ドス使いのアイシャ…
彼女はドラクエを始める数年前は皆からそう呼ばれていた。
表向きは大手の巨大投資銀行に勤めていたが、その企業の裏には完全に闇の世界が存在していた。
このリーガルー銀行の頭取、リーマンは社長でありながら裏でアイシャの様な特殊部隊を行内に何人も忍ばせ、ことが起こればすぐに彼女たちを招集しては会社の危機を乗り越えていた。
ある日リーマンに招集されたアイシャは本社ビルの地下へと続く格納庫の隠し扉先の階段を下っていた。
薄暗い廊下を少し進み、小さな扉を開くと煌びやかな装飾が施された会議室へとたどり着く。
アイシャが部屋に入ると、大きな円卓にはすでにアイシャ以外の11人が席についており、部屋にの隅では一人の清掃員の男がせっせと箒で床を掃除している。
アイシャは空いている席に着くと、清掃員の男に声をかけた。
「頭取、遅くなりました」
「みんな集まったな?」
その清掃員はリーマン…
リーマンは頭取でありながら、普段は表に顔を出さず、清掃員として自社内の清掃をしており、この裏部隊のメンバー以外の社員達は頭取の姿を認識したことがなかった。
リーマンも席に着くと、深いため息をついた。
「我が社、いや、今世界を脅かそうとしている謎のウイルス軍団に関しては皆知っているな?」
「うちのシステム部にもかなりの攻撃を仕掛けてきてますからねぇ」
スラという小柄な男が眉間に皺を寄せる。
「つい先日、ジャビ君の捜索部の活躍によってその軍団の基地の一つと思われる場所を特定することができた。」
「おーやるじゃねーか」
「てめーら企画部は呑気にしょうもねーもん作ってる間にこっちは仕事してんのさ」
ジャビが隣の席のサタンにニヤリとすると、すかさず殺部のチキンが
「結局乗り込むのは僕たちですけどね」
と、突っ込む。
「うっ」
ジャビがバツの悪そうな顔をしていると、アイシャが突然立ち上がりリーマンに目を輝かせながら
「じゃあ、今すぐ私たち殺部の出撃ですね!?」
と尋ねる。
「それが…今回は違うんだよ。今回はあまりにも簡単に見つけてしまった。匂うと思わないかい?」
「まぁ本拠地ではないことは確かですしね。何かの罠でしょうなぁ」
メダパニ部のガタイのかなりいい大男のむねまさは組んだ足の片方のニーハイソックスをくいっと上に上げながら続ける。
「と、いうことは俺たちお色気担当のセクシー部の出番ですかな?」
「いやいや、私とチキンの殺部が行った方がはやいだろ」
アイシャは引き下がろうとしない。
「むねまさ君、アイシャ君、確かに今回はその罠にあえて引っ掛かろうということだが、あの企業がこのようなことをわざわざ仕掛けてくるのは初めてのことだ。なにが待ち受けているかわからない…。ということで今回は…」
リーマンがそこまでいうと、今まで黙っていた一人の小さな性別不明の人間が椅子から立ち上がり
言葉を遮った。
「ということで今回は身代わり部の自分がいってきます!」
この身代わり部の三田(サンタ)は、身代わり部のプロであり、今まで銀行強盗の人質や様々な交渉の手渡しなど、危ないはしをわたっきた。
それから三田は戻ってこず、音沙汰もなくなった。
三田がいなくなってから約1年…
リーガルー銀行の裏組織ではもちろんジャビ達によって三田の捜索はされていたが、あるウイルスがスラが取りまとめるシステム部のセキュリティを掻い潜り拡散し、社内にスパイがいるとよんだリーマンは特殊部隊達にしばらく会社には出勤を禁止し、社内の人間との接触も禁じたのだった。
『あいつらもう三田見つけたんかな』
アイシャはミューズ海岸の浜辺に座り、タバコ代わりに保管していた指を一本取り出すと、火をつけふかし、海を眺めた。
