ブログがバズっても出版オファーは来ない
さとゆみ:戸塚さんの著書『1年で億り人になる』を読ませていただきました。今日はよろしくお願いしますと言う前に、私、すでに圧倒されまくっているのですが……。
戸塚真由子さん(以下、戸塚):えー? どうしてですか?
さとゆみ:先ほど、撮影用の服にお着替えしていただいたじゃないですか。あの服、45リットルのゴミ袋に入っていました……よね?
戸塚:あ、そうですねー。ふふ。
さとゆみ:ふふ、って(笑)。億り人は、服をゴミ袋に入れて持ち歩くんですね……。
戸塚:このワンピ、1000円なんですよー! アクセはSHEINです。
さとゆみ:そうなんですね! 米倉涼子さんみたいなめちゃくちゃクールな女性をイメージしていて「だから貧乏人はダメなのよ!」ってビシっと言われたりするのかなあと思ったのですが、ちょっと……いい意味で裏切られました。髪型も、個性的ですね。プロフィール写真とだいぶ雰囲気が違う。
戸塚:あ、そうなんです。昨日、自分で切っちゃったんですよね。
三宅隆史さん(以下、三宅):僕も、今日久しぶりにお会いして、前髪短かっ! って、びっくりしました(笑)。いろいろ、面白い方なんですよ。
さとゆみ:緊張していたのですけれど、一気にほどけております(笑)。では、改めまして、本題に。昨年のビジネス書売上ベスト10にもランクインしたこちらの『1年で億り人になる』が、どのようにできたかを聞かせてください。編集者の三宅さんから、「戸塚さんとは出版スクールで出会った」と聞きました。
戸塚:出版スクールの最終日に30人以上の編集者のみなさんに向かってプレゼンをしたのですけれど、そこで三宅さんが面白かったと声をかけてくださったのが始まりです。
さとゆみ:そもそも、どうして出版スクールに行こうと思われたのですか?
戸塚:実はスクールに入る前に、ブログをバズらせて出版のオファーをもらおうとしていた時期がありました。ブログが注目されれば出版社から連絡が来ると思ったんです。
だから4年前に『まゆこのエッチなブログ』を開設して、「SMクラブの会長とのプレイ」や「狙った獲物(男)は一発必中」など、ただただ私の日常を書くブログを続けていました。当時は億り人になる前だったので、お金のテーマではなく日記的な本を出したいと思っていたんです。
さとゆみ:まゆこのエッチなブログ!? ちょっといろいろ頭がバグるのですが、実際に出版のオファーはあったんですか?
戸塚:私のブログはアメブロの恋愛カテゴリーで1位になったこともあるのですが、結局いいオファーはありませんでした。あったとしても、半分自費出版のようなオファーだったり。さとゆみさんの『本を出したい』に「noteやブログをバズらせたとしても即出版できるとは限らない」みたいな話があったと思うのですが、その通りだなと。
さとゆみ:それで出版スクールに?
戸塚:スクールに通い始めたときは、同じ「本を出したい」という気持ちでも、「私の日常を知ってほしい」ではなく、「私が億り人になれた理由をみんなに知ってほしい! そしてお金から自由になってほしい」という気持ちでした。
さとゆみ:そこで三宅さんにオファーをもらったんですね。三宅さんは戸塚さんのどんなところに惹かれたんですか?
三宅:言葉の節々に「敵をつくっても構わないから真実を言いたい」という覚悟が垣間見えたところです。著者さんもご自身の立場があるので、「所属する団体や関係者を敵に回すからここまでしか言えない」と、いろいろな方面へ配慮する人が多いです。でも戸塚さんにはそれが一切ない。
戸塚:何人かの編集者さんが「本を出したい」と言ってくださったのですが、私のほうはプレゼンをしているときから、三宅さん一択でロックオンしてたんですよ。
さとゆみ:それはどうしてですか?
