テルライド映画祭で、アイ・ウェイウェイの新作映画『Human Flow』を鑑賞しました。

 

この映画は、難民や亡命者の問題に焦点をあてたドキュメンタリー作品です。

 

アイ・ウェイウェイいわく、「世界22ヶ国で撮影した映像を通して、各地の難民問題を次々に見せて「全体像」を提示していく」

 

そのはずなのですが、各地の現状を深く追求しないままに終わっているため、すべてがマンネリ化した映像ばかりで陳腐な作品にしあがっています。

 

『Human Flow』の映画を通して監督は、「人類の危機」を私たちの目の前に突きつけたいと願っているのですが、世界の難民問題をさらりととりあげているために、まるで雑誌をパラパラとめくって写真だけを眺めているような感じのドキュメンタリーになってしまっています。

 

上映会後の質疑応答でアイ・ウェイウェイ本人が言っていたことなのですが、「20クルー以上のチームを世界各地に送って難民地の映像を撮影させた」ということなのですが、そんないい加減な撮影で難民地の人間や現状を描くドキュメンタリーが作れるわけがないとぷー子は思いました。

 

早く映画を仕上げたい。すべての難民地に足を運ぶのは大変だ。手間暇かかる、とアイ・ウェイウェイは思ったのでしょうが、そのいい加減さがこのドキュメンタリー映画にも現れています。

 

そして最悪なことに、アイ・ウェイウェイ本人がこのドキュメンタリーに登場するのですが、億万長者の有名アーティストが、難民地を旅行観光でもするような姿でスクリーンに現れます。

 

アイ・ウェイウェイと難民者との関わりも少しだけ見せてくれるのですが、難民者の置かれた苦しい立場を自分のドキュメンタリー映画のために面白おかしく利用しているだけのように見えるのが残念です。

 

もしアイ・ウェイウェイが、自分の名誉だけを考えずに「人類の危機」を心から考えるような人だったら、こんな薄っぺらなドキュメンタリー映画を制作するよりも、NGO民間援助団体を立ち上げて難民者たちにサポートを提供したのではないかと思います。

 

彼のような名誉あるアーティストだったら、自分の作品をひとつオークションにかければ、簡単に1億円以上のお金を作ることができるでしょう。

また億万長者であるアイ・ウェイウェイ自身のポケットマネーから難民者へサポートを寄付しても良かったのではないかと思います。

『Human Flow』の制作費にかかったお金は、約4億円です。

そんな莫大な資金があるのであれば、もっと賢いお金の使い道があったのではないかとぷー子は思えてならないのです。