アイシャの横には踊り食いされたしびれくらげ達の残骸が転がっている。
「最近ドラクエでのイメトレサボりすぎだな」
そういうとアイシャは、オラッと小さく声を漏らし立ち上がると、腰に下げているドスを取り出すと自主トレの為スッと素振りを始めた。
当時ミューズ海岸の岩壁に亀裂が入っていた理由は語るまでもない。
続く…
ズズッ
アイシャは現実世界のこじんまりとした定食屋でとんこつラーメンをすすっている。
「替玉2個いれてくれ」
「うちはラーメン屋じゃないのよ~!じゅんちゃ~ん、このお客さん替玉っていってるんだけどい~い?」
背の高いスラッとした女が、厨房の奥にいる店主に声をかける。
「あぁ?誰だ定食屋を舐めてんのはー」
そう言いながら店主のじゅんと呼ばれた黒い真っ直ぐな髪が腰まで伸びている女が暖簾をくぐりながら客の方をみると、パッと明るい顔になった。
「あらっ!あいちゃん久しぶりじゃないの。もちろんOKよ~!かよちゃん替玉あげたげて~」
アイシャは片手をあげて軽く挨拶をする。
「じゅんちゃんがそういうなら~」
そういってかよは腑に落ちない顔で麺を茹で始めた。
「やだ!また行方不明者!?」
そう叫んだじゅんの視線は店の壁に取り付けられたテレビに向いている。
「またって最近行方不明者多いのか?」
アイシャに替玉をカウンター越しに渡しながらかよが驚いた顔で
「え~テレビ見てないの?最近連日で何人もいなくなってるのよ」
と答えた。
『最近ドラクエにインしっぱなしでこっちのニュースに疎かったからな』
アイシャはそう考えなら替玉を小皿から器にうつす。
「あいちゃん…もしかしたら何か関係あるのかしら?」
「どうだろう。調べてみないとわからないが…」
「え!なになに~!」
かよがじゅんの方をみると、彼女はタバコに火をつけながら天井を見つめた。
「あんたは最近ここで働き始めたから知らないだろうけど、あいちゃんはずっとここの常連さんだったのさ。そんで昔ね…」
「まいどー!」
じゅんの話を遮るように突然イントネーションが極端になまった高い男の声が店の入り口から響いた。
「あら、あまちちゃん。今日もありがとう~」
あまちは肩に担いだ米俵をカウンターの中に入ってかよに渡す。
「今週もいい米はいったんだよねー。今日は猫が赤ちゃん生みそうだからもう帰るよ」
「そうなの~。はいっこれお代ね!」
あまちはかよから米代を受け取ると、じゅんに手を振り、アイシャをチラッとみて店から出て行った。
「前の米屋は辞めたのか?」
アイシャはじゅんの方を見ると、じゅんは不安な表情を見せた。
「実はあきちゃんも行方不明者の一人なのよ…。あきちゃんと近所の、さっきのあまちちゃんが代わりに届けてくれてるんだけどねぇ」
「あっきーも行方不明者?あっきー…」
アイシャはドラクエのチームめたるのメンバーあっきーを一瞬思い出したが偶然だろうと思い、麺のなくなったスープを一気に飲み干した。
「あいちゃん…?」
「じゅん姉、また当分こっちにはこれねぇかもしれない」
「また探しに行くのね。」
「うむ。うまかったよ」
アイシャは二人に背を向けて店の入り口へ歩きながらかよにコインを投げる。
「500円じゃ流石に安すぎか」
フハハハと笑いながらアイシャは店を出て行った。
かよは咄嗟に受け取って握りしめた拳を開いてコインをみる。
「え~なによこれ~」
それは500円ではなく、白と緑の背景の真ん中にドラキーがのっているコインだった。
「ごっさん、ちょっと聞きたいことがあるんだ’」
アイシャはドラクエにログインし、ごっさんをラッカランのURAGIRU酒場に呼び出していた。