戸塚:私が笑ってほしいところで笑ってくれるのが三宅さんだけだったからです。他の人がドン引きしているときに、三宅さんだけ爆笑してくれていて。この人なら、きっと私のことを分かってくれると思いました。
三宅さん:たしかにどぎつい言葉もあったんです。でも、その戸塚さんならではの言葉の面白さ、強さに惹かれたんですよね。
さとゆみ:どの見出しもエッジが効いてますよね。
三宅:そうなんです。この本に出てくる見出しでいうと「人捨離をしろ」とか「貧者の発想を捨てろ」とか。これでもだいぶ表現を和らげて、過激すぎる見出しは削除したのですが、それでもグッと惹かれるものがあります。
さとゆみ:戸塚さん的に「これは削除されたけど本に載せたかった」という見出しはありますか?
戸塚:たとえば「一夫多妻制を導入すべきだ」という見出しは削除になりましたが、私としては載せたかったです。実際に一夫多妻制を導入していたモロッコの人に仕組みを聞いたのですが、すごく合理的なんですよ。私はお金持ちになりたかったので、パートナーに複数の妻がいても平等にお金をくれればそれでいいです。だから日本でも一夫多妻制を取り入れてほしいと思って書きましたが、丸々削除されました。
さとゆみ:面白すぎる! 読みたいですが、編集者としてはたしかに慎重にならざるを得ないですね。
三宅:はい、さすがに波紋を呼びすぎるなと思って……。戸塚さんは、みんなが言いたくても言えなかったことをバシッと言ってくれるんです。「お金をコツコツ貯めるのではなく、お金を先に集めることが大事」とか、うすうす気づいているけど誰も口にしないことをバシバシ言ってくれる。
さとゆみさんの『本を出したい』に「著者は格言を作るといい」と書かれていましたが、まさに格言が次々出てくる。だからこの本は大きな反響を呼んだんだと思います。
50万字の下書き原稿。
さとゆみ:「億り人になる方法」というテーマなら情報商材として出しても売れそうですが、あえて書籍にこだわった理由はありますか?
戸塚:情報商材も考えたんですけれど、私が出しても売れないと思いました。というのも、ブログを書いているときに、私が面白いと思うことと世間が面白いと思うことがズレていると気づいたんです。
「これは面白い」と思って書いたブログに全然いいねがつかなくて、逆に10分くらいで適当に書いたブログに驚くほど反響がある、なんてことがしょっちゅうあって。だからプロに見てもらった方がいいと感じ、編集者さんが伴走してくれる書籍を出したいと思いました。
戸塚:三宅さんがデザイナーさんに「パンチがあると同時に上品であってほしい」とオーダーしてくれたらしいです。
さとゆみ:この本には帯がありませんが、何か意図はあるのでしょうか?
三宅:金箔がずれるとかっこ悪いと思ったんです。帯をつけると、位置的に「億り人」を囲っている金箔部分と被ります。少しでもずれると金箔もずれるため、であればいっそのこと帯なしの方がいいかなと。
さとゆみ :帯部分のコピーを変えたいときはカバーごと変えるんですね。なるほど。ところで、初版部数を聞いてもいいですか?
三宅:初版は5000です。
さとゆみ:5000部から17万部に! 夢がありますね。
三宅:でも実は……あんまり大きな声では言えないのですが、そこまで積極的に販促できたわけではないんですよ。というのも、戸塚さんは「まゆこのエッチなブログ」を書いているじゃないですか。それを見た関係者さんがちょっと顔をしかめていると報告があり。
さとゆみ:あーーなるほど(笑)。
三宅:ただ、FIREの棚を取る戦略も功を奏して、初めから割と動きました。ただ、「お金の本」には新しもの好きのコアな読者がいるので、最初に数字が出ても2週間くらいですぐに数字が落ちることはわかっていました。
それで手応えを感じつつ次の一手を考えていたところ、楽天市場で金塊に見たてた箱ティッシュが売られてたんですよ。
昔、佐渡の金山を旅したときに、お土産屋さんで金塊ティッシュがズラっと並んでいた光景を思い出して、即ポチって書店に置いてもらいました。表紙の「億り人」の部分をキラキラ加工にしたので、本のイメージともぴったりでしたね。金塊ティッシュを本屋さんへ営業するのが難題だったのですが隣に座っていた同期入社の営業のSさんが「やりますよ!」と快諾してくれて。
三宅:紀伊國屋書店の新宿本店さんで仕掛けていただいたところ、売れ行きが急増したんです。その後、全国の営業さんから依頼が殺到して結果的に560箱を買いました。一時期は「ひたすら金塊を送る人」と化してましたね(笑)。