夏の欠片
朝晩、随分涼しくなった。
店の売上を考えると、このまま涼しくなってくれるとよいのだけど、
すんなりと秋には向かってくれないよな、きっと。
個人的には、夏が好きだ。
湧き立つ入道雲、夕立、せわしなく鳴く蝉、飛び交う蜻蛉、頭をかすめるように飛び去るツバメ。
通いつめるように行った市営プール。
夏祭り、虫捕り、釣り、草野球、空き地探険。
それから、それから・・・
夏が来ると、少年時代の僕が心の中を走り回る。
一年中、待ちわびた夏休み。
目を閉じて耳を澄ますと、少年時代の友逹たちの歓声が聞こえてきそうな気がする。
嫌な事もあったろうに、思い出すのは不思議と楽しかった事ばかり。
余程、おめでたい性格のようだ。
それでよい・・・
僕の育った町は超がつくほど大規模な再開発があり、当時の面影は殆ど残っていない。
去年、実家も取り壊されたが、その時は特になんという事もなかった。
街並みはそれなりにきれいな佇まいとなり、住み良い町になったと思ったくらいだ。
だけどそれは、時間とともに僕の原風景が失われたような寂しさに変わっていった。
僕がそうだったように、うちの子供たちにとっての原風景は、家族が住むこの町であり、この家だ。
大切なのは今なんだな。
そう気がついた時、その寂しさは少年時代のよき思い出の中に消えていった。
今日この一日が愛おしい。
日々を丁寧に大切に過ごすというのは、こういう事なんだな。