薄暗いURAGIRUの酒場でもゴットの体からは薄くて白い光が発光しており、周りを更に暗くくすませていた。
「?」
アイシャは手の平のサイズの小さい樽のジョッキに入ったビールをグイッと一口飲む。
「まず、どうやってリアルの世界でホイミとかを習得したんだ?」
「まて」
ゴットはアイシャの言葉を聞くと、慌てて彼女の口を手の平で抑えた。
「ここ、だめ。りあるではなす」
「わ、わかったよ。けどどうやって会うんだ?」
「今まだだめ。自由なったときあいにいく」
「自由?ごっさんリアルで誰かに拘束されてんのか?」
「まて!!!!!」
ゴットからは冷や汗が吹き出し、アイシャの口元を先程よりも強い力で抑えた。
「ちょ、まてってどこもいってねぇよ!それよりどういうことか教えてくれよ!」
アイシャはゴットの手を振りほどき、大声で叫んだ。
「ゴッド、覚醒」
次の瞬間、先程までとは比べ物にならない程のまばゆい光がゴットを包む。
「わ、わかった!わかったよ!その時を待つから覚醒はやめてくれ!」
「OK!」
ゴットから溢れる光が収まると、アイシャはホッと、ない胸をなでおろした。
すぐ横のテーブルでは魚の男がせっせとウェイターとして働き、山賊のような男に罵声を浴びせられながらテーブルを拭いている。
『あのときの社蓄魚ここでも働かせられたのか…』
アイシャは「リ~マン」と声を掛けようとしたが、今はゴットを早くURAGIRUからチーム集会所に送り届けることが最優先だと考え、開きかけた口を閉じた。
『まだまだ俺の旅は終わらなそうだな』
URAGIRUから出たアイシャはラッカランに降り注ぐ太陽を見上げながら小さなため息をついた。
続く…
「ここへは来るなといったはずだ!運営を呼ぶぞ!」
数人の罵声に見送られながらアイシャが道具職人のギルドを出た。
「ちょっと数人殴っただけだろうが」
彼女は悪態をつきながら舌打ちをし、めたるのチームの集会所へと向かう。
当時まだ集会所は未実装だったが、めたるメンバーのメロの家を共有し、集会所として使っていた。
ジュレット住宅村ジャングル地区にある、まるい大きな家の一階にある真っ青な王宮ソファにふかく腰掛けうなだれたアイシャに、シュンが日本酒の入った上半分が割れている瓶を渡す。
割れている部分はギザギザしており、まだ新鮮な血がうっすらとついていたがアイシャは気にせず残りの日本酒を一気に飲み干した。
「アイちゃんどうしたよ」
タバコをふかしながらシュンはアイシャに尋ねる。
「ちっとまたギルドを追い出されてよ」
そういうとさっき手渡された瓶をまじまじと見つめる。
「まぁ俺らみたいなのは表では歓迎されねぇからなぁ」
「なぁ、シュン兄これどこで手に入れたんだ?」
「まぁちと知り合いの道具職人が経営してる酒場で揉めてよ。まぁまだ中身があったから持ってかえって…」
「いや、そうじゃなくてこの酒と瓶自体どこで手に入れたんだよ…。…酒場?」
「あぁ」
シュンはタバコを暖炉で消すと、壁に立て掛けていた竹刀を手に取る。
「酒場って仲間貸してくれるあの酒場か?」
「まぁな」
アイシャは酒場で借りたサポート仲間に、雇って1分後ルーラしたとたん3人がアイシャの恐怖のあまり逃げ出し、紹介料を無駄にした苦い思い出があった。
「酒場はあんま信用してねーんだ」
アイシャは飲み干した瓶を床に投げ捨てる。
「だがな、ちと普通の酒場とは違うんだわ。ついてきな」
シュンはそういって竹刀を肩に担ぎ、集会所の扉を開けて外に出る。
アイシャは集会所のタンスからドスを数本を取り出して
腰に仕込み、シュンの後ろを追いかけた。
二人はラッカランに到着した。
「ん?ラッカランで社蓄の魚でも釣る気か?」
