別指導塾に務めている。

学生時代の塾講師から数えると,指導歴45年の生きる化石である。

そんな化石でも7月と8月は夏期講習があって多忙を極める。

 

しかし,ここ5年程,日月は休みにしているので,

動けるときに動いておこうということで,月曜日に父の後始末をすることにした。

 

何をするにもまず必要なのが「戸籍謄本」である。

父が生まれてから死ぬまでの連続した戸籍を取らなくてはならない。

 

父の戸籍は,親が離婚した母ほど複雑ではない。

まず生まれ故郷のN市,そして祖母が亡くなったあとY市に移しただけなので,

2か所に謄本の請求をすればよい。

しかも郵便で請求できるので,実に楽である。

 

父は本家で生まれ,2歳のときに祖父が戦争で死に,

祖母を筆頭とする分家の戸籍に入った。

したがって,N市分は2通で済むはず。

 

請求書と2通分の1500円の定額小為替を郵便局で買ってN市市役所に送る。

それが6月30日の金曜日であった。

来週には届くだろうと思っていたのだが,火曜日に返ってきたのは電話だった。

 

「謄本が3通になるので料金が不足しています。

 再度,普通小為替を送ってください。」

 

父は母と結婚するときに祖母の戸籍から外れて,新しい戸籍をつくっていたのである。

750円の定額小為替を再び購入。小為替は発行するのに200円の手数料がかかる。

意外とお金がかかるのだな…。

 

結局,N市の謄本が送られてきたのが7月12日の水曜日。

重要書類をはらはらしながら待たねばならないことも相まって,

郵便でのやりとりに,若干の嫌悪感を抱き始めたのであった。