「は?何いってんだ、こっちきな」
シュンはそういってランプ職人ギルドへ入る。
「おいおい、ここも出禁なんだよ」
アイシャが入り口で立ち止まると、シュンはアイシャの背中を押し、入り口すぐ左の地下への階段へと進む。
地下には扉があり、そこを開けると小さな部屋に4つのランプが並んでいる。
「ここをちっといじるからちゃーんとみて覚えな」
シュンは竹刀で1番左のランプを回し、次に
1番右のランプから順に残りのランプを全て回した。
ガラガラガラガラ
すると4つのランプの中央に隠し階段が現れた。
「な、なんだこれ」
驚いているアイシャにウィンクしてシュンはその階段を下って更に地下へと進んだ。
「おいおいおい!待てよなんだよここ…」
呆然としているアイシャの目の前には、酒場や賭博場、職人ギルドなどが凝縮されたような広い地下街が広がっていた。
ただ地上のギルドや酒場と違うのは、そこにいる冒険者たちは柄が悪かったり、訳ありの者ばかりだということだ。
「まぁ、運営に睨まれてる連中は俺たちだけじゃねえってことだ。裏ギルド、通称URAGIRUだな」
そう言い残してシュンはすぐ左にある酒場のカウンターに座ると、バーを切り盛りしている半裸状態のオーガの女を口説き始めた。
「なぁかょかょちゃんそろそろいいだろ?」
「もう、またじゅんちゃんに告げ口するわよ~」
かょかょはカウンター越しにシュンに酒を出す。
シュンを見て苦笑いしながらアイシャは奥にみえる道具職人ギルドへと歩き出した。
途中怪しげなスライムレースをしている集団の側を通りすがった際、
「うおおおお!まじかよー!!」
と立ち上がって大声を張り上げているビジャが目に入った。
「…知ってるならみんななんで早く教えてくれねーんだよ」
アイシャはブツブツいいながら道具職人ギルドエリアに到着した。
カキーンカキーン
ごろつきどもが多いなか、めずらしく小綺麗にしているツインテールの女キャラが道具職人で何かを作っている。
「そのまだ未実装の髪型、お前何者だ?」
「あー、今いいところだから待って!」
その女は見向きもせず、制作物を仕上げると、急いで隣の武器職人ギルドエリアに移動し、魚の男に先程完成した物を手渡した。
「あ、さっきはごめんなさい!みない顔だけと一見さん?」
「こんなとこあったなんて驚きだよ」
アイシャがそういうと、突然ツインテールの女と魚の男は近くにある武器を手にとってアイシャを威嚇した。
「お前、運営の回し者か?それとも迷い混んだ冒険者か?」
魚の男は槍の先をアイシャの顎に突きだす。
「おいおいおい、物騒じゃねえか。まぁそういうのは嫌いじゃねぇけどよっ」
アイシャは突き出された槍を握ると一瞬で折り曲げた。
「ここは誰かの紹介じゃないと入れないルールなんですよ!」
ツインテールの女は職人道具のハンマーを震える手で振り上げた。
「紹介ってかうちのめたるのシュン兄に急に連れてこられたんだよ」
その瞬間ツインテールの女はハンマーをゆっくり下ろし、ぽかんとした顔で魚の男とアイシャを見た。
「シュン兄ってあのめたるの…?」
「シュンさんのお知り合いでしたか!」
アイシャが顔をしかめていると、
「おーいアイシャ、どうだ気に入ったかー?」
ふらふらと歩いてシュンが3人に寄ってきた。
「シュン兄!なんかこいつらが突然喧嘩うってきてよ」
「わりぃわりぃ。ここは訳ありの連中だらけだから紹介制になってんだよ。こいつは裏道具の職人るかと、こっちの魚の兄ちゃんは表ではカリスマ職人、URGIRUではチート武器職人の名人サタンだ。」
「チート武器…?」
「さっきは失礼しました。アイシャさんというのですね。どうぞご贔屓に。」
サタンは一礼すると先ほどルカから受け取った道具を持って武器職人ギルドの奥へと消えていった。
「私はサタンさんの弟子のルカぴょんです!気軽にルカって呼んでくださいね!」
とびきりの笑顔でルカはアイシャの手を握る。
「私も道具職人だ。訳あって表のギルドには行けなくてな。いろいろ話を聞かせてもらおうか」
「まぁここはそういう人だらけなのでwなんでも聞いてくださいな♪」
こうしてアイシャは今後重要な基地となるアストルティアの裏の世界を知ったのだった。
続く…
「あああああー道わかんねー」
アイシャは、あっきーと野良二人のPTを組んで、この頃はやっていた強ボスのオーブ金策のためスイの塔に登っていた。
まだ強戦士の鍵がない時代、強ボスと戦うにはそれぞれのボスエリアに足を運ばなければならなかった。
アイシャとあっきーは淡々とスイの塔を登り、目的地付近に到達していたが、野良のうちの一人、男エルフのてんちょ~は4人で来たにも関わらず道に迷ってまだ3階への階段も探しきれていない。
もう一人の野良の女オーガ、ナオはてんちょ~のフレらしく、彼がなかなか来ないため一度道を引き返して彼を探し回っていた。
「おいいいいい、おせーぞ」
効率厨のあっきーはあまりの遅さにしびれを切らしている。
アイシャは、プスゴンにやられた冒険者達の死体の山のてっぺんにあぐらをかき、指を奪い取っては自分の指保管袋に次々と詰め込んでいた。
「ちょっと、てんちょどこ!」
「ここーここだよー」
ナオは声がする方へ走ると、てんちょ~は3匹のともしびこぞうに絡まれてあたふたしている。
「もうこんなとこで遊んでる場合じゃないよ!…あの二人怖そうだしはやくついてきて」
てんちょ~はナオについてくをすると、アイシャ達より20分遅れて頂上に到達した。
~全員の準備が整いました~
ナオはへらへらしているてんちょ~が少しでも野良の迷惑にならないよう自分が2人分戦うつもりで気合を入れて天ツ風の間へと足を踏み入れた。
キュイーンッ
しかし仕事人の朝ははやかった。
一瞬真っ暗になって何も見えなかったナオは、気が付くと目の前に紫色の宝箱がある。
「え、え、どういう…」
「わーいわーい!」
戸惑っているナオを気にもとめずてんちょ~は中のオーブを取り出す。
「まぁ、一発で出たからそいつの方向音痴は許してやろう」
アイシャとあっきーはサッとオーブと取ると、天ツ風の窓から飛び降り、PTを解散していった。
「オーブ金策はいいがわざわざ現地に出向いて一匹一匹倒すのがめんどくせーなー。殺すのも一瞬だしなー」
アイシャはアズラン地方の草むらに寝転びながら青空を眺め考えていた。
そのプスゴンは怒りのあまり自分の家具を投げ飛ばしていた。
「あいつら…壁タゲできないと倒せない俺のことを毎日毎日こけのように一瞬で倒しやがって…!スウィートホームも毎回散らかしやがって!」
プスゴンは自分で投げ飛ばしたソファに座りアイシャ達が飛び出していった窓の外を見つめた。
「そうだ…」
きぐるみを来たようなかわいい体と顔に似合わず口元が歪んだ。
「へ~。ごっさんの家って質素だな」
ある晴天の昼頃、アイシャはゴットの秘密を探るべくアズラン住宅村にある彼の家に訪れていた。
『金目のモンはなんもねーな』
少し期待していたアイシャはすぐに飽きてしまい、
「んじゃ帰るぜー」
といってドアを開ける。
始終ずっと無言で微笑んでいるゴットは
「^^」
とだけいってアイシャを見送るために一緒に外へとでた。
のどかな農村地区では川のせせらぎが耳に心地よく流れる。
sthmgぽ:gjpd893fdごあjfdpがf@p神
突然こののどかな住宅村には合わない大きな爆音が響き、同時に地響きが起きた。
「な、なんだよ」
ぐらついたアイシャはゴットの宅のフェンスに捕まると、あたりを見渡す。
先程まで雲一つなく綺麗に晴れていた青空をどんどん暗い雲が覆いかぶさっていき、ゴットの丁目全体は完全に真っ暗な夜に包まれた。
「!」
さすがのゴットからも笑顔が消えている。
「ハハハハハハ」
「ウウフフフ」
「ひーっひっひひひ」
どこからともなく大多数の不気味な笑い声響き渡る。
その声はだんだんと二人の方へと近づき、気が付くとゴットの家は強ボスたちに囲まれていた。
「よくも毎回毎回タナトスとヒプノスを残酷に殺してくれるな」
アイシャは右を振り向くとイッドが長いベロを伸ばして二人を見下ろしている。
その隣ではマリーンがいただきボールを手のひらで転がしながら鼻で笑っている。
二人の正面でニヤニヤ笑っている天魔クァバルナの左に立っているプスゴンが二人に近づき、大声をあげた。
「おまえにいつも散々やられている同志を集めてきたんだよ!今日でおまえも終わりだな!」
プスゴンは5大陸の強ボス全員に声をかけ、アイシャについて相談したところ、全員が同じ悩みを持っていたことを知り、全員で奇襲攻撃をかける計画を立てたのであった。
ジウギスは奇声を発しながらアイシャ達に闇のブレスを浴びせた。
強ボスたちからはアイシャ達の姿が一瞬消え、すぐにブレスの中から2人の姿が少しずつ現れる。
「クックック…」
アイシャは下を向いて右手を額につけて笑っている。
「自分たちからまとめてオーブ捧げにきてくれるたぁ助かるぜこりゃあ」
「い、いや、おれたち全員できてるんだ!負けるわけねぇ!」
ぷすゴンがアイシャの強気にたじろいている他の強ボスたちに叫ぶと、強ボスたちも
「そ、そうだな」
「今度こそ潰すニャ~!」
と武器を握った手に力をこめた。
「ごっさん…!こいつらは悪の魂胆だ。もし神になりたいならこいつらを浄化させないといけないんだぜ?協力してくれるよな?」
さすがに全員の奇襲に不安がよぎったアイシャは前方を向いたまま、すぐ後ろにいるゴットに小声で呼びかけた。
「はい」
ゴットは両手杖を握り締めてうなづく。
「おらあああああああっ!」
アイシャはドスをを振り下しながら天魔に飛びかかった。
しかしその瞬間
ウルベア魔人兵がアイシャの真上にガレキ落としをした隙に、アラグネは彼女に糸を吐いて身体に絡めて拘束し、暴君バサグランデは闇のいなずまをぶっ放した。
ボッフ
飛びかかったアイシャは天魔に到達することなくボロボロになって地面に叩き落とされる。
そこへつかさず天魔が倒れ込んでいるアイシャに旋風脚をかまし、プスゴンはマジカルポシェットからいちご爆弾をとりだし、アイシャの上に投げた。
マリーンはアイシャよりイッドを見つめては自分の唇を舐め回していただきボールでイッドを狙っている。
ジュリアンテがムチを持ってアイシャに双竜打をしようとした瞬間、魔法使いに転職していたゴットが突然最近会得した魔力覚醒の特技をし始めた。
ゴットの体全体からまばゆい光が周り全てを照らし出す。
ただ通常の魔力覚醒と違うのは、光が神々しい金色なことである。
「ゴッド、覚醒」
ゴットが小さな声でそう呟いた瞬間、神に近しい男「ゴット」は、完全な神、「ゴッド」へと覚醒してしまった。
「ハッ!!!!!!」
ゴッドが手のひらを天に向けると、突然ゴッドとアイシャにベホマズンとザオリクの呪文がかかる。
驚いて手が止まってしまったジュリアンテは気を持ち直して双竜打ちをしたが、ゴッドはアイシャと自分に結界を張り、完全に打撃・呪文無効状態にしてしまった。
ベホマズンによって回復したアイシャは立ち上がり、驚きとまどった表情でゴッドの方を見た。
「ちょ、ごっさんどうしたんだよ」
「ハッ!!!!!」
ゴッドは今度は両手杖を天に掲げてそう唱えると、再びアイシャとゴッドにベホマズンとザオリクがかかる。
「ちょ、魔法使いなのに回復と蘇生最強ってどういうこと!?」
「いま」
「え…?」
「いま勝つ」
眩いばかりのゴッドの言葉に
「そ、そうだな!今ならまとめて倒せる!いくぜ!」
とアイシャは気を取り直して強ボスたちのほうに振り返ると、ドスを一気に7本四方八方に飛ばし、ドスが飛んでいる間にイッドの首を締め上げ、オーレンの骨を拳で全て砕き、ラズバーンの股間を蹴り上げた。
「「「「ぐふっ…」」」」
次々と強ボス達が倒れていく。
アイシャにいくら攻撃しても、ゴッドが完全無敵結界を張るか、PT全員ベホマズンザオリクの呪文を5秒感覚で唱えているので完全に強ボスたちに勝ち目はなかった。
アイシャがとっておきのドスを取り出し、白目を剥いているプスゴンの首に手をかけた瞬間…
暗かった周辺は突然紫色の空間へと飲み込まれ、強ボスたちが薄くなって消えていく。
アイシャは嫌な予感がしてゴッドのほうを振り向いたが、ゴッドは覚醒状態が解除され、いつものゴットに戻っていた。
「まさか…」
アイシャはゆっくりと迫り来る紫色の空間を受け入れて、やがてくる覚えのある敵にみがまえた。
「…こんばんは、サポートスタッフです」
「わかってます…」
アイシャはやはりという顔をしてうなだれている。
「ならば話ははやいですね。今回はアイシャさんだけではなくゴットさんもチート技を意図的に連続でだしましたね」
赤い鎧の男がゴットに話しかけるが、ゴットは
「^^」
と微笑むだけである。
「アイシャさんは前科があるので、今回のペナルティは避けられません。いいですね?」
「ど、どのくらいですか…?」
「約10日間のアカウント停…」
「ちょっとまったあああああああ!!!!!」
サポートスタッフが言い終わらないうちに突然しゃがれた男の声が鳴り響く。
サポートスタッフとアイシャとゴットが声がする方をみると、そこには竹刀もったいかつい男のエルフが自分の名前にモザイクをかけたまま近づいてくる。
「シ○ンさん…?しゅ○?自分の名前を伏せるのも違反ですよ。あなたにもペナル…」
「おいおいおいおいおい!うちの姉さんを返してもらおうかぁ」
そのエルフはブラブラと猿のような動きをし、竹刀を振り回しながら届かないギリギリのところまで近づくと、目にも止まらぬ速さでアイシャとゴットを両腕で担ぎ、一瞬のうちにサポートスタッフの前から消えてしまった。
「ふう、シュン兄助かったぜ」
アイシャ達は真っ暗な空間に浮いているソファに座りながらくつろいでいる。
ここはふみやの息子、エルモがめたるチームメンバーの住宅村内にバグで作った真っ暗な裏空間である。
なにかと危険な動きをしているメンバーが多いめたるは、何かあるとすぐにここに逃げ出せるようにサンタがバグ空間作りを得意とするエルモに作るよう依頼をしていたのだった。
「^^」
ゴットはお茶を飲みながらくつろいでいる。
「次また助けれるとはかぎらねーんだぜ?気をつけな」
シュンはよっこらしょっと声を漏らしながらソファから立ち上がると明るい表の部屋へと出て行った。
アイシャの周りでは、いつしかカタギでも、カタギでないものでも助け合って生きていくということがごく自然になっていた。
『まずはあの赤い鎧を倒せるレベルにならねーと話にならねーな。めたるのみんなになんかあっても救えねーぜ』
初期の頃はただ人を脅していたアイシャに仲間意識が生まれたのもこの頃からであった。
続く…

